2022年07月02日( 土 )
by データ・マックス

2016年最大の課題、隣国・中国は環境問題を解決できるのか(5)

参議院議員 浜田 和幸 氏

日本の未来を左右する公害大国の汚名返上

 李克強首相は事あるごとに「同呼吸、共奮闘」(同じ空気を吸う人々として、共に大気の改善に奮闘しよう)と呼びかけている。そのうえで、大気汚染に関する10項目の措置が決定された。すなわち、「17年までに、主要産業の大気汚染物質排出を30%削減すること」や、「公共交通手段の推進」が謳われた。こうした計画を実現するために、第12次5カ年重点地域大気汚染対策計画には1兆5,000億元の予算が投じられることになった。中国による環境問題への取り組みがようやく本格化し始めたと言えるだろう。

eco_img とはいえ、環境当局の人員や環境保全投資額も絶対的に不足している面も否めない。たとえば、中国の環境保護部の職員数は350人ほど。日本の環境省は1,500人、アメリカの環境保護省が1万8,000人のスタッフを擁するのとは大違いだ。人口や国土面積を考えれば、中国の環境保護部の職員は、いかにも手薄である。また、環境保全投資額は増加傾向にはあるものの、GDPの2%程度に過ぎない。日本が1970年代に公害防止に取り組んだ頃には、GDPの8.5%を投入したものである。

 我が国の公害対策の教訓に照らせば、中国の取り組むべき課題も浮かび上がってくる。すなわち、行政の対応が進まない場合には、司法に訴えるという道を開くこと。次に、国が動く前に、地方が動くことの必要性。地方の首長が地元の住民利益のために動かざるを得ない環境を作ること。そして、社会問題に関する報道機関の役割を高めることであろう。

 日本ではこのように、三権分立、地方自治および選挙、報道の自由という民主主義のシステムがあり、完璧とは言えないまでも、経済政策と環境政策が十分に機能している。残念ながら、中国においてはこのようなシステムが機能するまでには至っていない。国を挙げての環境改善の取り組みがなければ、こうした深刻な事態は改善されないだろう。そして、この分野こそ、日本が中国に支援をすべき価値がある。

 2022年に冬季オリンピックを開催することになった河北省。北京に近く、工業地帯であると同時に最大の公害発生源でもある。これまで数万カ所の工場が環境汚染源として閉鎖された。今回の訪中で、河北省も訪問したが、環境対策ではまだまだ後手に回っているとの印象をぬぐえなかった。要は、政府の介入も大事であろうが、より重要なのは国民の意識改革ではなかろうか。

 言い換えれば、価値観の革命が必要ということだ。道徳や教育という観点から「自然を敬い、皆が譲り合い、絆を大事にする」というような社会の持つソフトパワーが環境問題の解決には欠かせないはず。そのような価値観あるいは倫理観といった要素が現在の中国には徹底的に欠如している。

 この点を克服できるかどうかが、中国の未来を左右するに違いない。また、そうした中国の未来は間違いなく日本の未来をも左右する。まさに日中の信頼・協力関係が必要とされる所以である。2016年の開幕にあたり、中国という巨大な隣人が公害大国の汚名を返上できるかどうか、その取り組みに省エネ・再エネを含む日本の環境関連技術がどのように協力できるのか。大いに知恵を絞る必要性を感じている。日本の伝統的な価値観と最先端の環境浄化技術が中国はじめ世界、人類の未来を確かな方向にリードする。そんな時代の到来を迎えたいものだ。

(了)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

 
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