創業以来最大の危機を迎えたインテル(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏変化の波への対応が遅れる(つづき)
高速データ処理に向いた精度の高い半導体市場の需要は爆発的に伸びている反面、従来の半導体は需要がそれほど伸びていない状況となっている。インテルの強みは、パソコンのCPUだけでなく、データセンターなどで使われているサーバー用CPUでも絶対的な地位を築いている点だ。ところが、「データ量爆発」の時代を迎え、データセンター用のサーバー需要が急拡大しており、インテルはサーバー用市場においても、ライバルのAMDに猛追されてシェアを落としつつある。インテルの今年のデータセンター部門の予想売上高は126億ドル、一方、ライバルのAMDは129億ドルだ。デスクトップCPUの場合も従来と異なり、マイクロソフト、Google、アマゾンなどのビッグテックが独自のチップの開発を急いでおり、今後インテルのシェア縮小が予想される。
インテルの業績低迷の原因の1つとしてファウンドリー事業の不振が挙げられる。同社は12年にファウンドリー事業を開始したが、業績不振が続き18年に市場から撤退したことがある。現在のCEOはファウンドリー事業への再参入を宣言したものの、今年の第1四半期に25億ドルの赤字、第2四半期に28億ドルという巨額の赤字を垂れ流している。問題は現在のところ解決策が見えないということだ。世界最大の半導体企業であったインテルでさえも、時代の流れにうまく乗れないと、このような結果となる。
半導体市場は今後どうなるのか
半導体業界も時代の変遷とともに、トレンドが変化している。以前はインテルのような垂直統合型企業が半導体業界の覇権を握っていた。ところが、半導体設備投資の金額が巨大化するにつれ、受託専門のTSMCのような企業が脚光を浴びるようになった。ただ、今後は後工程のパッケージングが大事になるという。韓国・サムスン電子の悩みもここにある。メモリ分野では中国企業の追い上げが激しく、ファウンドリー事業では台湾のTSMCの背中が遠くなりつつある。次世代のコア技術であるパッケージング技術においては世界10位にも入れない。
パッケージング技術は素材・部品・装置企業との協業が大事だという。しかし、韓国にはこの分野の企業が育っておらず、協業が難しい状況である。よって、今後は日本企業との協力関係が大事となってくる。
以上のような状況下、インテルは組織も官僚的になり、変化に対応できなくなったことが現在のような状況を招いているようだ。また、インテルの第13・14世代のCPUに欠陥があることが指摘されており、訴訟のリスクまで噂されている。
巨大組織となったインテルは、このような危機を乗り越えられるだろうか。米中覇権争いが進んでいるなか、米国半導体企業の代表格であるインテルを米国政府は放置せず、救済するに違いないという意見があるにはある。しかし、半導体業界は技術と需要の急速な変化にさらされており、ここで舵取りを間違えると、インテルが経営破綻することもないとはいえない。インテルは、まさに企業存亡の危機に直面している。
(了)
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