武雄アジア大学、アンケート調査の内容判明 「学生確保見込み169名」の実像(前)
文科省が公開した武雄アジア大学の設置認可申請書類から、これまで旭学園が詳しく明らかにしてこなかった「学生確保見込み」が「169名」とされていたことが分かった。合わせて、アンケートの設問や集計方法も確認できるが、その内容を読むと、この「169名」という数字が、実際の学生確保を厳密に見通したものというより、設置認可審査を通すための説明資料としての色合いが強い。現実の入学予定者39名との乖離は、どこから生じたのか。
入学予定者数「39名」という現実
(学)旭学園(本部:佐賀市、内田信子理事長)が佐賀県武雄市に開学する「武雄アジア大学」について、3月26日に武雄市議会の全員協議会に出席した小長谷有紀氏(同大学長就任予定)は、入学予定者が定員140名の27.9%にすぎない39名にとどまることを明らかにした。
旭学園はこれまで学生確保の見通しについて、「大学設置認可基準にもある『高校生に対するアンケート調査』を行い、入学定員(140名/年)を満たす進学意向者の回答を得ている状況です」(武雄市ホームページ)としていたが、それ以上の詳しい説明もアンケート結果の開示も行ってこなかった。
しかし、実際の入学予定者数は39名にとどまった。なぜ、アンケートで「定員を満たす」とされた見通しと、ここまで大きな乖離が生じたのか。
申請書類は学生確保見込みを「169名」と結論
文科省は武雄アジア大学の設置認可申請書類をホームページで公開した。書類は以下のページで確認することができる。
文部科学省大学設置室の「認可申請書類(令和7年8月答申)」のページ
このうち、「(5)学生の確保の見通し等を記載した書類」で、武雄アジア大学がどのようにして学生確保の見通しを立てていたのかを見ることができる。
まず結論から述べると、武雄アジア大学はアンケートの結果、学生確保見込みを「169名」と結論付けていた。定員140名を超過する学生確保の見込みを立てていたことになる。(p42)
アンケート内容概説、「169名」はどう導かれたのか
その見込みはどのようにして算出されたのか。以下では具体的にアンケートについて概説する。
確保見込学生数を算出するにあたって用いられた設問は、以下の5問だ。
(編集注:以下いずれも選択肢は省略)
問 1 あなたは、卒業後の進路をどのように考えていますか。現在検討している進路すべてにマークしてください。(複数選択可能)
問 2 志望する大学等の設置者の希望を選択してください。現在希望している設置者すべてにマークをしてください。(複数選択可能)
問 3 高校を卒業後、学びたいと考えている興味のある学問分野を次の中から選択してください。興味のある学問分野すべてにマークをしてください(複数選択可能)。
問 4 武雄アジア大学東アジア地域共創学部 東アジア地域共創学科(仮称)が開設された場合、受験を希望しますか。次より1つ選択してください。
問 5 武雄アジア大学東アジア地域共創学部 東アジア地域共創学科(仮称)を受験して合格した場合、入学を希望しますか。次より1つ選択してください。
まず問1~3で、武雄アジア大学を志望先とする可能性がある学生層を絞り込む。有効回答数12,129件のうち、問1で進路として「大学」を希望したのは8,031人(66.2%)。問2は問1で「大学」「短期大学」「専門職大学」「専門職短期大学」を選んだ8,533人のうち、設置者について「私立」を選んだのが4,693人(55.0%)。問3で「商学・経済学」を興味のある学問分野として選んだのは2,875人(23.7%)だった(武雄アジア大学が設置する「東アジア地域共創学部」は学位分野に経済学関係を含んでおり、アンケート分析でも「商学・経済学」を主要な関心分野として扱っている)。
次に問4、5では受験意欲と入学意欲を問う。問4では、「第一志望として受験する」が 277 名(2.3%)、「第二志望として受験する」が 263 名(2.2%)、「第三志望以降として受験する」が 742 名(6.1%)で、合計 1,282 名が受験意欲を示した。問5では、問4で受験意欲を示した 1,282名について、「入学する」が369名(28.8%)、「志望順位が上位の他の志望校が不合格の場合に入学する」が781名(60.9%)で、合計1,150名が入学意欲を示した。
以上の結果から武雄アジア大学は学生確保の見込みを次のように結論付ける。
4)集計結果の分析(クロス集計)
上記のクロス集計結果より、卒業後の進路で「大学」、設置者の希望で「私立」、興味のある学問分野で「商学・経済学」を全て選択し、且つ当該学部学科を第一志望として受験し、入学すると回答した者は 169 名であった。これは予定している入学定員を上回るものである。
以上の結果により武雄アジア大学が 2026(令和 8)年 4 月に設置構想する「東アジア地域共創学部東アジア地域共創学科(仮称)」の学生確保の見通しは、予定する入学定員 140 名に対し 120.7%の 169 名から強い入学意欲を示された。(p41,42)
クロス集計とは問1~5で「大学」「私立」「商学・経済学」「第一志望として受験する」「入学する」のすべての条件を満たした人数を集計したものだ。ただし、申請書類にはアンケートの個票データが含まれていないため、アンケートの集計に間違いがないかどうかを検証することはできない。一見、各設問の割合の掛け算によって算出できそうだが、問1~3は複数回答設問であり独立事象ではないため算出できない。
武雄アジア大学は、このクロス集計をもって「学生確保見込み169名」と結論づけていた。
文科省はアンケート分析の妥当性に疑義を示していた
では、このアンケートの分析を、文科省はどのように見ていたか。申請書類の「(7)審査意見への対応を記載した書類(6月)」と「(8)審査意見への対応を記載した書類(3月)」を見ると、文科省はその妥当性に疑義を示していたことが分かる。
25年3月の審査意見は、指摘の1つとして、アンケート時に提示された概要説明リーフレットで養成する人材像を「東アジアと日本の発展に寄与するためのビジネスに関する専門的知識を有する人材を養成」と記載していたのに対して、申請書類では「・・・経済経営の素養の上に、観光、まちづくり、メディア・コンテンツ等の分野で地域貢献・地域実践する人材の養成」と説明されていることについて、人材像が異なると指摘。そのうえで「クロス集計結果に基づく学生確保の見通しの妥当性に疑義がある」としている。(p9)
また、同年6月の審査意見は、実施された追加アンケートについて、「当初アンケートの調査対象者が94校12,129件であったのに対し、追加アンケートは5校443件と少なく、単純比較ができない」とするなど、「依然として分析結果の妥当性への疑義が解消しない」としている。(p1)
しかし、このような疑義を示しつつも、文科省は最終的に武雄アジア大学に対して設置認可を与えた。アンケート結果に基づく「169名」という学生確保の見通しの妥当性について、文科省は設置を妨げる決定的欠陥とはみなさなかったことになる。
では、なぜこのような見通しが立てられ、現実には39名という結果になったのか。後編では、アンケートを通常のマーケティング調査の視点から見た弱点や、19.5億円の補助金と設置認可の関係を検証する。
(つづく)
【寺村朋輝】










