小規模事業場へのストレスチェックの義務化

岡本弁護士
岡本弁護士

    2015年から、ストレスチェックの実施が義務付けられました。ただし、「労働者数50人未満の事業場」(小規模事業場)においては、これまで努力義務とされていましたが、28年4月から義務化されることになりました。そのため、小規模事業者も今後は、ストレスチェックの実施に向けた体制の整備などが必要になります。

 ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止が目的です。事業者は、労働者のストレスを把握するための検査(ストレスチェック)を実施することで、労働者自身のストレスへの気付きを促し、セルフケアを進める(受検した労働者の約7割が有効だったと回答しています)とともに、「高ストレスと判定された労働者に、医師の面接指導の機会の提供」「医師の意見を踏まえた就業上の措置の実施」「集団分析を通じて職場ごとのストレス要因を把握し、職場環境の改善につなげる」という対応をしていくことになります。

 労働者がひとたびメンタルヘルス不調になると、その病休期間は平均約3カ月。復職後に再び病休になる割合も約半数となっており、小規模事業場にとっては、大きな人材の損失になります。また、ストレスチェック制度を通じて、働きやすい職場を実現することで、生産性の向上や人材の確保・定着、企業価値の向上といった持続的な経営につながり、メリットも大きいと考えられます。

 他方で、メンタルヘルス不調の兆候を放置し、結果として従業員の休職や自死などの重大な事態に発展した場合、企業は「安全配慮義務違反」としての責任を追及され、高額な損害賠償を求められる可能性があります。また、ストレスチェックと面接指導を実施したものの、医師の意見に基づく適切な業務調整などを怠ったことが、安全配慮義務違反の一因として認定された裁判例などもあります。ストレスチェックを、単なる検査をするだけのものと考えることは問題であり、結果を踏まえた適切な事後措置の徹底が重要ということになります。

 ストレスチェック制度導入の流れの概要は、次の通りです。

①制度の導入方針を決定し、表明
②実施体制、実施方法などについて、関係労働者の意見を聴取
③意見聴取の結果を踏まえ、ストレスチェック制度の社内ルールを作成、周知
④実務担当者の選任:外部機関に依頼して実施者などを選定、事業場における実務担当者を指名するなど

 小規模事業場では、原則として、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されています。しかし、外部に委託して終わりというものではなく、あくまで事業者の責任で実施することになります。医師からの意見聴取や、それに基づく就業上の措置を講じること、集団分析結果を活用し、職場環境のストレス要因の軽減に取り組むことなどは、事業者が行わなければならない対応になります。

 今回の全面義務化から1年以内(29年3月31日まで)に、最初のストレスチェックを完了する必要があります。前述の通り、事前の準備にも時間がかかりますので、早めに準備に着手されることをお勧めします。まずは、26年2月に公表された厚労省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を参照されると良いでしょう。また、費用についての助成制度もありますので、活用を検討してみてください。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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