出来町公園・休養施設が再始動 27年秋「HAKATA 縁(EN) TERRACE」開業へ

千年門を望む
千年門を望む

地場グループが
博多旧市街の拠点整備へ

HAKATA 縁(EN) TERRACE 位置    今年3月31日、福岡市が公募型プロポーザル方式で実施していた「出来町公園休養施設等設置・管理運営事業に係る事業」の優先交渉権者として、プレジデントホテル博多などのホテル運営を手がける(株)プレジデントハカタを代表企業とするグループが選定された。グループ名は「HAKATA 縁(EN) TERRACE」で、プレジデントハカタのほか、(株)井上輝美建築事務所プラス都市開発研究所、(株)百田工務店、古賀緑地建設(株)、(株)JTB、(株)ふく富グループで構成される。

 同事業は、「博多旧市街」に属する御供所地区における回遊性の向上や賑わい創出、観光客や公園利用者の利便性向上などを目的として、出来町公園内の一部区間において休憩スペース等の受け入れ環境整備、および観光バス乗降場の運営について、民間活力を導入して行うもの。事業の実施にあたっては、都市公園法に基づく「公園管理者(市)以外の者が公園施設を整備・管理運営する制度」を活用し、民間事業者による施設の整備・運営、および観光バス乗降場の運営について公募型プロポーザル方式で進めていた。

 今回の同グループによる提案では、出来町公園を中心に「歴史・文化・人が交わる開かれた縁側空間」を創出するとしている。観光客と地域住民が自然に交流し、伝統・歴史・文化・食の体験に加え、食事やカフェ、地域住民同士のコミュニケーション機能を凝縮した新たな文化交流拠点を目指すとしており、これまでにない価値を生み出し、地域防災機能を備えた「安心のまちの拠点」としていく方針だ。

 S造・地上2階建の休養施設の1階部分には、休憩・観光案内スペースを設置するほか、体験型飲食テナントや軽飲食テナントを誘致。「明太子道場」や「うどん道場(仮)」などの体験型“コト消費”飲食店と、地域に根差すカフェを組み合わせることで、集客を促すとともに、博多の文化と食を体験する起点となる空間を創出する。2階部分は、伝統文化の継承と周辺エリアとの回遊性向上をテーマに、立体的な回遊空間を形成。エデュケーション(教育)とエンターテイメント(娯楽)を掛け合わせた「エデュテイメント型テナント」として、プロジェクションマッピングなどを活用して博多の歴史・文化・芸能を楽しみながら学べる体験型のテナントを計画している。

 施設内にはほかに、ユニバーサルデザインに配慮したトイレや、多目的広場と連動した休憩スペースなどを整備。オフィスワーカーや観光客、地域住民など、多様な利用者が気軽に立ち寄れる拠点を目指すほか、防災倉庫を設け、災害時には地域防災拠点としての役割も担っていく計画だ。

 今後、休養施設は福岡市との事前協議や確認申請などを経て、今年12月の着工を予定。27年10月の開業を目指している。

“塩漬け”を経て再度の公募
応募動機は“地域への恩返し”

 今回、休養施設が設置される出来町公園は、博多駅から北西に約0.5kmの都心部に位置する街区公園である。同公園は、福岡市が進める「博多旧市街プロジェクト」の第1弾として2017年12月にリニューアル整備され、その際に公園内に観光拠点となる休養施設を設置することも計画。同施設の設置・管理運営事業の事業者も決定し、福岡市と基本協定を締結していた。だが、その後に事業者側からの協定解除の申し入れを受けて、休養施設の開発がストップ。その後、福岡市では再公募を行おうとしたものの、コロナ禍もあって、長らく“塩漬け”の状態にあった。それが、25年11月からようやく再度の公募が行われ、今年3月に優先交渉権者が決定するに至ったわけだ。

 今回の休養施設の公募への参加について、「HAKATA 縁(EN) TERRACE」の代表企業であるプレジデントハカタの代表取締役・友杉隆志氏は、「当社は、この出来町公園のすぐ目と鼻の先でプレジデントホテル博多などの複数のホテルを運営する地場企業で、私自身もこの地で生まれ育った地元の人間です。そのため、この出来町公園への愛着は強く、第1回目の公募のときから検討はさせていただいていたのですが、当時は条件が合わず、応募を断念しました。ですが、その後に紆余曲折あってこの場所が更地のまま放置されている状況を何とかしたいと思い、“地域への恩返し”の意味も込めて、今回応募させていただきました」──と想いを語る。

