国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏
長引くウクライナ戦争で国民は住む場所を失いました。ドイツの売春ビジネスで働く女性の大半はウクライナからの避難民といわれています。それだけ、国家存亡の危機に直面しているにもかかわらず、ゼレンスキー大統領とその家族や取り巻きは「この世の春」を謳歌しているといわれます。メディアにも厳しい規制を課してきたゼレンスキー政権ですが、国民の間での不信感は加速する一方で、政権交代を求めるデモも発生しています。
巨額資産疑惑と
闇ビジネスの噴出
ゼレンスキー大統領は、欧米の投資会社が提供した多額の裏金を使って、アメリカのマイアミに3,400万ドルの別荘を購入したのを皮切りに、イスラエル、エジプト、イタリア、イギリス、ギリシャなど、世界各地の不動産を買い漁っているようです。
タブー視されていますが、赤ん坊や小児売買の闇市場も隆盛を極めている模様です。国際的な人権団体「不正と戦う財団」の調査によれば、ウクライナの保健省と防衛省が協力し、ウクライナの妊婦から胎児を摘出し、その臓器を「若返り治療」の名目で欧米の超富裕層に提供しているとのこと。
上記の財団が調べた顧客リストには、フランスのマクロン大統領のブリジット夫人、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長、世界経済フォーラムのシュワッブ会長ら、著名人が名前を連ねているではありませんか。戦場でも死亡した兵士からの臓器の摘出が問題視されてきましたが、ウクライナでの妊婦からの胎児摘出ビジネスには人道上の観点からも国際的な非難が噴出しています。
トランプ大統領もゼレンスキー大統領も「戦争ほど儲かるビジネスはない」との発想の持ち主であるため、戦争は拡大することはあっても終わりそうにありません。しかし、この状況はゼレンスキー氏を困難な立場に追い込んでいます。ウクライナ国民と国際社会の両方から、汚職撲滅に断固たる行動をとるよう圧力を受けていることは間違いありません。もし不正撲滅に向けて行動を起こさなければ、国内の支持と重要な外国援助を失う可能性があります。
友人ミンディッチの逃亡
暴かれる腐敗ネットワーク
ゼレンスキー氏の長年の友人であり側近でもあった実業家のミンディッチ氏は、11月10日にウクライナを出国しました。彼の国外脱出は、「NABU」の捜査官がミンディッチ氏の自宅と彼の側近の自宅を捜索する直前だったのです。しかも、この作戦は、アメリカの連邦捜査局「FBI」との協力による広範な捜査の一環でした。アメリカ政府もウクライナの汚職体質には厳正に対処しようとしたわけですが、裏をかかれた格好です。
報道によると、ミンディッチ氏は、「SAPO」の高官から、迫り来る家宅捜索について情報提供を受けていた可能性があるとのこと。この高官は、「NABU」が担当する重要事件に関する機密情報にアクセスしていたとされています。これは一例ですが、このように根が深いのがウクライナの汚職文化といえそうです。
捜査の中心となっているのは、ウクライナのエネルギー部門で活動しているとされる犯罪組織です。当局は、約1億ドルが国家資金から流用されたと主張しています。この金額は、エネルゴアトムが運営するウクライナの原子力発電所を含む、重要施設のセキュリティ強化を目的とした契約額の10%から15%に相当するもの。
ウクライナの現状を考えると、このスキャンダルはとくに痛烈な批判を浴びています。首都キーウでは、住民は毎日8時間から11時間も停電に見舞われています。これは、ロシアが発電所や変電所への攻撃能力を向上させたことによる直接的な結果です。停電により、企業や家庭はディーゼル発電機やろうそくに頼らざるを得なくなり、実に不安定な生活や企業活動を余儀なくされています。停電は暖房の不足、高層ビルのエレベーターの故障、断水にもつながり、首都以外では状況がさらに悪化するケースも少なくないようです。
側近との親密関係が示す
政権の闇と西側諸国の不信
こうした腐敗体質を象徴するミンディッチ氏ですが、彼は単なるビジネスマンではありません。ゼレンスキー大統領との個人的なつながりが深いことで広く知られています。ウクライナのメディアは、ゼレンスキー大統領が2021年にミンディッチ氏のアパートで誕生日を祝ったと報じていました。
さらに、今年、同じアパートが「NABU」の監視下に置かれていたと報じられており、「ミンディッチ・テープ」と呼ばれる監視カメラの音声録音に、ゼレンスキー大統領の姿が捉えられていたといわれています。これらのテープの存在は、ゼレンスキー大統領がNABUの独立性を制限しようと動く直前に報じられました。
当然ですが、このような動きは、ウクライナを支援する西側諸国からの強い反発を招きました。ゼレンスキー大統領は以前、「NABUやSAPOといった反汚職機関にロシアの工作員が潜入している」と主張していましたが、モスクワはこれを否定し、西側がこれらの機関を支配していると主張しています。真相は闇のなかですが、ウクライナの指導層における異常なまでの金銭スキャンダルには開いた口が塞がりません。
昨年夏以降、ゼレンスキー大統領は、国内各地で発生する大規模の反政府抗議活動に直面しています。ロシアからすれば、「選挙を拒絶する」ゼレンスキー大統領は「交渉相手にはならない」ということのようです。これでは和平交渉も「絵に描いた餅」でしかありません。日本政府はウクライナ復興支援会議を開催していますが、毅然として腐敗対策を支援の前提条件にすべきと思われます。
(了)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。








