わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2015年09月25日 15:24

中島淳一「古典に学ぶ・乱世を生き抜く智恵」(9)

劇団エーテル主宰・画家 中島淳一氏

 己の創作領域のみを棲家とし、その域を超えた活動には慎重になりがちな芸術家が多いなか、福岡市在住の国際的アーティスト、中島淳一氏は異色の存在である。国際的な画家として高い評価を得るだけでなく、ひとり芝居に代表される演劇、執筆活動、教育機関での講演活動などでも幅広く活躍している。
 弊社発行の経営情報誌IBでは、芸術家でありながら経営者としての手腕を発揮する中島氏のエッセイを永年「マックス経営塾」のなかで掲載してきた。膨大な読書量と深い思索によって生み出される感性豊かな言葉の数々をここに紹介していく。


西脇順三郎の詩に学ぶ~永遠を求める必要はない。すでに永遠のなかにいるのだ~

 日本現代詩の巨星、西脇順三郎(1894~1982)の詩作は50年以上におよぶ。日本の文学史上、老いてなお尋常ならざる旺盛な創作を持続し、詩が青年の文学であるのみならず、円熟した老年の究極の文学であることを身をもって実証してみせた。

 多くの現代詩、とくにシュールリアリズム文学は人生が破壊された廃墟であったり、昏倒した夢物語の世界に過ぎない。だが、自分自身の詩について西脇は言う。「できるだけ微かな爆発を起こさせるように仕組み、その人生に小さい水車をまわす」と。

 西脇にとって、詩は老子の玄の世界、有であると同時に無、現実であると同時に夢、円心にあると同時に円周にある状態であった。悟りとも言える境地から繰り出される無数の言葉の矢は独自の光彩を放つ。

永遠を求める必要はない すでに永遠のなかにいるのだ

中島 淳一 氏<

中島 淳一 氏

 前世現世来世は失われた楽園の永遠の中の経過にすぎない。石に刻まれた髪、石に刻まれた眼、石に刻まれた音のようにすべては永遠のなかに存在するだけだ。セザンヌの林檎のように宇宙は無限の時空であり、時間と空間の永遠だけが存在だ。理知、情念、感覚、肉体という人間の存在も死も永遠のなかにある。無と消滅を認める永遠の思念。存在することもしないことも宿命である。
 人間は咲くことを忘れた老梅、あるいは岩間からしみ出た水霊にすぎないのだ。この思考する水も永劫に流れはしない。ある時に干からびる。だが、この水の中から花をかざした幻影の人が出現する。永遠の生命を求めて遊びにくる。遊びとは愛と創造による美の追求である。存在することもしないことも同じだと知っている神々の求愛。詩のないところに詩がある。
 存在もなく、存在しないこともないこの大きなゼロ、空。この空だけが存在する。存在しないことこそが、永遠の存在である空。
 空の永遠のなかに有も無も永遠に滴っている。雨がツバメの羽をぬらし、黄金の毛をぬらし、砂をぬらし、魚をぬらし、詩人の舌をぬらすように、過去現在未来も、悪霊も生霊もサムサラ(輪廻転生)もニルヴァーナ(涅槃)も永遠のなかで1つになる。貧困も富も生老病死も1つになる。幸福を求めることも幸福を求めないことも、美醜も、侘・寂も初恋も失恋も喜怒哀楽も、性悪も性善も1つになり、ブラーフマンの美を放つ。

 人間はブラーフマンを求めるが、ブラーフマンは何も求めない。人間はブラーフマンにはなれない。哀しき禁断の木の実。男は女の影にすぎない。永遠を夢みる土の上に一時のびる旅のつる草。求めて淋しい乙女の美しき蕾。淋しいが故に我あり。これが人間の宿命である。

 だが、ブラーフマンのなかでしか人間の存在は感じられない。人間の罪をあがなう磔の情念の苦い美。この宿命はブラーフマンの神秘である。新しき神曲の始まり。四季はめぐり、女神は紫の季節を花の宝石で飾る。
 明日は夢なき者に夢あれ。病める者に癒しあれ。富なき者に富あれ。幸なき者に幸あれ。恋なき者に恋あれ。

 


<お問い合せ>
劇団エーテル
TEL:092-883-8249
FAX:092⁻882⁻3943
URL:http://junichi-n.jp/

<プロフィール>
nakasima中島 淳一(なかしま・じゅんいち)
 1952年、佐賀県唐津市出身。75~76年、米国ベイラー大学留学中に、英詩を書き、絵を描き始める。ホアン・ミロ国際コンクール、ル・サロン展などに入選。日仏現代美術展クリティック賞(82年)。ビブリオティック・デ・ザール賞(83年)。スペイン美術賞展優秀賞(83年)。パリ・マレ芸術文化褒賞(97年)。カンヌ国際栄誉グランプリ銀賞(2010年)。国際芸術大賞(イタリア・ベネチア)展国際金賞(10、11年)、国際特別賞(12年)など受賞多数。
 詩集「愁夢」、「ガラスの海」、英詩集「ALPHA and OMEGA」、小説「木曜日の静かな接吻」「卑弥呼」、エッセイ集「夢は本当の自分に出会う日の未来の記憶である」がある。
 86年より脚本・演出・主演の一人演劇を上演。企業をはじめ中・高校、大学での各種講演でも活躍している。福岡市在住。

 
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