中小企業の生き残り戦略(20)現場の創意工夫を引き出す“内発的動機づけ”のマネジメント~DXを支える人材育成と自走型組織のつくり方~

はじめに

 DXを成功に導く最大の要素は「人」です。どれだけ優れた戦略やツールを導入しても、現場が自ら動かなければDXは進みません。では、どうすれば「やらされる改革」ではなく、「自ら考え、動く現場」を育てられるのか。そのカギとなるのが、“内発的動機づけ”、つまり、人のなかから湧き上がる「何とかしたい」とか「良くしたい」という意欲です。

1.外発的動機づけから内発的動機づけへ

 従来のマネジメントは「指示・命令型」、つまり外発的動機づけ(報酬・評価・圧力)が中心でしたが、変化のスピードが速い時代、それでは限界があります。人は「やらされる」よりも、「自分が関わっている」と感じたときに最も力を発揮します。「やらされ感」ではなく「納得感」こそが、DX推進の原動力になります。

2.内発的動機づけを生み出す3つの条件

 心理学者エドワード・デシは、自己決定理論のなかで、人が内発的に動くためには次の3つの欲求が満たされることが重要だと説いています。

①自律性:自分で選び、決めているという感覚
②有能感:自分の行動が成果につながっている実感
③関係性:仲間や上司との信頼的なつながり

 経営者やリーダーが、この3要素を意識的に醸成することで、現場が自ら考え、工夫する文化を生み出す素地ができます。

3.現場の創意工夫を引き出す仕組みづくり

 内発的動機づけを引き出すには、たとえば、以下のような仕組みが必要になります。

  • 現場メンバーが定期的に改善提案を発表し、採用されたアイデアを全員で実行する。
  • 成果だけでなく、その過程で生じた気づきや工夫を共有する。
  • 上司からではなく、仲間から感謝を伝える評価を導入する。

 これらの仕組みが「主体性を育てる土壌」となり、現場は自然と“自走型”へと変化していきます。

4.経営者の役割

 経営者がすべきことは、「やらせる」ことではなく、「任せる」こと。信じて任せれば、社員に責任感と創意が芽生えます。「信頼は成長への投資」、経営者が現場に裁量を与え、挑戦を称えることで、内発的動機づけは組織全体に広がっていきます。

5.人材育成の新しい視点

 DX時代の人材育成は、“教育”ではなく“環境設計”であるといえます。人は誰かに「育てられる」のではなく、良い環境で自ら学んでいきます。重要なのは、上司や経営者が「学びと挑戦の余白」を用意することです。「チャレンジを評価する。失敗を次に活かす。学びを称える。」という循環ができたとき、DXは単なるプロジェクトではなく「企業の新たな息吹」になります。

まとめ

 DXの最終ステージは、テクノロジーではなく「人の変化」です。内発的動機づけによって社員が主体的に動くようになれば、企業は外部環境に左右されずに自ら進化していきます。繰り返しますが、DXの真の目的は、「自走する人材と組織」をつくることです。

 次回は、「“変革を継続できる組織”の条件:DXのその先へ」をテーマに、企業が“持続的に進化する経営”を実現する道筋を考えます。

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<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆
(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立

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