(株)AlbaLink
代表取締役 河田憲二 氏

2025年12月15日に、空き家の買取再販事業を手がける(株)AlbaLink(アルバリンク)が東京証券取引所グロース市場に上場した。TOKYO PRO Market(以下、TPM)からの鞍替え上場。同社は「日本の空き家をゼロに」をミッションに掲げ、法律的、物理的、環境的、心理的な瑕疵(かし)がある「訳あり物件」を、空き家を活用するセミプロの個人投資家を中心とした需要層とをつないできた。上場を契機に、支店網強化と自社による空き家再生に取り組む。今後の事業展開について、代表取締役・河田憲二氏に話を聞いた。
投資家の裾野を拡大
──東証グロース上場の抱負をお聞かせください。
河田 TPMから東証グロース市場への鞍替えは大きなイベントですし、会社としてもマイルストーン的な目標でした。ただ、会社の取り組みとして、それほど変わることはないと思っています。全国に支店を構え、日本中での空き家で困っている方に、同じような品質のサービスをお届けさせていただくのは、変わらずにやっていくことだと思っています。
もちろん上場により、信用や資金調達の手段が増えるという強みを活かすことはできると思いますので、改めてスタートラインに立ったな、という気持ちでやっていきたいです。
東証グロース市場上場のメリットは、大きく2つあると考えています。1つは資金調達のオプションが増えるということ、もう1つは採用の面において会社としての信用力が増すことです。TPM上場でも、採用面のメリットは実感していました。グロース市場では、本当の意味で新たな株主が入り、パブリックな企業に近づいていかなければなりませんし、そうあるべきと考えています。
──上場後に取り組んでいく事業については。
河田 当社は“世の中の空き家をゼロにすること”というミッションを掲げています。そのためには、空き家を本当の意味で収益化する方法や引き出しは、多ければ多いほうがいいと思っています。そこが多ければ多いほど、空き家オーナーに提示できる買取金額は、より高くすることができます。
今は高い利回りを期待する個人投資家に、「訳あり物件」自体をそのまま売却しています。「訳あり物件」を再生していくらの収益を得ることができるのかといった計算は、主な買主である個人投資家がしています。また、一般賃貸がいいのか、民泊がいいのか、運用方法を判断するためのデータは、当社にはありません。現時点では、売却実績を基にして、買取金額を算出しています。
今後は、再生に力を入れていくことで、不動産投資家以外にも販売ターゲットを広げて深掘りしていけるということになると思っています。数年後、たとえば自社で空き家を200棟、1棟あたり500万円を投じて再生し、10億円分の空き家を利回り10%の収益物件にできるとなれば、地方でビジネスをやりたいファンドや機関投資家も顧客対象になり得ると考えています。これにより、買取金額査定の解像度もさらに上がっていくと期待しています。12月15日は、その出発点という認識です。
3つの強みで成長
──御社のビジネスの強みは、どのようなところでしょうか。
河田 強みは3つあります。会社としての強みでいうと、マーケティング部門を内製しているところがポイントだと思っています。リスティング広告によるリード獲得が中心ですが、不動産会社がマーケティング部門を内製化しているところはほとんどありません。
当社の場合は、もちろんCPA(顧客獲得単価)など広告効果の最大化にも力を入れていますが、その先で本当に利益になっているのかまで、マーケターが営業と連携して追っています。「粗利がどこまで出たから、この広告はすごくコストが合っているよね」とか、「件数はすごく取れているのだけど、広告の表現や文言が悪いから、お客さまが少し過大に勘違いしている」とか、「期待値が高まったせいで回答がしにくくなっている」といった、細かいチューニングが内製だと可能になります。
2つ目は全国に支店があることです。今はまだ22支店ですが、今後は1年に10店舗のペースで支店を増やしていく計画です。支点網ができていることで、他社と差別化できています。オウンドメディアをつくるとか表面上のことで真似できるのですが、やはり空き家はお客さまの大事な資産で、相続していた物件には思い入れがあって、感情の部分も結構あります。現地に支店があって、「1時間後に今から駆けつけて物件見させてください」と言って、ちゃんと名刺交換して、「この物件はなぜならこれこれこうで50万円です」というのと、東京の会社がマーケティングだけをやっていて机上で査定して、「これは50万円です」というのとでは、お客さまからの信頼が全然違います。
