武雄アジア大学の収支計画が明らかに(1)初年度経費3.4億円、入学生低迷で資金流出拡大の恐れ
(学)旭学園(佐賀市、溝上泰弘理事長)が4月に武雄市に開設した武雄アジア大学について、設置認可時に提出した収支計画が明らかになった。
それによると、武雄アジア大学の開設初年度の経常経費は3億4,001万円、開設後4年間の教育活動収支差額は5億5,034万円の赤字、減価償却費を除いた教育活動ベースの資金収支は3億1,034万円のマイナスとして計画されていたことが分かった。
しかし、これらの収支計画はいずれも4年間定員を満たした場合だ。実際には初年度の入学生が定員140名に対して37名にとどまったことにより、計画を大きく上回る赤字と資金流出は避けられない。
旭学園は、既存の佐賀女子短期大学をはじめとした学校運営でも従来から慢性的な赤字体質にあり資金流出が続いていた。さらに新設した武雄アジア大学の大幅な赤字と資金流出が加わることにより、経営上ますます難しい局面に立たされている。
寄附行為認可申請書類が公開
文部科学省の大学設置室はホームページにて、旭学園が武雄アジア大学の設置認可申請と並行して提出した寄附行為認可申請書類を公開した。
https://www.dsecchi.mext.go.jp/2508nsecchi/document_2508n1.html
武雄アジア大学の「寄附行為認可申請書類」のうち、収支計画に関する資料は主に3ページある。
施設設備設置費は約29億円、初年度経費は3.4億円
p26の「経費の見積り及び資金計画を記載した書類」では、開設までに発生する施設・設備の設置経費と、開設初年度の経常経費(運営費)が記されている。設置経費のうち、まず武雄市から貸与される土地の賃貸借料として、令和6年度から令和11年度まで無償で、令和12年度から令和32年度まで年額925万円であることが記されている。次に施設・設備の設置費用として、令和6年度が8億9,893万円、令和7年度が20億1,629万円、合わせて29億1,522万円と記されている。そして、令和8年度(開設年度)の経常経費として3億4,001万円が計画されていることが分かる。
資金収支予算決算総括表と事業活動収支予算決算総括表の見方
次に、p31「資金収支予算決算総括表」とp32「事業活動収支予算決算総括表」では、旭学園が事前に想定していた開設年度(令和8年度)から完成年度(令和11年度)までの収支計画を見ることができる。
p31「資金収支予算決算総括表」は、一般企業におけるキャッシュフロー計算書に似たもので、現金・預金などの資金の動きを見ることができる。
もう1つのp32「事業活動収支予算決算総括表」は、一般企業における損益計算書に近く、教育活動・法人運営活動における収入に対してどれだけ費用がかかったかを見ることができる。
2つの表を見ると、教育活動に関わる主要な収入項目である学生生徒納付金、手数料、寄付金、雑収入は2つの表で一致している。一方、支出では、人件費は一致しているものの、教育研究経費と管理経費は「事業活動収支予算決算総括表」のほうが多くなっている。これは、事業活動収支では減価償却費を含むためとみられる。年度ごとに比較すると、各年度とも「事業活動収支予算決算総括表」のほうが、教育研究経費で5,800万円、管理経費で200万円、合計6,000万円多く計上されている。
武雄アジア大学の4年間の収支計画として、「事業活動収支予算決算総括表」の教育活動収支差額は、4年間累計(青枠)で5億5,034万円の赤字。また、「資金収支予算決算総括表」の赤枠内の収入から支出を差し引いて算出される教育活動ベースの資金収支は、4年間累計で3億1,034万円のマイナスとして計画されていたことが分かる。
学費収入は計画より約1億2,500万円減少
では、入学生数にかかわる学費収入について、旭学園は当初計画でどのように想定していたのか。学費収入は「学生生徒等納付金」にあたる。これについて初年度は1億6,940万円と計上されている。武雄アジア大学の年間学費は、授業料65万円、施設設備費20万円、学生支援費11万円、入学金25万円で、1名あたり合計121万円と設定されており、121万円×140名=1億6,940万円と算出される(※1)。2年度以降は入学金を除く96万円×140名=1億3,440万円を足す計算になっている。
※1:武雄アジア大学は初年度について「一期生特別奨学金」として、留学生を除く入学者全員に25万円を支給するとしていた。この奨学金が学生生徒等納付金の控除として扱われるのか、別途奨学費として支出処理されるのかは資料上確認できないため、本稿では初年度学費121万円のまま検証する。
しかし、実際には初年度は37名の入学生となったため、学生生徒等納付金は121万円×37名=4,477万円ということになり、計画上の1億6,940万円から1億2,463万円も少ないことになる。教育活動収支差額としては3億3,438万円の赤字、教育活動ベースの資金収支としては2億7,438万円のマイナスとなる。
旭学園の令和6年度末(25年3月期)の貸借対照表【表4】を見ると、流動資産は9億円(赤枠)、うち現預金は6.6億円であった。まだ決算書が公開されていないが、令和7年度末(26年3月期)はさらに流動資産が減少していることも十分考えられる。冒頭で述べた通り、旭学園は既存学校の運営でも従来から慢性的な赤字体質で資金流出が続いている。そこへさらに令和8年度は武雄アジア大学単体で2億7,438万円の資金流出が加算されることになり、資金繰りがひっ迫しつつあることが推測される(※2)。
※2:令和7年度には武雄市からの19.5億円(佐賀県補助含む)の補助金が交付されるが、これは【表1】に見える施設設備設置費の支払いに充てられるため、運営資金面での補助にはならない。
今後の新入生の推移によって、収支はどうなるか
では、初年度の入学生が37名と決定した今、今後の武雄アジア大学の収支予想はどうなるのだろうか。2年度目以降の入学生数の推移を4つのモデルに分けて、それぞれの場合で、学費収入ならびに教育活動収支差額と教育活動ベースの資金収支差額がどうなるのかを考える。
モデル1:2年度目以降、定員140名が入学する。
モデル2:入学生が定員の約25%(35名)ずつ増加する(便宜的に2年度目は70名とする)。
モデル3:2年度目以降は入学生が70名となる。
モデル4:2年度目以降も入学生が初年度と同じ37名にとどまる。
4つのモデルで年度ごとの学生生徒納付金を算出し、それを【表3】事業活動収支予算決算総括表に落とし込んで算出した教育活動収支差額(濃い緑マーク)、ならびに【表2】資金収支予算決算総括表の赤枠に落とし込んで算出した教育活動ベースの資金収支差額(薄い緑マーク)をまとめたものが【表5】だ。初年度の37名(青マーク)は4つのモデルすべてで同じで、2年度目以降の新入生(黄色マーク)がモデルごとに異なる。また、入学生数の変化に応じて学生生徒納付金だけを変動させている。一方で、手数料、寄付金、雑収入、支出項目は、当初計画のまま据え置いている。
【表5】の試算を見て分かることは、当初計画では4年目単年で資金収支がプラス(681万円)になることを想定していたものの、2年度目以降定員通りに入学するモデル1でも、4年目単年だけで資金収支が9,206万円のマイナスになることだ。一期生が37名と大きく低迷したことの影響の大きさがうかがい知られる。
また、4年間の累計を見ると、当初計画で資金収支は3.1億円のマイナスだが、モデル1では7.3億円、モデル2以降では10億円を超えるマイナスとなっている。大型の資産売却や追加借入、寄付金の確保など、何らかの資金手当てがなければ、開設後4年間の資金繰りは相当に厳しくなる可能性がある。
(つづく)
【寺村朋輝】