(株)プレジデントハカタ 代表取締役 友杉隆志 氏
(株)プレジデントハカタ
代表取締役 友杉隆志 氏

    また友杉社長は、「実は、私は昨年4月から御供所自主防災委員会の会長を務めているのですが、一時避難所である出来町公園に、雨風をしのぐ場所がまったくないことに疑問を感じていました。今回の休養施設では、施設内に防災倉庫を設置するほか、有事の際に地域の人を受け入れられる機能を盛り込むことで、この御供所地域の防災力に強化につながるとの想いがあったことも、今回の応募の動機の1つです」と話す。

歴史・文化をつなぐ
通り抜ける縁側空間

 グループのなかで、今回の休養施設の設計を担当する井上輝美建築事務所プラス都市開発研究所の代表取締役・井上輝美氏は、施設のキーコンセプトを「通り抜ける縁側、緑を包む大屋根」と説明する。

 「グループ名でもある『HAKATA 縁(EN) TERRACE』は当社で考案したものですが、この名前のなかにもある『縁(縁側)』を重要なキーワードとしています。今回の施設は、単なる観光施設や飲食施設としてではなく、承天寺通りと公園、広場、そして博多旧市街の文化をつなぐ“通り抜ける縁側”として計画しており、街と公園をつなぐ“路地の軸”と、通りと建築、公園と建物を緩やかにつなぐ空白である“縁側空間”とでゾーニングしています。また、建築全体を緩やかに包む大屋根を設けることで、内外が連続する居心地の良い半屋外空間をつくっていくことを意識しています」(井上氏)。

 メインで設計を担当した同建築事務所の阿部健人氏は、「今回の設計では、周辺はオフィスビルなどの高層建築が立ち並ぶ一方で、承天寺通りに隣接する博多旧市街への玄関口という立地から、現代と歴史・文化とを違和感なくつなげる『現代的和風』のデザインを意識的に取り入れています。また、建物は2階建ですが、承天寺通りに面する側の一部を平屋にすることで、歩行者目線(アイライン)での圧迫感を抑え、街並みに馴染む落ち着いたボリューム感の実現を目指しています」──と施設の外観デザイン・意匠について説明。博多の歴史・文化の要素として、「博多塀」の意匠を取り入れるなどの工夫も凝らしていくという。

観光案内所
観光案内所

多くの人が集う“ハレの場所”へ

 出来町公園の周辺は、住宅や業務機能が混在し、高層のオフィスビル、マンションなどが立ち並ぶなど、利便性が高く、高度利用も可能な地区となっている。また、公園北側の御供所地区は、福岡市の定義する「博多旧市街エリア」に該当し、承天寺をはじめとして貴重な歴史・文化資源である寺社などが群を形成しており、これらの観光資源を生かした「博多旧市街フェスティバル」や「博多旧市街ライトアップウォーク」「博多灯明ウォッチング」など、地域と福岡市が連携した催しが開催されている。さらに、出来町公園を含む博多駅周辺は、都市の国際競争力と防災機能の強化を実現するとともに、コンパクトで賑わいのあるまちづくりを進めるため、都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域「福岡都心地域」にも指定されている。

 しかし一方で、出来町公園の周辺や承天寺通りなどは、博多駅前の住吉通りや大博通りなどと比べると、どちらかといえば“路地”的な性格が強く、これまではあまり脚光を浴びることがなかった。だが、出来町公園の先にある博多旧市街には、貴重な歴史・文化資源である寺社などが豊富にあり、インバウンド旅行客などをターゲットとした観光地として最適なエリアだ。今回の休養施設は、そうした博多旧市街の情報を発信する観光振興機能のほか、体験型“コト消費”やエデュテイメント型のテナントも備えており、博多旧市街への玄関口としての役割だけでなく、この施設自体が目的地となり得るポテンシャルをも秘めている。

 「昔の出来町公園は、うっそうとしていて暗く、ホームレスの方々がたむろしていたりして、地元の人間がいうのもなんですが、近寄りがたい場所でした。それがリニューアル整備されてキレイになり、近隣のオフィスの方々や観光客などが集う公園へと変貌しました。そして今回の休養施設が開業すれば、出来町公園はさらに明るい“ハレの場所”へと転換していくでしょう。今後は、この休養施設を起点として、博多駅から博多旧市街へとつながる“面”での回遊性を生み出していきたいと考えています。また将来的には、たとえば福岡市の宿泊税を活用するなどして、博多駅から承天寺までの道路舗装を石畳にして灯籠が並べるなど、京都の街並みのような情緒ある空間にしていければいいですね」(友杉氏)。

