2024年05月12日( 日 )

在留外国人との共生を通じ、人に優しい豊前市へ

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豊前市長
後藤 元秀(ごとう もとひで) 氏

豊前市長 後藤 元秀(ごとう もとひで) 氏

 元福岡県議会議員で、2013年から豊前市長を務める後藤元秀氏は、「少子高齢化や人口減少の解決は、在留外国人との共生社会の実現にある」と指摘する。福岡県下の市のなかで最も人口が少なく、過疎化も進行するなかで、高齢者を対象にした口腔ケア事業や、特産の海産物の六次産業化、そして外国人人材の積極的な受け入れを行い、市の活性化を図っている。後藤市長に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長  児玉  直)

水産業の六次産業化

豊前市役所
豊前市役所

    ──豊前市の魅力をお聞かせください。

 後藤 豊前市は、瀬戸内海や瀬戸内西端の豊前海に面しており、豊富な水産資源を有しています。2016年3月に、宇島漁港そばに「うみてらす豊前」という水産振興施設を開業しましたが、これは地元の漁業者の所得向上を図ることを目的に、さらには観光振興、交流人口の拡大などを目指したものです。漁船をイメージした木造2階建ての建物は、豊前市が建設し、指定管理者として福岡豊築漁協が運営を行っています。1階にはいけすがある直売所「四季旬海」、2階には「漁師食堂うのしま豊築丸」があり、食堂では旬の魚介類を使った定食などを味わうことができます。「うみてらす豊前」には、福岡都市圏などからも多くの観光客が訪れています。

 また、明太子製造販売の(株)山口油屋福太郎(福岡市)と共同で、明太子のおせんべい「めんべい」に豊前市特産のハモのすり身などを加えた「豊前海 鱧めんべい」をつくりました。これは、「うみてらす豊前」や道の駅などで販売され、大変好評です。

 ──豊前市も少子高齢化の状況にあります。

 後藤 私は、高齢化ではなく、長寿化という表現を積極的に使いたいと考えています。長寿化は健康寿命がともなってこそ。「生涯現役」であるために、何を行うべきなのかというと、まずは口腔ケアです。県議会議員時代は「福岡県歯科口腔保健の推進に関する条例」の制定に尽力しました。虫歯や歯周病などから、糖尿病などの病気が進行することが指摘されています。歯が痛んで治療を行うのではなく、日頃からのメンテナンスを通じて、歯と口の健康を守ることは、地域において安心して生活し、長生きすることにつながります。

 豊前市の特性を生かした活性化事業を進めていますが、人口減少になかなか歯止めがかかりません。少子化については、まず国が0歳から18歳までの子ども1人あたり1,000万円を使うべきだと思います。これは、第2次安倍政権で少子化担当を含めた内閣府特命担当大臣を務めた衛藤晟一衆議院議員なども主張されているものです。

多文化共生と地域活性

 ──外国人人材活用について、豊前市の状況はいかがでしょうか。

 後藤 周辺自治体の自動車産業などにおいて外国人労働者が増えています。人口減少と労働力不足の実態を考えると、今後は外国の人たちの労働力に頼らざるを得ません。現在、在留外国人は市の人口の1.5%ほどの割合になっています。バングラデシュやベトナムなどから来日した外国人人材400人ほどが、近隣の自動車工場などに就業しています。

 在留外国人のうち最も多いのがベトナム人ですが、多文化共生に関するコーディネート業務を担う方を地域おこし協力隊員の市職員として採用し、国際共生推進室に勤務していただいています。我が国は移民に対する抵抗感がありますが、外国人人材を1人の人間として尊重し、働きやすい環境を整えていくことが重要です。

    これまで当市に限らず、親世代が、製造業や農業では所得が不安定だからと、子どもたちに地元に残らず、都会に仕事を求めて出ていくことを後押ししてきました。しかし、結果として、地方は衰退しました。親は、子どもたちに幸せになってほしいという願いがあります。同じような気持ちで、海外からの人材を受け入れていきましょうと申し上げています。

 ベトナムだけでなく、台湾との交流事業も盛んです。市議会は、WHO(世界保健機関)への台湾のオブザーバー参加を認めるよう日本政府として働きかけることを要請する意見書を、九州で初めて採択しました。昨年7月には、台北駐福岡経済文化弁事処と連携協定を締結したことをきっかけとして、台湾友好議員連盟で台湾訪問も行いました。

 ──人口減少など、簡単に解決策が見出せるものではないとは思いますが、今後どのようなまちづくりを進めていかれるでしょうか。

 後藤 外国人の方々との共生を通して、あたたかい地域をつくっていきたいと考えています。そのなかから、都会の生活に飽き足りない方々に、豊前市に関心をもっていただき、定住していただくよう努力していきたいと思います。

【文・構成:近藤 将勝】

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