福岡・飯塚に12万坪超の工業団地構想「新たな付加価値」への挑戦

(株)チェック

 飯塚市や田川市、福岡市で4,000戸超の不動産管理を手がける(株)チェック。2012年の創業時から筑豊エリアを拠点に、不動産、福祉、建設、農業で地域課題の解決に挑み、現在ではグループ会社6社、従業員数は75名を数える。創業者の佐々木義人社長は、不動産を単なる売買や仲介の手段ではなく、地域資源を再編し、まち全体の価値を高めるための装置として捉える。ゆめタウン飯塚隣接地の開発や、約12万3,700坪におよぶ工業団地構想など、その取り組みは筑豊エリアの枠を超え、九州全体に波及し得る地域開発モデルとして注目を集めている。

原点は「不動産×福祉」

代表取締役社長 佐々木義人 氏
代表取締役社長
佐々木義人 氏

    佐々木義人氏は2012年、26歳で福岡・筑豊エリアに(株)チェックを創業した。起業前は、北九州市小倉北区の金融機関出身者が率いる収益物件専門の不動産会社で、22歳から3年間にわたり実務経験を積んだ。

 チェック創業時から掲げていたのが、「不動産×福祉」という構想である。創業1年目は、平日に障がい者就労支援施設で働き、週末に不動産業務を行うという二足のわらじで、事業基盤を築いた。現場経験を通じて、不動産管理にともなう簡易作業を障がい者が担うことで、人手不足の解消と社会参加の拡大を同時に実現できるのではないか──そうした着想が、その後の事業展開の原点となった。

 同時に、人口減少にともなう空室増加も見据え、既存物件を活用したコンバージョンにも早くから着目。福祉施設と一般住宅の中間に位置する新たな住まい方やサービスの可能性を、模索してきた。将来の社会構造を先読みした発想が、同社の出発点にあった。

筑豊を「面」で押さえる

 創業2年目からは不動産事業を本格化させた。資金も人脈も乏しいなかでのスタートだったが、当時の田川市は大手フランチャイズの空白地帯であり、福岡県立大学の学生向け賃貸仲介を足がかりに、物件オーナーとの信頼関係を着実に築いていった。

 一方で、佐々木氏は早い段階から市場を広域で見ていた。筑豊エリアに埋もれている不動産情報を福岡都市圏の需要へつなげることができれば、地域経済の活性化につながる──その考えの下、早期に福岡市へ進出。田川、飯塚、福岡の3拠点体制を整えた。単なる店舗展開ではなく、エリアを「点」から「面」で捉える戦略で、情報と需要を結び付ける広域ネットワークの構築を図った。

承継を機に事業拡張

 同社にとって大きな転機となったのが、17年の社会福祉法人マルミ会の事業承継である。将来的な福祉事業への参入を見据えて承継機会を探るなか、管理物件オーナーから「後継者がいない」との相談を受け、承継が具体化した。承継に先立ち、信頼できる同級生に施設長候補として声をかけるなど、受け皿となる体制を事前に整備。承継後は準備していた体制を速やかに実行へ移し、短期間で組織体制を刷新した。

 その後は建設業許可を取得し、宅地分譲や造成工事にも進出。この数年で100区画超の宅地分譲を手がけてきたという。これにより、不動産仲介、賃貸管理、開発、買取再販、リノベーション、建設までをグループ内で一貫して担う体制を構築。収益機会の最大化とスピード経営を両立させる、垂直統合型の事業モデルである。

 24年には農業生産法人も設立した。背景にあるのは、農家の高齢化にともなう担い手不足という将来リスクへの危機感である。社会福祉法人マルミ会を展開する福岡県みやこ町を拠点に農業事業へ参入し、生産のみならず保管や流通を含めた基盤づくりを進めている。また、廃校をライスセンターや倉庫へ転用し、農業の生産・保管・流通を一体化する構想を進めるなど、遊休資産を地域の新たな機能へと組み替える姿勢は一貫している。

 現在は不動産賃貸・売買を中核に、社会福祉、建設、農業へと事業を拡張。社会福祉分野では、住まい、就労、生活支援を複合的に提供し、地域課題を部分的ではなく面的に解決する体制を築いている。管理戸数は4,000戸超、福岡県内で仲介4拠点、管理2拠点を展開し、従業員75人、関連会社6社のグループへと成長した。

官民連携を加速

_香春町との協定締結式に出席した関係者(左からデベロップ・山岸氏、香春町・鶴我町長、チェック・佐々木社長)
香春町との協定締結式に出席した関係者
(左からデベロップ・山岸氏、
香春町・鶴我町長、
チェック・佐々木社長)

    同社の成長を語るうえで外せないのが、飯塚市をはじめとする自治体との連携である。飯塚市とは包括連携協定を締結し、企業誘致に際しては市が雇用や補助金に関する情報を、チェックが土地情報を提供するという役割分担を構築。官民で企業誘致を進める体制を整えている。田川郡香春町でも、成果は表れている。町側から「観光に力を入れたいが、宿泊施設が不足している」という課題が共有されていたことを受け、佐々木氏は宿泊インフラ整備に着手。25年11月には町長とともに、R9ホテルズグループ((株)デベロップ)の誘致を実現した。自社で開発した用地にホテルを呼び込むことで、地域のボトルネックだった「泊まる場所がない」という課題の解消につなげた。同ホテルと香春町との包括連携協定締結においては、立会人も務めた。現在は隣接地で複合商業施設の開発も進めており、観光と商業を組み合わせた面的開発によって、地域資源の価値最大化を図る構想である。

