2024年04月29日( 月 )

経常収支黒字20兆円超、国際収支構造の転換点となるか

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 本日、財務省が2023年の国際収支統計(速報)を発表した。それによると、海外とのモノ・サービスの取引や投資収益を示す経常収支は20兆6,295億円だった。前年からの増加幅は9兆9,151億円で、過去最高水準の増加幅となったことが分かった。

日本の経常収支の推移 1996~2023年、財務省資料より
日本の経常収支の推移 1996~2023年、財務省資料より

輸出額、第1次所得収支黒字は過去最高

 経常収支の増加は貿易赤字の大幅な圧縮によるものだ。貿易赤字は前年の15兆7,436億円から6兆6,290億円に大幅に縮小された。その要因として、資源価格の高騰がやわらいだことで輸入額が114兆5,124億円から106兆9,032億円に減少し、一方で円安などを背景に輸出額が98兆7,688億円から1,00兆2,743億円に増加したことが挙げられる。

 また、第1次所得収支も、前年の34兆4,621億円から34兆5,573億円へ過去最高を更新した。

「その他投資」の赤字額も過去最高

 その他には、金融収支の「その他の投資」が37兆9,847億円の赤字で、2003年の21兆6,728億円を大幅に更新した点も注目される。国内外の金利差拡大を受けた外国への投資流出によるものではないかと考えられる。

リーマン・ショック後のターニングポイントとなるか

 2008年のリーマン・ショック頃まで、経常収支の黒字を支えていたのは貿易黒字だ。その後、リーマン・ショックを経て、11年から貿易収支は赤字となり、それ以降、経常黒字を支えてきたのは第1次所得収支である。これは日本の収支構造が、国内での製造による輸出収入から、海外拠点の売上を国内の収入に還元する構造へ変化したことを表している。

 23年の国際収支速報は、海外収益としての第1次所得が拡大する一方で、国内の製造業による収益も拡大し、経常収支を支える構造に変わりつつあることを表している。これは国内外の金利差拡大とともに進行した円安を大きな要因とするもので、日本の経済構造のターニングポイントとしてこの方向性が固定されていくものであるか注目したい。

【寺村 朋輝】

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