MF前田陽輝、公式戦クラブ最年少ゴール
6月11日、ベスト電器スタジアムで行われた天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会2回戦で、アビスパ福岡(J1)が沖縄県代表の沖縄SV(JFL)を2-0で破り、3回戦進出を決めた。
この試合の注目は、スタメンに名を連ねた1トップの18歳・前田一翔(いちか)と右サイドハーフの16歳・前田陽輝(ひかる)のW前田コンビだ。両選手はアビスパ福岡の下部組織であるU-18の出身および在籍中のサポーター期待の若手選手。5月21日に行われたYBCルヴァンカップ1stラウンド3回戦では、途中出場ながら2人揃ってピッチに立ち、前田一翔はプロ初ゴールを決めるなど、チームの勝利に大きく貢献した。
試合は、開始そうそうからアビスパ福岡がボールを保持。素早いパスワークでつなぎ、両サイドから攻撃を仕掛けるも、なかなかシュートまでたどり着けず、決定機をつくれない。16分には、こぼれ球を拾った前田一翔がドリブルで相手選手をかわしてシュートを放つも、ボールはクロスバーの上へ。さらに22分、スピードと強い体幹が武器の岩崎悠人がミドルシュートを放つも相手キーパーの好セーブに阻まれ得点ならず。
一方の沖縄SVも12分、アビスパ福岡のゴール前でのパスミスを上野瑶介が狙い、キーパーをかわしてゴールに迫るも決められない。その後も沖縄SVは果敢にボールを前へ運び、ペナルティーエリア内に攻め入るチャンスをつくるがラストの精度に欠け、得点には至らなかった。そして前半は両チームともに決定力を欠き、0-0のままで折り返す。
試合の均衡を破ったのは、アビスパ福岡U-18に在籍中の16歳・前田陽輝だった。65分、岩崎に代わって入った橋本悠が左サイドから放った低い弾道の高速クロスに前田陽輝が右足で合わせ、ゴール左に突き刺す技ありゴールを決めて先制。このゴールは前田陽輝にとってトップチームでの公式戦初得点となり、さらにはアビスパ福岡の公式戦におけるクラブ最年少得点記録を更新する16歳7カ月17日でのメモリアルゴールとなった。69分には名古新太郎と交代するも、1発勝負のトーナメント戦で大きな仕事をやってのけた期待の若手選手の活躍にサポーターから大きなねぎらいの拍手が送られた。
相手のオウンゴールで追加点。2-0で勝利
前田陽輝のゴールで1点をリードしたアビスパ福岡は、87分にベンチに控えていたリーグ戦の主力であるウェリントンと安藤智哉を投入。攻撃的かつ守備的な両局面に対応できる選手を入れ、追加点を狙いながらも守備を固めていく。このまま試合終了かと思われた89分、橋本のロングスローがゴール前に落ち、沖縄SV選手がヘッドでクリアを試みるもボールは自陣ゴールへと吸い込まれ、オウンゴールでアビスパ福岡に追加点が入り、2-0となる。この2点をアビスパ福岡が守りきり、勝利を収めた。
この試合で2得点に絡む活躍を見せた橋本は、前田陽輝へのアシストの他、左右からのコーナーキックやロングスローなど、多くの見せ場を演出。今季新加入の大卒ルーキーながら、欠かせないチームの戦力として頭角を現しており、リーグ戦やカップ戦で着実に出場機会を増やしている。
多くの故障者を抱え、苦しい台所事情のアビスパ福岡にとって、前田一翔、前田陽輝、橋本といった若い選手の活躍は明るい好材料となる。
天皇杯3回戦はギラヴァンツ北九州と対戦
ファンの記憶に残るゴールを決めた前田陽輝は試合後、サポーター席の前で「まず、ゴールという結果を残せたことをうれしく思います。まだ自分はプロじゃないので(現在はトップチームの公式戦に出場できる2種登録)、もっと努力をして、いち早くプロになれるように頑張ります!応援よろしくお願いします!」と力強く挨拶すると、大きな陽輝コールが沸き起こっていた。
また、この試合は不発に終わった前田一翔も取材に対して、「今はFW陣が(怪我で)不在のため出場機会を与えられているだけで、ボールロストをしたり、シュートにいけたところを打てなかったり、まだまだ足りない部分が多いと感じている。自分の持ち味である裏抜けのプレーを最大限生かして、しっかり決め切るところは決めるなど、得点という目に見える結果を残していきたい。そして、ユース出身者として、アカデミー&スクール生の後輩たちに自分が活躍する姿を見せていきたい」と話してくれた。
アビスパ福岡の天皇杯3回戦は、リーグ戦3試合を挟み、7月16日にギラヴァンツ北九州(J3)と対戦する。金監督体制での初のカップ戦タイトル奪取に向けて、成長著しい前田一翔と前田陽輝、そして橋本の若い力がチームの大きな武器となるだろう。次戦でも彼らの活躍に期待をしたい。
【川添道子】