ゆめタウン隣接地を集約

 足元で進む注目案件の1つが、ゆめタウン飯塚の隣接地での開発である。面積は1,615.10坪(5,339.2m2)。商業地域に位置する希少性の高い大型用地だ。

 同地は、高齢を理由に閉店を検討していた焼肉店オーナーからの相談を起点に、まず中核となる物件を取得。その後、隣接する老朽建物の取得交渉を進め、さらに周辺の長屋所有者にも土地の有効活用を丁寧に説明し、理解を得ながら集約を進めた。3段階で取得を重ねた結果、一体活用が可能となった。

 再整備が進む飯塚駅からのアクセスも良好な同地に対して、佐々木氏が強い期待を寄せるのが、マンション開発だ。商業地域であるため容積率も高く、福岡市や北九州市へのアクセス性、学園都市としての特性を踏まえれば、筑豊エリアで最大規模のマンション供給につながる可能性を秘める。もっとも、販売価格の上限が福岡市内ほど高くはなりにくいという地域特性もある。そのため、次に控える工業団地プロジェクトと連動させ、雇用創出と人口流入を通じて、住宅需要そのものを押し上げる構想を描く。工業団地で雇用が生まれ、住居需要が高まり、その受け皿としてマンション開発が機能するという循環型の発想である。

12万坪の工業団地構想

 もう1つの柱が、約12万3,700坪におよぶ工業団地用地の開発である。民間主導としては極めて大型のプロジェクトであり、県内の企業誘致を左右する案件に発展する可能性を秘める。同社では「セントラル・ビジネスパークIIZUKA(仮称)」として整備を進める方針だ。

 飯塚市では従前から、企業誘致用地の不足という課題を抱えてきた。福岡県全体で見ても、企業立地に対応できるまとまった用地は限られている。加えて、産炭地域振興を背景に30~40年前に造成された既存工業団地の老朽化も進む。工場は同じ場所で建て替えることが難しく、移転先が確保できなければ、企業も雇用も地域外へ流出しかねない。佐々木氏は、そうした潜在的な移転需要が相当数存在するとみている。

 立地は近畿大学産業理工学部の隣接地で、福岡市と北九州市の中間に位置し、幹線道路へのアクセスにも優れる。物流拠点、事業拠点の双方として優位性が高いエリアだ。ターゲットは雇用を多く創出する企業であり、飯塚市だけでなく筑豊全体への波及効果を狙う。飯塚市の企業立地促進補助金の対象となることも、進出企業にとって追い風となる。

 なぜ、飯塚市なのか──。佐々木氏は「飯塚市には理工系大学が立地し、沢井製薬やゆめタウン飯塚の誘致実績もある。産学官連携によるイノベーションの土台がある」とみる。雇用、居住、教育、医療といった都市機能が集積する点に将来性を見出しており、地域の未来を託す投資先として、飯塚市の潜在力は大きい。

セントラル・ビジネスパークIIZUKA(仮称)の造成計画図
セントラル・ビジネスパークIIZUKA(仮称)の造成計画図

目指すは「まちづくり企業」

 佐々木氏は、「不動産はあくまで手段に過ぎない。地域資源を再編し、エリア全体の価値を引き上げることが本質だ」と語る。その視線は不動産業の枠内にとどまらない。地域の構造そのものに介入し、新たな価値を実装していくプレイヤーとして、自社の役割を定義している。

 「行政には、やりたくても予算の制約でできないことが多い。そこに民間企業である私たちが入り、地域の方々と連携しながら、より魅力的なまちをつくっていきたい」(佐々木氏)。

 福祉、建設、農業へと多角化してきた背景にも、「社会問題をビジネスとして解決する」という一貫した思想がある。

 目指すのは、「従来の不動産会社の延長線上ではありません。新たな付加価値です」(佐々木氏)と話す。地域と向き合い、構想を描き、土地の価値を再設計し、事業として実装する──その一連を担う「まちづくり企業」への進化である。活動エリアも筑豊にとどまらず、福岡市内に加え、熊本など大型案件が集積するエリアへの展開も視野に入れる。

 創業15年目を迎える同社は現在、「第二創業期」に差しかかっている。組織の再編や事業構造の見直しを進め、これまでの延長線上にない経営への転換を図る考えだ。社会問題をビジネスへ転換し、官民連携で価値として実装していく──その挑戦は、地方都市再生のモデルケースの1つとなりそうだ。

地方再生の共創役

 チェックは、単なる土地売買業者ではない。地域課題を把握し、行政と連携し、複数の事業領域を横断しながら最適解を提示する「共創パートナー」として存在感を高めている。不動産、福祉、建設、農業の4事業が有機的に結び付くことで、持続可能な地域社会づくりへとつながっている。

 飯塚市が掲げる「働く場所をつくり、住む場所として選ばれるまち」の実現を、民間側から支えるチェックグループ。人口減少、高齢化、産業空洞化といった地方の課題を、佐々木氏は単なる困難ではなく、解決可能なテーマとして見据える。課題が見えるからこそ、事業として解決策を提示できる──その姿勢が、次の構想、次の開発を生み出している。

【児玉崇】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:佐々木義人
所在地:福岡県田川市大字伊田3428
設 立:2012年5月
資本金:300万円
URL:https://check-fukuoka.com/

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