今度こそ実現できるか? 地下鉄箱崎線×西鉄貝塚線・直通化(前)

西鉄から地下鉄に乗り換える利用者
西鉄から地下鉄に乗り換える利用者

市が直通化の検討に本腰
西鉄も中計で検討開始

福岡市地下鉄と西鉄が接続する貝塚駅
福岡市地下鉄と西鉄が接続する貝塚駅

 過去に何度も検討されては立ち消えてきた、福岡市地下鉄箱崎線と西鉄貝塚線との直通化の可能性をめぐる議論が現在、改めて本格化してきている模様だ。

 福岡市では2025年5月、公共交通を主軸とした持続可能な総合交通体系の構築を目標として掲げる「福岡市都市交通基本計画」を策定・公表した。同基本計画は、福岡市における交通分野における基本理念や目標像を示すとともに、交通に関する取り組みを進めていくにあたっての方針や主な施策を体系的にとりまとめたもの。そのなかの「方針3:コンパクトな都市を支える交通ネットワークの充実・強化」の項目で、「地下鉄箱崎線と西鉄貝塚線の直通運転化の検討」については「中長期的な交通状況の変化や国制度の動向などを踏まえ、利便性向上策とあわせ検討」と明記されている。

 髙島宗一郎・福岡市長も25年12月9日の市長会見で、都市交通基本計画に盛り込んだ福岡の交通課題の解消に向けた検討の1つとして、地下鉄箱崎線と西鉄貝塚線の直通運転の実現可能性についても速やかに検討を始めていく旨を言及。26年1月に行われた福岡市の交通対策特別委員会の中間報告でも、「多くの沿線住民が要望する長年の重要課題であり、西鉄貝塚線の混雑率が上昇傾向にあることからも、早期の実現に向けて、より費用対効果や収支採算性の高い事業手法などについて、引き続き調査・検討を進める必要がある」とされている。市内の他の交通課題との優先度合いの兼ね合いはあるだろうが、福岡市として両鉄道路線の直通化の検討には、本腰を入れていく構えのようだ。

 一方、西日本鉄道(株)(西鉄)では今年3月、26年度から28年度までの3カ年を対象とする「にしてつグループ 第17次中期経営計画」を策定・公表した。「人とノウハウとブランド力で拓く、新たな成長ステージ」をテーマとする同中計では、重点施策(モビリティ)のなかの「持続可能なモビリティネットワークの構築」で掲げる2項目の1つとして、「西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の直通運転の実現に向けた検討」と明記。西鉄としても、中計のなかで地下鉄箱崎線との直通化の検討を行っていく方針だ。

 こうして現在、福岡市と西鉄のそれぞれが、中長期的な計画のなかに地下鉄箱崎線と西鉄貝塚線の直通化の検討を盛り込んでいる。さらに7月2日には、福岡市の髙島市長と西鉄の林田浩一・社長とが市役所で直通化に関する“トップ会談”を実施。両者とも直通化の実現に向けて、前向きな姿勢を示した模様だ。過去にも何度か議論の俎上に載せられてきた両路線の直通化の可否だが、こうした直近の動きを見ると、“今回ばかりは実現するのか?”との期待を抱かずにはいられない。

半世紀以上前から検討も
実現しない直通化

 そもそも地下鉄箱崎線(高速鉄道2号線)は、福岡市交通局が運営する鉄道路線で、博多区の中洲川端駅から東区の貝塚駅までの4.7kmを結んでいる。全7駅で、平均駅間距離は783m。一方の西鉄貝塚線は、西鉄が運営する鉄道路線で、東区の貝塚駅から新宮町の西鉄新宮駅までの11.0kmを結んでいる。こちらは全10駅で、平均駅間距離は1.2kmだ。

