2024年05月02日( 木 )

暗号資産の次のトレンド「現物資産トークン」(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

トークン化のメリット

 現物資産トークン(RWA)はReal World Assetの頭文字を取ってできた言葉である。金、コーヒーなどの原材料はもちろん、不動産、債権、それから株式まで、実際に世の中で取引されているすべての資産が対象で、ブロックチェーンを活用して、この資産を安全かつ簡単に取引できるようにしようという試みだ。

 トークン化された資産は、24時間365日の取引、決済時間の短縮、今まで投資のアクセスができなかった案件に分割投資ができるようになり、より大きなアクセス性を提供している。たとえば、スマートフォンをもっている人なら、誰でも利用できるようになる。また、トークン化によって価格が分割・小口化されれば、より多くの人が購入できるようになるだろう。

 トークン化のメリットとして資産の小口化やスピーディーな決済、費用の削減が挙げられる。何より期待されているのは金融市場のお金が現物資産トークンを通じて暗号資産市場に流入することであろう。

トークン化の課題

ブロックチェーン イメージ    資産のトークン化は、現物資産をブロックチェーン上に載せ、トークンとして取引することにより、金融システムがデジタル化し、市場が拡大するなど、さまざまなメリットがあることが分かった。しかし、これを実現するにはまだ解決しないといけない課題もある。

 1つ目に、検証をする過程で「オラクル問題」という問題が発生する可能性があることだ。「オラクル問題」とはブロックチェーンの外部に存在するデータをブロックチェーンに持ち込む時に発生する問題を指す。現物資産トークンは現物を裏付けにしているため、現物のデータをブロックチェーンに正確に記入する必要がある。検証者がいて検証をすることになっているものの、資産の種類が多く、全てに精通することも現実的には難しく、資産を正確に審査することが難しい点だ。

 2つ目の課題はトークン化された権利を実際にどのように証明するかである。たとえば、不動産物件を複数人が分割して購入した場合、その不動産の名義は誰にするかという問題がある。それに、高級時計のように簡単に移動ができるものは、不動産と違って盗難の恐れもあるし、資産がその場に実際存在しているのかどうかを常に把握するのも大変である。さらに規制の検討、法的枠組み、セキュリティーへの懸念などもある。

 しかし、このような課題は進歩によって解決できるものと思われる。欧米の金融機関では、暗号資産の次の市場として現物資産トークンを有望視し、プラットホームの開発などを急いでいる。世界最大の資産運用会社の主導で、金融業界にどのような変革がもたらされるのか先行きが注目される。

(了)

(前)

関連キーワード

関連記事