NTTデータの完全子会社化で加速されるか、NTTの世界戦略

 8日、日本電信電話(株)(NTT)は子会社である(株)NTTデータグループ(NTTデータ)を完全子会社化すると発表した。買収総額は約2兆3,700億円で、NTTが保有するNTTデータ株式の57.73%に加え、残りの42.27%をTOB(株式公開買い付け)で取得する計画だ。これにより、親子上場の解消とグループ経営の効率化を図るとともに、世界戦略にはずみをつける。

 NTTデータは、NTTグループのなかで法人向け事業を担う中核企業であり、2024年度の売上高は4.6兆円に達する。同社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI、データセンターなどに強みをもち、長期的な成長が見込まれている。とくに、データセンター事業では、世界第3位のシェアを誇り、国内外で積極的な展開を進めている。

 NTTデータのデータセンター事業は、海外に91拠点、133のデータセンターを保有し、2025年1月時点で1,455MWを運用中、さらに822MWが計画中である。主要な顧客は、大規模なクラウドサービスを提供するハイパースケーラーであり、アメリカ、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、インド、APAC(アジア太平洋地域)での提供容量の増強を計画している。

 国内においても、NTTデータは大規模データセンターの開発を進めている。栃木市では、関東エリア最大規模となる100MWの電力容量をもつデータセンターの建設を計画しており、28年頃の開業を予定している。この施設では、AI基盤の設置や、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術の導入、直接液冷方式「Direct Liquid Cooling」などの先進的な冷却技術の採用が予定されている。

 NTTは、今回の完全子会社化により、NTTデータとの連携を強化し、グローバルソリューション事業の中核を担わせる体制を構築する。これにより経営効率化を図る一方で、NTTグループのR&D(研究開発)成果やIOWN、AIなどの次世代技術を組み合わせた新サービスの開発を加速し、世界戦略を強化する狙いがある。

 NTTデータグループは、2027年度までに累計1.5兆円の投資をデータセンター事業に投じる計画を発表しており、生成AIやHPC(High Performance Computing)技術の進化を背景に、データ主権の確保や地方分散型インフラの構築といった戦略を推進している。成長分野であるデータセンター事業の強化を目的とした戦略的な動きで、今後、NTTグループがどのようにグローバル市場での競争力を高めていくかが注目される。

【寺村朋輝】

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