【新春トップインタビュー】多様性が組織を強くする 人を生かすグループホームの挑戦

(株)プロデュース
代表取締役 中原亜希子 氏

 北九州市でグループホームの運営などを手がける(株)プロデュースは、障がいや疾患、国籍、年齢などの違いを超え、多様な人材が力を発揮できる職場づくりに取り組んでいる。1人ひとりの個性を受け止め、それを組織の力へと転換する実践について、同社代表取締役・中原亜希子氏に話をうかがった。

逆境が導いた起業
選んだ福祉の道

(株)プロデュース
代表取締役 中原亜希子 氏

    ──まずは創業のきっかけについてお聞かせください。

 中原亜希子氏(以下、中原) 実は、事業を起こす意志はまったくありませんでした。当時、内縁の夫が経営していた会社が倒産し、その流れで、結果的に起業せざるを得なくなったというのが正直なところです。2000年の創業当時は、カラオケ機器のディーラー事業を手がけていました。

 ──現在はグループホームを中心に福祉事業を手がけられていますね。

 中原 順調に経営を続ける一方で、いずれは淘汰されるという危機感を覚えていました。何か新しい事業を模索しなければと、防犯カメラの代理店や介護保険を使った住宅改修など、さまざまな事業に取り組みました。

 しかし、転機はまったく別の場所で訪れます。内装工事業者としてバリアフリーを学ぶ目的で、広島県にあるグループホームを見学する機会がありました。その施設の扉を開けた瞬間、人生を変えるほどの衝撃を受けたのです。

 「これがやりたい」と確信してからは、行動あるのみでした。各所で自らの想いを伝えるなかで、北九州のある建設会社の代表から遊休物件があると声を掛けていただき、そこを借りるかたちで04年に福祉事業をスタートしました。

拡大の失敗に学んだ
「人づくり」の重み

 ──着実に利用者数を増やし、06年から14年にかけては施設を急拡大されています。

 中原 14年には一気に5事業所を開設しました。しかし今振り返ると、このときの拡大戦略は失敗だったと感じています。要因は人材育成が追いつかないまま、事業所だけを拡大してしまったことにありました。結果として、マネジメントは機能不全に陥っていました。

グループホームの様子
グループホームの様子

    16年には2つの事業所を閉鎖するという苦渋の決断を下しました。その後は体制の立て直しに注力し、現在は3拠点で8事業所を展開しています。ただ、このときの痛みがなければ、その後、1人ひとりの事情に寄り添う多様な働き方へ、ここまで真剣に向き合うことはなかったと思います。

多様性を経営資源に
DE&Iで選ばれる企業へ

 ──御社は18年に「第12回北九州市女性活躍・ワークバランス市長賞」、20年に福岡県男女共同参画推進賞を受賞されるなど、先進的な取り組みが評価されています。

 中原 私自身、人が好きで、もともと誰でも受け入れる気質ではありましたが、それを会社の理念として明確に推し進めるきっかけとなったのが、17年に「福岡県女性研修の翼」に参加した際のデンマーク視察です。現地で、さまざまな生きづらさを抱えながらも堂々と働く人々の姿に触れ、「私たちの会社でも、もっとできることがあるはずだ」と感じ、DE&Iに特化していくことを決意しました。

 まずはアクティブシニアの活躍を後押しするため、定年を71歳に延長しました。次に子連れ出勤を認め、外国人や障がいのある方へと対象を広げていきました。近年では、うつ病やADHDといった目に見えない困難を抱える方も積極的に迎え入れています。こうした姿勢が、人材不足の時代において多様な人材を惹きつけ、定着につながり、結果としてサービスの質の向上にも結びついています。

 こうした取り組みを続けるうち、他の施設では敬遠されがちな重度の認知症の方へのケアが、いつしか私たちの得意分野になっていました。現在では、同業者から紹介をいただくケースも多くなっています。

 ──多様な人材が共に働く組織を、どのようにマネジメントしているのでしょうか。

 中原 私たちの取り組みの基礎となっているのが、毎月実施している社内OJTです。一般的な研修とは異なり、コミュニケーションや脳の仕組み、心理学などを通じて、自分自身の特性を理解することを重視しています。

 マネジメントにおいては、本人が気づいていない強みを見つけ、適材適所で生かすことを大切にしています。また、月1回の研修時間のうち1時間を近況報告に充て、1人ひとりの背景の変化を共有しています。こうした取り組みが、多様な個性が共存する組織を支えており、社員同士のトラブルを理由に退職を考えるケースは、これまで一度もありません。

 ──今後のビジョンと、御社が目指す介護について聞かせてください。

 中原 スケールメリットを追うつもりはありません。スタッフ1人ひとりの家庭環境まで把握できる、地域密着型の経営を続けていきたいと考えています。そのなかで、短期的には、訪問看護の分野を広げていきたいです。福祉だけでは支えきれない領域が、必ず出てくるからです。

 また、現在は5カ国(ミャンマー、ネパール、ポーランド、中国、フィリピン)からきてもらっている外国籍スタッフを、将来的には10カ国にまで広げたいと考えています。

 私たちの究極的な目的は、「どんな人とでも一緒に生きていく社会づくり」に貢献することです。そのために、多様な価値観がごく自然に共存する社会の縮図のような職場を、ここ北九州で実現していきたいと思います。

【岩本願】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中原亜希子
所在地:北九州市八幡西区本城1-20-20
設 立:2000年10月
資本金:1,000万円
売上高:(25/3)4億6,846万円


<プロフィール>
中原亜希子
(なかはら・あきこ)
1971年、山口県下関市生まれ。下関市立安岡中学校、山口県立豊浦高等学校を経て、89年に香蘭女子短期大学へ進学。91年に卒業後、博多大丸に入社。2年後に退職し、98年、カラオケ機材関連会社の子会社社長に就任。2000年10月、29歳で(株)プロデュースを設立。現在はグループホームを中心に介護・福祉事業を展開している。(特非)日本KAIGOサポートセンターの副理事長を務める。

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