忍び寄るステルス壊憲の足音

 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「CIAは日本政治を自公と第二自公の二大勢力体制に移行させようとしている」と指摘する6月29日付の記事を紹介する。

 参議院議員通常選挙が7月3日に公示される。投開票日は7月20日。小中学校の多くは7月19日から夏休みに入る。夏休み入り後、最初の3連休の中日に投票日が設定された。この日に投票所に足を運ぶ有権者は少なくなる。近年は期日前投票を利用する有権者が多いから、日取りの設定が投票率を完全決定するわけではないが、期日を設定する側は投票率が高くなりやすい日となりにくい日を選別して投票日を選択する。石破内閣はできるだけ投票率が低くなる日を選択したと言える。

 参議院の議席数は248。3年ごとに半数の124が改選される。選挙区で74議席、比例代表で50議席が選出される。非改選は自公が75、野党が48(欠員1)。今回の参院選では6年任期の議席124選出と3年任期の欠員1補選が実施される。

 参議院過半数は125。自公が合わせて50議席を獲得すると参議院過半数を制する。自公の改選議席数は66議席であるから17議席減らすと自公は過半数割れに転落する。自公は衆議院で過半数割れに転落しており、参議院でも過半数割れに転落すると政権維持は極めて困難になる。

 今回の参院選で選出される議員は1の欠員補充を含めて125。自公が125議席のうちの50議席を確保すると非改選を合わせて参院過半数を確保できる。このことから、石破首相は参院選の勝敗ラインを与党での参院過半数確保に設定した。125議席のうちの50議席を獲得できれば勝敗ラインをクリアというのはあまりにも低いハードル。石破首相の我が身を守る姿勢が鮮明だ。

 6月22日投開票の東京都議選では自民が前回の獲得議席33からほぼ半減の18に議席を激減させた。自民は無所属で出馬して当選した3名を追加公認して21議席を確保したが、この追加公認が主権者の猛烈な批判を招いている。裏金無所属議員を選挙後に自民に追加公認する行為は主権者に対する詐欺行為であるとの批判が沸騰している。

 都議選結果を踏まえると自民に対する風圧は和らいでいない。自民と連立政権を構成する公明党も前回獲得議席22から19に議席を減らした。3人が落選して9回連続の全員当選が実現しなかった。したがって、自公が参院でも過半数割れに転落する可能性を否定はできない。

 与党が低すぎる勝敗ラインを割り込むことになれば石破首相は引責辞任を免れない。仮に参院で与党過半数を確保できても衆議院では過半数を大幅に割り込んでおり、安定的な国会運営は不可能な情勢。通常国会会期末寸前には衆議院財政金融委員会委員長が野党の賛成多数で解任された。通常国会までの政権枠組み改変は避けられない。

 日本政治は極めて不安定な局面に移行している。しかし、このなかで日本政治刷新の光が見えているのかと言えば、答えはノーだ。その理由は、日本政治刷新を牽引する政治勢力が弱体化していることにある。2021年の衆院総選挙以降、日本政治刷新を指向する〈改革勢力〉=〈革新勢力〉が弱体化し続けている。

※続きは6月29日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「忍び寄るステルス壊憲の足音」で。


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