大きな被害をもたらした
極めて異例な2度の震度7
2016年4月に熊本県を襲った一連の地震「熊本地震」は、日本の地震観測史上でも極めて異例かつ過酷なものであった。
まず4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード(M)6.5の地震が発生。益城町では震度7を観測した。当初はこれが“本震”であると考えられていたが、その約28時間後の4月16日1時25分、同じく熊本地方を震源とするM7.3の地震が発生。益城町や西原村では震度7を記録した。この2度もの震度7の地震の発生を受けて、気象庁では14日の地震を「前震」、16日の地震を「本震」と定義。震度7が同じ地域で2回観測されたのは、1949年の震度階級改定以降、初めての出来事だった。また、そのエネルギーは、1995年の阪神・淡路大震災に匹敵するものであった。なお、その後も3カ月後の7月14日までに、震度7を2回のほか、震度6強2回、震度6弱3回、震度5強4回、震度5弱8回を観測するなど、震度1以上を観測した地震は合計1,888回発生している。
2度もの震度7の揺れをはじめとした一連の地震は、多くの尊い人命を奪っただけでなく、建物やインフラにも壊滅的な打撃を与えた。熊本県が発表した「熊本地震等に係る被害状況について【第356報】」(25年4月11日発表)によると、この一連の地震では275人(直接死50人、関連死225人)もの尊い命が失われ、2,739人が重軽傷を負った。また、計19万8,261棟(全壊8,642棟、半壊3万4,389棟、一部破損15万5,230棟)の住家被害も発生。とくに、前震の揺れに耐えた住宅が、2度目の本震の揺れで倒壊するケースが相次いだ。さらに、熊本県の象徴である熊本城の石垣崩落や、阿蘇神社の楼門倒壊などは、県民に大きな精神的ショックを与えた。
交通インフラ面では、南阿蘇村にある阿蘇大橋(国道325号)が地盤のずれで崩落し、土砂崩れで国道57号も寸断されたほか、俵山トンネル(俵山バイパス)も崩落した。国道57号をはじめ、熊本市と阿蘇方面を直結する主要国道や俵山バイパスなども寸断。九州の人流および物流の要である九州自動車道やJR九州などの鉄道路線も寸断を余儀なくされ、道路・鉄道・空路が一時不通となった。
さらに、水道や電気、ガスなどのライフラインも一時は寸断された。こうした状況下で、地震発生直後の4月17日には、県内855カ所に避難所が設けられ、18万3,882人が避難を余儀なくされた。その後、避難者は各々の自宅に戻るほか、仮設住宅やみなし仮設に入居するなどして徐々に減少。16年11月18日には、最後の避難所が閉鎖された。一方で、自宅などを失った被災者が仮の生活を送る仮設住宅(みなし仮設含む)は、ピークとなる17年5月時点で約2万戸設けられ、約4万7,800人が身を寄せていた。以降も、再建が見通せない被災者のために、仮設住宅の入居期限は1年ごとの延長が繰り返されていたが、23年3月末をもって木山仮設団地(益城町)が閉鎖されたことで、熊本県内すべての仮設住宅が閉鎖となった。
重点10項目は概ね完了間近
熊本地震からの復旧・復興
熊本地震後の復旧・復興のフェーズにおいては、最初期にあたる応急復旧の段階では、人命救助やライフラインの復旧と並行して、寸断された交通網の再整備に焦点が当てられた。
たとえば、壊滅的な被害を受けた国道57号の復旧にあたっては、まずは並行する代替ルート(ミルクロード/県道北外輪山大津線)を短期間で復旧させることで、物流と通勤・通学の最低限の機能を回復させた。そのうえで、恒久復旧を急ぐため「北側復旧ルート」を計画し、地元説明や用地取得、トンネル工事を進行。発災から約4年半後の20年10月3日に全線開通へと漕ぎ着けた。
こうした震災直後の応急復旧とは別に、生活再建とまちの再生については、より長い時間を要する領域である。熊本県では震災翌年の17年3月、熊本地震からの復旧・復興を1日も早く確実に進めていくため、復旧・復興プランの「ロードマップ」(28項目)のなかから10項目を選定。重点的に進捗の把握を行うことで、復旧・復興全体の進捗を加速化していくことを公表した。
創造的復興に向けた重点10項目
①「すまい」の再建
②災害廃棄物の処理
③阿蘇へのアクセスルートの回復
④熊本城の復旧
⑤益城町の復興まちづくり
⑥被災企業の事業再建
⑦被災農家の営農再開
⑧大空港構想NextStageの実行
⑨八代港のクルーズ拠点整備
⑩国際スポーツ大会の成功
これら重点10項目のうち、25年4月時点で②③⑦⑨⑩の5項目が完了。残る項目についても、①「すまい」の再建→27年度完了予定、④熊本城の復旧→52年度完了予定。⑤益城町の復興まちづくり→27年度完了予定、⑥被災企業の事業再建→25年度完了予定、⑧大空港構想NextStageの実行→一部完了(空港アクセス鉄道除く)、となっている。文化財的な価値を維持しつつ慎重に進める必要があることで長期化を余儀なくされている熊本城の復旧を除けば、10項目中の9項目は、いずれも27年度をメドに概ね完了する予定だ。
【坂田憲治】
益城町の復興まちづくり
震源地から最も近く、市街地の多くの家屋が全半壊になるなど、震災の被害がとくに甚大だった益城町。町全体の約98%に住家被害が生じ、家屋倒壊等の影響で幹線道路・生活道路の交通機能が喪失したほか、町役場庁舎も深刻な被害を受けた。
その益城町では、熊本地震からの創造的復興のシンボルとなるまちづくりを支援する取り組みとして、県による「県道熊本高森線4車線化事業」と「益城中央被災市街地復興土地区画整理事業」の2大事業が進行。とくに復興土地区画整理事業では、甚大な被害を受けた益城町の中心市街地約28.3haを熊本都市圏東部地域における都市拠点として、行政・商業・サービス・交通結節点などの高次の都市機能を誘導するとともに、安心して快適に暮らせる災害に強いまちづくりの実現を目指すものだ。同区画整理事業の進行とともに、22年4月には「地域交流及び住民活動の場」「震災記憶の継承の場」「災害に備える場」となる復興まちづくりセンター「にじいろ」が供用開始となったほか、23年3月には益城町役場の新庁舎が落成。区画整理事業自体も27年度までの事業完了に向けて、造成工事や宅地引き渡しが順次進んでいく予定となっている。震災で甚大な被害を受けた益城町は10年を経て、新たなまちへと生まれ変わろうとしている。

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