東急不動産(株)
東京・渋谷では100年に1度といわれる大規模な再開発が進んでいる。東急不動産(株)は渋谷駅から2.5km圏内を広域渋谷圏と位置付け、産業育成、都市観光、都市基盤構築の3つを軸にまちづくりを行っている。都市基盤構築は「街で生きる人の豊かなライフスタイルを実現」(同社)することであり、その要素の1つとして環境を重要視している。渋谷での環境の取り組みは、同社も参画する再開発事業「九州大学箱崎キャンパス跡地プロジェクト」や大規模産業団地開発「サザン鳥栖クロスパーク」にも反映されている。
屋上や壁面などを緑化している
渋谷を環境経営の旗艦に
東急不動産(株)は、環境の取り組みを中長期経営計画の柱に積極的に行っている。環境経営として脱炭素社会、循環型社会、生物多様性の3つの課題にまちづくりを通じて取り組み、エリア価値を高めることを目的に掲げている。具体的には、脱炭素社会では太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー事業を全国で展開。自社で保有するビルなどへ再エネ電力を供給している。循環型社会では、広域渋谷圏内の「TENOHA代官山」において岡山県産木材を構造材に使用し、構造材の解体・再利用を可能にした。
空調の室外機で育てた
サツマイモの収穫イベントが行われた
生物多様性の取り組みとしては、広域渋谷圏内の商業施設やオフィスビルにおいて、それぞれの特徴に応じた緑化を実施した。そのほか、オフィス緑化の効用の科学的な検証や東急プラザの屋上緑化によるヒートアイランド緩和効果の検証、オフィスビル屋上の室外機で芋を育てるなどの菜園活動を通じたコミュニティ形成や空調費削減効果の検証など、実証的な取り組みを手がけている。
環境の取り組みついては、「渋谷を1つのフラッグシップとして、九州大学の箱崎キャンパス跡地プロジェクトであったり、さまざまなまちづくりに環境というものを実装しながら、取り組みを拡大していきたい」(サステナビリティ推進部・松本恵部長)という。
九大跡の緑化に反映
九州大学箱崎キャンパス跡地の再開発は、住友商事(株)を代表企業とし、東急不動産などが参画する事業者グループが手がけることになった。まちづくりのコンセプト「HAKOZAKI Green Innovation Campus」の6つの方針には、「みどりあふれる空間の創出」「環境先進都市の創造と成長」が盛り込まれている。採択された提案のなかには、緑の確保とともに広場・公園をつなげるエコロジカルネットワークの形成やAR(拡張現実)などを使った既存樹木の景観資源としての活用などの空間整備が示されている。
広域渋谷圏の取り組みが、九大箱崎キャンパス跡地再開発に具体的にどう反映されるのかは不明だが、「東急プラザ表参道オモカド」や「渋谷フクラス」「TENOHA代官山」など渋谷の商業施設・オフィスビルで行われている緑化やエコロジカルネットワークの取り組みの成果が反映されるものと予想される。
(出所=九州大学、都市再生機構九州支社リリース)
鳥栖で新産業創造へ
また同社は、2025年7月に「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」を積極的に拡大していく方針を示した。これは全国で複数の事業に参画し、産業拠点整備を起点とした周辺地域の活性化に貢献する産業まちづくり事業。産業団地・工業団地をベースに、環境や持続可能性と多様な交流・交差、革新性を掛け合わしたまちづくりを行う。
具体的には、国内主要産業拠点の高速道路IC(スマートIC)至近のエリアを面的に整備することで、物流施設・産業団地を全国でネットワーク化することを目指している。九州では「サザン鳥栖クロスパーク」(佐賀県鳥栖市)で実践する。敷地面積約34ha、小郡鳥栖南スマートICから約600mの「サザン鳥栖クロスパーク」は、28年度に着工し、30年度に完成予定。佐賀県・鳥栖市、九州大学都市研究センターとの産学官連携事業として産業まちづくりを進める。産業団地全体を自動運転モビリティに対応した拠点として整備するほか、製造業を中心とした企業誘致、進出企業間などの交流・共創などを目的としたコニュニティスペースなどを次世代物流施設と併せて整備する。「物流のロジスティスクを使ったグリーンのクロスパーク」(松本氏)を目指しており、この開発も渋谷で行っている環境による課題解決の取り組みを反映する予定だ。
(出所=リリース「『サザン鳥栖クロスパーク』開発事業者選定に関するお知らせ」)
同社は佐賀県に対して「サザン鳥栖クロスパーク」の開発で、人口資本・人的資本・自然資本を合算した指標「新国富」の増加が約30兆円になることが見込まれると報告している。新国富の分析を行ったのは、九大発のスタートアップ企業である(株)aiESG(福岡市博多区、馬奈木俊介代表取締役)だ。
渋谷という世界的にも注目される都市での実験的な取り組みの成果は、全国の先進的な地域づくりに生かされつつある。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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