近年、日中間の航空路線は観光やビジネス交流の拡大を背景に活発化しているが、地方路線では搭乗率の低迷や運航会社の事情により、早期の運休が相次いでいる。2025年に入り、熊本と上海を結ぶ路線、富山と大連を結ぶ路線が、いずれも就航から数カ月で欠航や運休を発表七だ。これらの事例は、日中航空路線の持続可能性に課題を投げかけている。
まず、熊本-上海便について見てみよう。この路線は2025年7月11日に中国東方航空により初めての定期便として就航した。熊本県の木村敬知事は就航に際し、「熊本県民の利便性の向上、そして海外との観光、経済、文化などさまざまな面で交流が深まって熊本の活性化につながることを期待している」と述べ、大きな期待を寄せていた。初便には知事自身や熊本市長らが搭乗し、華々しくスタートを切った。運航は週2往復を基本とし、8月19日までは週3往復に増便されていたが、搭乗予約はウェブサイトで受け付けられていた。
しかし、就航からわずか3カ月後の9月10日、中国東方航空は熊本県に対し、冬季ダイヤに入る10月26日から当面の間、運休することを通知した。理由として「機材繰りなど運航計画の総合的な見直しのため」と説明されている。
熊本県側は「搭乗率が悪いとは聞いていない」としているが、木村知事は「大変残念。中国東方航空からも『熊本・上海線は重要路線であり、一月も早い進航再開に向け尽力する』と聞いているので、引き続き協議していく」とコメントを発表した。この運休は、九州地方の他の路線(福岡、長崎、鹿児島)と比較しても熊本の路線は新しく、地方空港の国際路線維持の難しさを象徴している。
一方、富山-大連便も同様の運休問題を抱えている。この路線は中国南方航空により運航されており、2024年度の搭乗率が44.2%にとどまるなど、採算性の確保が課題となっていた。8月から欠航が続いており、富山県は9月16日、冬季ダイヤに入る10月26日以降も全便欠航になると発表した。欠航となるのは計44便で、期間は来年3月28日までの予定。
8月から数えると半年以上の長期欠航となる。理由は「機材繰りのため」とされているが、県担当者は「富山から大連へ向かう日本人の搭乗吝か少ない」と指摘し、中国南方航空に対し「利用を促進するためにも安定した運航を働きかけていきたい」と述べている。
新潟空港の中国―ハルビン線が9月11日から来年3月末まで運休することになった。運航する中国南方航空は、運休の理由について 「機材繰りや需要など複数の要素を総合的に判断した」と説明している。
県が発表したハルビン線の昨年度の利用者は、8,532人で搭乗率は52.9%。新型コロナ禍前の2割ほどにとどまっている。
1998年に運航を開始した新潟―ハルビン線は主に日本で暮らす中国人の生活路線として親しまれてきた。中国南方航空は「来年度の運航については未定」としている。
これらの運休は、単なる一時的な措置ではなく、日中地方路線の構造的な問題を反映している可能性が高い。新型コロナ禍後の航空需要回復が遅れているなか、中国側航空会社の機材不足や、観光客の偏在(大都市路線への集中)が影響しているとみられる。たとえば、富山便はコロナ禍の運休を経て2024年6月に再開したものの、たびたび欠航を繰り返しており、2025年6月にも計8往復の運休が発生していた。同様に、熊本便も中国本土との初の定期便として期待されたが、短期間での運休は地方経済への打撃が懸念される。
今後、日中航空路線の安定化のためには、両国政府や自治体のプロモーション強化、搭乗率向上策が不可欠だ。熊本県や富山県は航空会社との協議を継続するとしているが、再開の見通しは不透明。
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