 これら2つの鉄道路線は貝塚駅で接続しており、同駅ではそれぞれの乗り場(1面2線・島式ホーム)が、駅中央部に設けられた2つの改札口(地下鉄側/西鉄側)を挟んで向かい合う構造。段差なしでの乗り継ぎが可能ではあるものの、2つの改札口を通過するかたちで約20~30m歩いて乗り継ぐ必要がある。また、乗り継ぎの際には、それぞれの運行ダイヤの差異から、待ち時間が発生。西鉄貝塚線から地下鉄箱崎線への乗り継ぎであれば約5分以内で済むが、地下鉄箱崎線から西鉄貝塚線への乗り継ぎでは、時間帯によっては発車まで10分以上待たされる場合もある。

 そのため、2つの鉄道路線の直通運転が実現すれば、乗り継ぎの解消によって福岡市都心部と東部地域間の交通利便性の向上につながることが見込まれる。また、都心部と東部広域拠点(香椎・千早)との連携強化にもつながるとされ、福岡市全体の都市力向上に寄与するだろう。

(左)地下鉄箱崎線 (右)西鉄貝塚線
(左)地下鉄箱崎線 (右)西鉄貝塚線

 さて、そもそも両鉄道路線の直通運転の検討が始まったのは、福岡市で地下鉄が開通する以前の、半世紀以上前まで遡る。福岡市で路面電車(西鉄福岡市内線)を廃止して地下鉄への転換が議論されていた1971年3月の時点で、「都心部から箱崎方面に至る路線(現・地下鉄箱崎線)を新設し、西鉄宮地岳線(現・西鉄貝塚線)との直通運転について検討が必要」(都市交通審議会答申第12号)と言及。当初は地下鉄の開業に合わせるかたちで、西鉄との直通運転が検討されていた。だが、83年3月に地下鉄空港線の姪浜駅が開業した際に、地下鉄と国鉄筑肥線(現・JR筑肥線)の直通運転は実現した一方で、86年11月の地下鉄箱崎線の開業時には、西鉄との直通運転は実現しなかった。

 そして以降も、折に触れては幾度も、直通化の議論が持ち上がりはしてきた。だが、そのたびに駅施設などのハード面の改修に多額の費用が必要という資金面の問題や、費用対効果の問題、さらには国庫補助採択基準を満たせないなどの問題から、いずれの議論も「直通化は困難」との結論に。そうこうするうちに、香椎・千早エリアでの西鉄線路の高架化が完了したほか、利用者減を背景とした新宮~津屋崎間(9.9km)の廃止と、それにともなう「西鉄宮地岳線」から「西鉄貝塚線」への改称など、直通化にとっては逆風となる状況が続き、現在に至っている。

混雑率全国2位の貝塚線
沿線開発で人口も爆増

 それが今回、直通化が改めて本格的に検討されるようになった。その背景として、西鉄貝塚線の混雑化がその一因にあると考えられる。

 国土交通省が25年7月に公表した「都市鉄道の混雑率調査結果(24年度)」では、西鉄貝塚線の朝の通勤通学時間帯(朝7時半~8時半)の混雑率は164%(区間:名島~貝塚)だった。これは、東京都交通局日暮里・舎人ライナーの混雑率177%(区間:赤土小学校前~西日暮里/時間帯:朝7時半~8時半)に次いで全国2位。東京・大阪・名古屋の三大都市圏を含めた大手民鉄やJR、地下鉄·公営、準大手·中小民鉄、モノレール、新交通システムも加えた日本全国の鉄軌道のなかで、西鉄貝塚線の混雑率が全国2位というのは、なかなかのものだといえよう。

 この混雑率の高さを招いている要因は、ひとえに西鉄貝塚線の輸送力の低さだ。西鉄貝塚線では、混雑率の高い朝の通勤通学時間帯であっても、2両編成の列車が1時間に6本運行しているのみ。1時間あたりの輸送力はわずか1,488人だ。これは、同じ西鉄である天神大牟田線の輸送力1万3,592人(区間:平尾~薬院/時間帯:朝8~9時/6.2両編成・18本)と比べて、わずか1割程度しかない。

 西鉄貝塚線の輸送力がこれだけ低い理由は、いくつかある。まず全線が単線であり、各駅で列車交換を行うダイヤが組まれていること。また、約20年前に、ラッシュ時の最短運転間隔が6分30秒から10分に拡大されて減便となったこと。さらに同時期に、かつて運行していた3両編成の列車が廃止され、すべての列車が2両編成となったことが挙げられる。

