留学生の住まいを支えるネパール人社長の挑戦

 福岡を拠点に不動産賃貸・仲介を手がける(株)international real estate(国際不動産)。代表はバニヤ・ラクスマン氏で、福岡県内でも数少ないネパール人経営者の不動産会社として、外国人ならではの視点を生かしたサービスを提供している。

(株)international real estate(国際不動産)代表・バニヤ・ラクスマン氏
(株)international real estate(国際不動産)
代表・バニヤ・ラクスマン氏

    ラクスマン氏は2006年に来日し、大学3年時にネパール料理店を起業。最大で4~5店舗を展開したが、コロナ禍で1店舗まで縮小した。その後、23年に不動産事業へ進出。転換の背景には、飲食業を営むなかで知人や同郷の留学生から住まいに関する悩みを多く耳にしていたことがある。退去時の費用精算や契約内容の不理解、近隣との摩擦など、言葉や文化の違いによる課題を目の当たりにし、自らが橋渡し役を担うことを決意した。

 同社の特徴は、外国人経営でありながら日本人スタッフも在籍している点にある。外国人の入居について、文化や生活習慣の違いから生じる騒音などのトラブルが生じるとの懸念や、家賃保証や収入の安定性が確認しにくいなどのイメージがもたれているかもしれない。同社は入居者へのサポートは母国語で丁寧に行い、日本人オーナーには日本人スタッフが対応することで、双方に安心感を与えている。異なる文化や言語の壁を越えられる体制が、同社ならではの強みとなっている。

 現在、福岡市内の日本語学校や専門学校に通う留学生を中心に入居希望が集まっているが、物件不足は深刻な課題だ。同社は既存物件の紹介にとどまらず、将来的には自ら新たな住まいを供給するなど、物件不足の解消にも取り組んでいきたい考えを示している。

 また、留学生が学業を終えて社会に出ると、長期滞在や定住を視野に入れたニーズが生まれる。現状の中心は賃貸仲介だが、同社はすでに住宅ローンや投資ローンの相談に応じ、家を購入したい顧客の資金計画を支援している。今後は売買や管理にも事業領域を広げ、留学生から社会人、定住者までを継続的に支えられる包括的なサービス体制の構築を目指している。

 ラクスマン氏は「留学生に日本のルールを正しく伝え、地域住民と双方が住みやすい環境をつくっていきたい」と語る。単なる不動産事業にとどまらず、生活習慣や社会ルールを伝える役割も担い、地域との共生を後押しする姿勢が貫かれている。

 外国人が安心して住まいを得られることは、日本社会における労働力確保や多文化共生の推進にも直結する。同社の取り組みは、外国人起業家が地域に根づき、新たな価値を生み出すモデルケースといえるだろう。

【岩本願】


<INFORMATION>
代 表 :バニヤ・ラクスマン
所在地 :福岡市博多区吉塚1-12-45
設 立 :2023年3月
電話番号:092-409-2767
FAX :092-409-2768
資本金 :500万円

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