茂木幹事長続投の裏に麻生氏の福岡9・10区に対する思惑
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見えない岸田カラー
13日にも岸田文雄首相(自民党総裁)は、内閣改造・自民党役員人事を行う。麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長の続投は、ほぼ間違いないとみられるが、安倍晋三元首相逝去から1年以上が経過しても、岸田カラーは見えてこない。
一昨年の政権発足直後、今なお、岸田派に強い影響力を残す古賀誠元幹事長が「いつまであの人たちに果実を与えるのか」とくぎを刺したが、岸田派は第4派閥で党内基盤が脆弱である。今回も主流派(麻生派・茂木派)の派閥領袖を中心に固めた人事で、政権の安定を優先したかたちになるだろう。
しかし、岸田首相は刷新感ある人事を披露したいという思いがあるといわれ、しがらみのあるなか、どこまで首相らしさが滲んだものとなるか、またどこまで積極的に女性閣僚を登用するかなど注目される。
安倍元首相なき今、100人を有する安倍派も、有力者や閣僚経験者からなる15人の集団指導体制となり、結束して強い影響力をおよぼすことは難しいとみられている。岸田首相にとっては、思惑通りの展開ではあるが、政権の生みの親である麻生氏との関係は悪化させるわけにはいかない。
麻生氏もそのことを十分理解しており、次の一手に向けて、岸田首相や茂木幹事長との頻繁な会食ばかりでなく、非主流派である菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と会食を行うなどの動きもしている。
幹事長続投と福岡政局の関係
茂木氏の幹事長続投は、2つ重要な意味があるといわれる。1つは、ポスト岸田の動きを封じるという点である。岸田首相は、茂木氏の動きを警戒しており、幹事長から外し、別のポストにつけて封じ込めるとの見方もあった。もともと茂木氏は、党内はもちろん自派閥でも評判は芳しくなかった。「頭は切れるが、パワハラ気質で、気に入らないと記者でも呼びつけられる」(在京メディア関係者)という。
茂木派(平成研究会)は伝統的に参院議員の割合が多い。現在も参議院議員は4割ほどいる。参議院のドンと呼ばれ、2010年の引退後も影響力を保持していた青木幹雄元官房長官は、小渕恵三元首相の娘である小渕優子党組織運動本部長の後ろ盾となっており、独自の動きをしてきた。
その青木氏は茂木氏を嫌っていたといわれる。18年の自民党総裁選で、茂木氏らは当時の安倍首相を支持したが、青木氏の意向を受けた参議院平成研は結束して石破茂元幹事長を支援した。しかし、青木氏が6月に亡くなり、茂木氏のやりたいようにやれる環境となった。岸田首相にとっては来年の総裁選での再選に向けて、不安の芽は摘んでおきたいということになる。
もう1つが、今後予想される衆議院解散・総選挙への影響である。とりわけ、麻生氏の頭にあるのは、地元福岡9区・10区の自民党公認候補をどうするのかである。両選挙区の支部長選任をめぐって、茂木氏が森山裕選挙対策委員長に仲裁役を買って出たのは、麻生氏の歓心を得たい思惑があるとみられる。
自民党福岡県連は公募、面接、党員投票というプロセスを経たうえで、9区は大家敏志参議院議員、10区は吉村悠福岡県議会議員と党本部に上申している。しかし、いまだに、判断保留のままである。茂木氏がゴーサインを出さないからだ。県連幹部や北九州市議会の自民党市議団からは、「いつまで待たせるのか」と焦りと困惑の声が聞こえてくる。
麻生氏の意中の人物はそれぞれ三原朝利北九州市議会議員と大石仁人同市議会議員というが、民主的手続きを経て、決定した候補者をひっくり返せば、自民党福岡県連は離党者を出し、最悪の場合は再び分裂状態に陥るかもしれない。有権者は自民党の内紛を決して肯定的に捉えないだろう。
【近藤 将勝】
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