3つ目が、人材育成システムです。1年間に入社する人の40%ぐらいが未経験で、「訳あり物件」という特殊な物件を査定しないといけないのですが、ほぼ即戦力化ができています。累計3万件分の問い合わせおよび買取資料をデータベース化して、分析・活用することで、価格査定マニュアルを共有しているほか、営業トークのクロージングもある程度スクリプト化しています。これにより、現場で再現性の高い支店を出店するという組織マネジメントができています。
拡大する方針を語る河田社長
──「訳あり物件」の課題は。
河田 空き家の引き取り費用を、オーナーに負担いただく場合が多いのも事実です。なぜなら、最終的に買い取る投資家が修繕費や残置物撤去する費用も負担しますので、物件取得費用が加わると、採算が取れない空き家が多いからです。その場合は、売主である空き家オーナーにある程度負担していただくしかありません。たとえば、空き家を引き取るにあたり100万円のご負担をいただきますが、これまで毎年固定資産税で5万円、10万円がかかっていたことから解放されますし、「半年に1回は草むしりをしなきゃいけない」とか、隣地の方から「枝を剪定してくれ」と文句を言われたりとか、そういった心労から解放される代金だと納得してくれる方は少なくありません。
「共創」で空き家なくす
──地方自治体との連携を広げています。
河田 狙いとしては、2つあります。まずは当然ながらソーシングで、物件の反響を得る、空き家の相談を得るということです。当社はデジタル広告が強く、オンラインからの反響で毎月3,000件の反響をいただいています。ですが、空き家は全国に約900万戸、大半はオフラインに眠っているのです。オフライン情報の要は、自治体だと思っています。空き家の相談会を自治体と共催させてもらって、そこで案件が出てくるというのもあります。オフラインでないとリーチできない人たちへのアプローチです。
もう1つは、認知の拡大とか現地リソースの調達です。自治体は地元の名士のような人から、大きな屋敷をどうすればいいのかを相談されていたり、学校とか空いた公共施設の相談を実際に受けることがあります。自治体と連携することで、そういった地元のシンボルみたいな物件の再生にも関わるチャンスが生まれます。当社は富山県滑川市と提携していますが、滑川市の地元のデパートのような物件を譲っていただきました。それをコワーキングスペースに改修して、地元の工務店や設計士とご一緒させてもらってDIYイベントを行いながら、地元との共創でつくり上げました。
こうした取り組みは、広報とか認知を広げるためにすごく良いものにもなるし、そういうものを再生していくときは、大工や管理人など必ず地元のリソースが必要になります。そういうときにも、自治体経由でご相談いただいている物件だと、「あの物件を東京のアルバリンクという会社と一緒に再生するから融資を手伝ってくれ」と声をかけてもらったりすると、大変やりやすくなります。
こういった取り組みは、空き家を再生しようという輪を広げていくきっかけになると考えています。単純に案件をソーシングしたいという目先の小さなことも重要ですが、日本全体でこの空き家をなくしていくっていうのを、みんなで共創していかないとダメだと考えています。自治体との連携は、その一助になればとの想いでやっています。
九州はポテンシャル高い
──今後の展開について教えてください。
河田 まずは全国に支店を広げるとともに、民泊や賃貸住宅などへの再生を自社で手がけることで、より広いライト層の投資家へ拡大します。また、まとまった空き家を再生することで地方ファンドなどに売却し、民泊管理や受託運営などへ事業領域を広げていくことを目指しています。自治体との連携も引き続き拡大していきます。
九州については現在、福岡市博多区と熊本市中央区に支店を設けており、2026年には鹿児島にも開設予定です。自治体連携についても、福岡県大川市、大分県竹田市、熊本県和水町、鹿児島指宿市ですでに締結済みです。
セカンドハウスのような使い方や、週末だけ移住するとか、1年のうち1カ月だけ移住するという選択肢があることは、地方への定住や移住の足がかりとなるはずです。空き家がそのインフラになってくれればと考えております。九州はそのポテンシャルが高いと思っています。
<PROFILE>
河田憲二(かわた・けんじ)
国士舘大学政経学部卒、大学在学中にウェブマーケティングの事業を創業。その後(株)グリーンライトを設立し、法律メディアを運営。不動産賃貸業を展開し、空き家投資を開始。法律メディアを事業売却後、2019年5月にルームセレクト社(現・AlbaLink)を買収し、空き家買取再販事業に専念。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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