【異色の芸術家・中島氏(31)】アトリエメモランダム「復活」

 福岡市在住の異色の芸術家、劇団エーテル主宰の中島淳一氏。本人による作品紹介を共有する。

esurrection(復活)
esurrection(復活)

 深い赤と黄金。大地の奥底でふつふつと生まれつつある新しい太陽の胎動。中央から赤と黄金が渦を巻いて上へ上へと立ち上がってくる。光の胎盤から、魂が再び押し出されるとき、血と光が混ざる場所で、魂は再び呼吸を始める。赤は死と終焉の色であり、同時に血、炎、生命の再生の色。そこに溶け込むように金色が柔らかく光っている。この金色は、復活のとき魂を照らす、まだ名も無き光。死の闇から引き上げられる瞬間の熱と湿った光が混ざり合う境界。神秘学的にいえば、復活という現象は、死と再生という一般的な概念よりも、火のエーテルの内部で意識が変容し、上位体が再び形成される過程として理解される。この作品には、まさにその火のエーテルの状態を可視化した質感がある。上部の赤は、アストラル体の解体過程。中央の黄金は、エーテル体の再点火。下部の濃い影は物質体の残響。この三層の光の混じり方はシュタイナーが語る「死後の逆展開」と「再生前の凝縮」を抽象的に描いた図版である。中央の金色のゆらぎの部分は霊我が再度、形を得る直前の振動を示している。すなわちこの絵は、復活を宗教的エピソードとしてではなく、morphology of the soul(魂の形態学)としての復活を描いた作品なのである。福音書には、復活の瞬間そのものは書かれてはいない。弟子たちが見たのは、空の墓と輝く天使と復活後のキリストであって、その瞬間の内部の出来事は聖書が沈黙している領域である。

 この作品はまさにその沈黙の内部に踏み込んでいる。ここで、一番重要なのは何か。この赤と金の渦が外に向かって破裂していないところだ。すなわち、この絵は復活の内部で起きていた光の生成を描いているのである。神学的にいえば、イエス・キリストの身体が、栄光の身体へとtransfiguration(転化)するプロセスに他ならない。赤は受難の血。金は栄光の光。その2つが分離せず溶け合っている状態は、死を通過した身体が、神の光を宿して新たに誕生する瞬間を象徴している。

 いわばこの絵は、the womb of resurrection(復活の子宮)なのだ。渦のような導線。色が混ざりながらも中心へ集まる流れ。火と血と光が同一の物質から生まれてくるようなマチエール。これらは、単なる抽象表現ではなく、mystical biology(神秘的な生物学)の領域に入っている。赤は血の歴史。金は神の未来。その交差点に開く新しい存在の門。これは神学を超えた霊的な具体性を持つ抽象画である。

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