観光案内所
稚児舞

【坂田憲治】


公園整備で問われる
施工力と調整力

都市公園、再整備へ

 福岡市博多区の出来町公園で、長く停滞していた休養施設整備がようやく動き出す。公園本体のリニューアル整備は先行して進んでいたが、拠点施設については過去の計画が流れ、空白の時間が続いていた。今回、その受け皿となる事業が本格化し、博多駅周辺から博多旧市街へ人の流れをつなぐ新たな結節点として期待が高まっている。

 施工を担うのは優先交渉権者グループの一社、(株)百田工務店。同社は、今夏開業予定のPark-PFIを活用した「香椎浜北公園整備・管理運営事業」の代表企業として事業を進めるほか、「大濠テラス」の施工も手がけるなど公園整備事業の実績をもつ。同社の代表取締役社長・百田善太郎氏は、「昔の出来町公園のイメージを知っている身からすると、ここまで変わってきたのは感慨深い」と語る。出来町公園は、かつての印象から大きく変わりつつあり、都市公園としての役割も新たな段階に入ろうとしている。

(株)百田工務店  代表取締役社長 百田善太郎 氏
(株)百田工務店
代表取締役社長 百田善太郎 氏

 一方で、開業までの道筋は平坦ではない。百田氏は、今後の懸念として資材高騰や工期への影響を挙げる。「今からの工事になると、どうしてもコストは上がってくる。当初計画にどう合わせていくかが心配だ」と話し、確認申請や行政との協議が長引けば、着工や開業時期にも影響しかねないとみる。

 公募型プロポーザル案件は通常の建築案件と異なり、設計、施工、行政調整、運営準備が複層的に絡む。百田氏も「取ってからのほうが大変」と語っており、受注後に本当の難しさが始まる事業だという実感がにじむ。資材価格の高止まりが続くなか、事業計画と施工現場の現実をどうすり合わせるかが問われる。

 百田氏はそれでも出来町公園の将来像に大きな可能性を感じている。博多駅周辺は駅前通りや大博通りなどの表玄関側の整備が先行してきたが、出来町公園から博多旧市街へつながる承天寺通り側は、なお発展余地が大きい。「魅力的な拠点施設ができることで、博多駅周辺のイメージももっと良くなるのではないか」と百田氏は期待を寄せる。

 公園を核に回遊性を高め、街の滞在価値を押し上げる発想は、単なる施設整備にとどまらない。博多駅と博多旧市街をつなぐ“裏動線”を変え、都市の使われ方そのものを更新する試みともいえる。出来町公園が休憩や通過の場にとどまらず、街歩きの起点となれば、周辺エリアへの波及効果も見込まれる。

“見える仕事”が誇りに

 百田氏がこうした公園整備事業に前向きな理由は、まちづくりへの貢献だけではない。誰もが利用できる公共空間だからこそ、社員の誇りやモチベーションにつながる面も大きいという。百田氏は、「公園の施設に携われることは、社員にとっても誇りになります。完成後に家族と訪れ、『これは自分たちの会社が建てたんだよ』と話せることは、大きなやりがいになります」と語る。

 同社が得意とする戸建住宅をはじめ、学校や庁舎の工事は、一般の人が日常的に接する機会が限られる。一方、公園は完成後も多くの市民や観光客が訪れる場所であり、街のなかに“見える仕事”として残り続ける。そうした実感は、現場で働く人のやりがいを高める。

 採用面でも効果は小さくない。百田氏は「百田工務店を知らなくても、こうした施設は知ってもらいやすい」と話し、学生やその親世代に会社の仕事を具体的に伝える材料になると考えている。とくに県外からの採用では、会社名だけでは伝わりにくいが、誰もが訪れられる公園施設であれば、企業の実績と地域との接点を可視化しやすい。

 出来町公園の事業は、博多の回遊拠点づくりであると同時に、地域建設会社の存在感や信頼を広く示す舞台にもなる。眠っていた都市拠点が再び動き出すことで、博多のまちづくりと地域企業の価値が、改めて問われることになりそうだ。

【内山義之】

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