JRと西鉄が乗り入れる千早駅
JRと西鉄が乗り入れる千早駅

 一方で、西鉄貝塚線の沿線ではここ20年で、香椎や千早、さらにはアイランドシティなどでの大規模な開発が進行。大型マンションをはじめとした新たな住宅が次々と開発・供給されたことで、沿線人口が急増している。西鉄貝塚線の各駅(計10駅)から半径1km内の人口の推移を見ていくと、10駅合計では2000年度の18万9,026人から、25年度には24万5,626人まで増加。単純計算では、この25年間で沿線人口が5万6,600人も増加していることになる。半径1km内の人口というのは、香椎~香椎宮前~千早などの駅間の距離によっては重複しているエリアもあるだろうが、その重複を差し引いても、沿線人口は増加の一途をたどっているといえるだろう。近年も、「MJRザ・ガーデン香椎」(420戸、22年3月竣工)や「MJR千早ミッドスクエア」(532戸、25年2月竣工)などの大規模な分譲マンションが開発されたほか、現在も沿線各所で新たな開発が進行。たとえば、西鉄およびJRの高架沿いに位置する千早5丁目では「コナミスポーツクラブ福岡香椎解体工事」(~26年7月末完了予定)が進行中で、周辺を見る限り、ここでも新たなマンション開発などが行われる可能性もある。また、西鉄香椎花園前駅の駅前では、約12haという広大なかしいかえん跡地の再開発(後述)も控えており、沿線人口はまだまだ増加していく見込みだ。

コナミスポーツクラブ福岡香椎解体工事

 つまり、輸送力が低いにも関わらず、沿線人口が爆増した結果、西鉄貝塚線の混雑率は全国2位という状況になっているわけだ。こうした混雑状況を看過できずに、西鉄貝塚線の輸送力を何とか底上げすべく、福岡市も西鉄も直通化の本格的な検討に入らざるを得ない状況になっていると思われる。

 なお、今年3月14日からは平日朝のラッシュ時間帯(朝7時半~8時半)のダイヤの見直しを実施。香椎花園前駅に2番乗り場を新設して折り返し運行するかたちで、貝塚~香椎花園前間の列車を2本増便(西鉄新宮~香椎花園前間は1本減便)した。だが、このダイヤ改正でも、混雑緩和への効果は焼け石に水といったところだろう。

香椎花園前駅では今年3月から平日朝の折り返し運転を実施
香椎花園前駅では今年3月から平日朝の折り返し運転を実施

車両規格は問題ないが
ホーム長が足りない西鉄

 さて、直通運転の可能性を検討する際に、まず考えなければならないのは、両路線の乗り入れが可能かどうかのハード面での比較だ。

 【表】は、両路線それぞれの施設等の現況をまとめたもの。これを見る限り、両路線とも軌間(左右のレールの間隔)は1,067mmであり、電気方式は直流1,500Vと、直通運転を行ううえで最低限クリアしなければならない車両規格の統一、それ自体はクリアできているように思われる。また、貝塚駅では両路線が改札口を挟んで向かい合う構造となっており、線路を接続すること自体の技術的なハードルは低いと見られる。

表

 ただし、両路線で大きく違うのは、車両編成と駅ホーム長だ。地下鉄箱崎線で運行している車両は6両編成であり、使用されている車両は、1000系と2000系、4000系の3種類で、いずれも全長20m(先頭車は20.5m。4000系の先頭車は約20.4m)。駅ホーム長は131~135mとなっている。一方の西鉄貝塚線で運行している車両は2両編成で、使用されている車両は、600形(全長19m)と7000形(全長19.5m)の2種類。駅ホーム長は45~87mしかない。

 つまり、現在の2両編成仕様となっている西鉄貝塚線の駅ホームでは、地下鉄箱崎線の6両編成の車両を受け入れようとすると、はみ出してしまうことになる。この西鉄側のホーム長が不十分な点が、直通化の実現を幾度となく阻んできたのだ。

(つづく)

【坂田憲治】

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