最低賃金過去最大の上げ幅を答申 今後の各県審議で決定 中小企業への影響を注視

 4日、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は、2025年度の地域別最低賃金額改定の目安についての答申を発表した。それによると引き上げ額は、昨年度(51円)を上回る63円(6.0%)で、統計方式が整備された2002年以降で最大の水準となった。

 政府は目標として「2020年代内に全国平均時給1,500円」の実現を掲げており、今回の賃上げを目標達成に向けた重要なステップと位置付ける。

答申の概要

 答申では、各都道府県の経済実態に応じてABCの3ランクに分けて、引き上げ額の目安を提示している。ランクごとの加重平均は、Aランク5.6%、Bランク6.3%、Cランク6.7%で、引き上げ額の目安については、Aランク63円、Bランク63円、Cランク64円となった。

引き上げ額の目安

 今後、各都道府県の地方審議会がこの目安を参考にしてそれぞれの最低賃金の改定額を議論することとなる。早くも審議が始まり、10月頃から都道府県ごとに適用されることとなる。

本答申への評価

 過去最大の引き上げ率は、物価高と実質賃金低下に直面している労働者の生活支援として不可欠との見方がある一方で、中小企業への負担が重く、70%以上を占める中小規模事業者の賃金支払い能力が課題となることは避けられない。各事業者は賃上げ対応を背景に価格転嫁の必要に迫られるが、難しい業種も予想される。その場合、企業は労働時間の調整や雇用形態の変化によって対応に乗り出すことも予想され実質的な手取りが別のかたちで影響を受けることも考えられる。

 いずれにしても今回の最低賃金の大幅引き上げは、国内全体の賃金構造にとって転換点となる可能性が高く、今後の企業の対応や労働環境の変化に注意が必要だ。

【寺村朋輝】

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