NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は8月30日の記事を紹介する。
8月20~22日の3日間にわたって横浜で「TICAD 9」(第9回アフリカ開発会議)が開催された。今回は大阪・関西万博との関連が注目された。さらに、トランプ2.0が打ち出している矢継ぎ早の高関税政策への対策としてのグローバルサウス、とくに54カ国のアフリカの対応策においても、国内外の関心が高く、1993年の創設以来、TICADは大きな関心を呼んだ。
期間中にJETROが主催した「TICAD Business Expo & Conference」には日本・アフリカ各国から政府や企業関係者が参加。出展企業は200社で過去最高となった。覚書(MOU)交換は300件を超えたという。(JETRO ビジネス短信)
日本としては「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」を提唱。これまで安倍首相時代から日本が取り組んできた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の下、発展するグローバルサウスとのさらなる連携を目指し、自由で公正な経済圏の構築を目指すという。
アフリカは日本企業にとって最後のフロンティアとして注目されている。1993年の「TICAD 1」時点と比べ、貿易から投資へと流れが変化。日本との貿易額は24年で1.5倍、輸入は3倍以上になっている。アフリカ全体のGDPは日本の7割程度だが、日本企業の進出拠点は10年前から10倍に増加。急増するアフリカの人口は93年の7億人から25年には倍増し、約15億人に増加。50年には25億人と世界人口の4人に1人をアフリカ人が占めることになる。
日本のアフリカ戦略としてはアフリカとの関係が深いインドとの連携により、アフリカ進出を強化することが強く望まれる。さらに中東、北アフリカとの関係が強いトルコとの協力もインドとの二面作戦として検討することを提言したい。
とくにインドとの協力に関してはインドとアフリカの地理的、歴史的な近接性、インド企業、ビジネスパーソンのアフリカでの実績を活用し、すでにインドで実績のあるスズキやダイキンがインドで製造した自動車や空調機器をアフリカに輸出している実績も参考にしながら、インド経由のアフリカ向け輸出、そのためのデジタル物流網構築などに日本企業としては尽力することが強く要請される。
8月29日には親日的なインドのモディ首相の訪日も予定されている。この機会に筆者がかねがね提唱している「CHINDIA」(中国・インド戦略)に加え、AACI(ASEAN・アフリカ・中国・インド戦略)に日本が注力することを期待したい。親日的なケニアのルト大統領は「対日FTAを歓迎。若い人材を日本に派遣したい」とFTA締結に熱意を見せている。
かつて商社において60年代後半、ガーナの鉄道近代化プロジェクト、稲作指導。トーゴ向け日本車初輸出、エジプト・アブシンベル宮殿移転工事などに関与した筆者としては、今こそ日本は未来の大国アフリカとの関係強化に尽力すべきだと声を大にしたい。
<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。