2026年4月、個人情報保護法の改正案が閣議決定されました。本改正法は、公布の日から2年以内に施行される予定であり、実務対応に残された時間は決して多くありません。本改正は、AI活用などデータ利活用の推進と、個人の権利利益の適切な保護を両立させることを目的としています。今回、実務にとくに影響が大きいと考えられるポイントを解説します。
顔特徴データなど
(特定生体個人情報)に関する新たな規律
マンションの顔認証オートロックや、建設現場における顔認証を用いた入退場管理・安全管理など、顔特徴データの活用が急速に進んでいます。改正法案では、特別の技術や多額の費用を要せず取得でき、本人が取得を容易に認識できない身体の特徴に係る情報を「特定生体個人情報」と称しており、顔特徴データがその典型です。これについては、事業者として次の点に注意が必要です。
○取得・利用する場合、事業者の名称・住所・代表者氏名、利用目的、顔特徴データの元となった身体的特徴の内容、利用停止請求に応じる手続きなどを、あらかじめ本人に通知、または容易に知り得る状態に置く(周知する)ことが新たに義務付けられます。
○利用停止等の請求について、違法行為等の有無を問わず請求可能とするなど、通常の個人データよりも要件が緩和されています。
○オプトアウト制度(本人の拒否があるまで事前の同意なく第三者提供する方式)に基づく第三者提供は、禁止されます。
すでに顔認証技術などを導入している場合、適切な周知方法の検討や、利用停止請求に対応する社内フローの整備が急務となります。
データ処理の委託先に対する
規律と契約の見直し
建設・不動産の実務では、施工管理アプリの運用や物件管理システム、データ入力などを外部のベンダーや管理会社に委託するケースが多数あります。今回の改正では、委託を受けた事業者が、委託業務の遂行に必要な範囲を超えて独自に個人データなどを利用することが、明文で禁止されます。
一方で、データ入力作業のように委託先自らは取り扱いの方法を決定しない(機械的な処理のみを行う)ケースでは、一定の要件を満たすことで委託先の負担が軽減されます。具体的には、取扱方法の全部や漏えい時の速やかな報告措置などについて委託契約で合意している場合、委託先に対する法第4章の各義務規定の適用が原則として免除されます(安全管理義務などを除く)。
今後の実務では、自社の委託形態を整理したうえで、委託先との契約内容を見直すことが重要です。
同意取得の例外と情報連携の円滑化
不動産取引では、仲介業者、管理会社、保証会社など複数の事業者が関与し、顧客データを提供し合う場面があります。現行法では、個人データの第三者への提供などについては、原則として、本人の同意が必要です。改正法案では、本人との間の契約の履行のために必要やむを得ないことが明らかである場合など、取得の状況から見て、本人の意思に反せず権利利益を害しないことが明らかな取り扱いについては、事前の本人同意が不要となる例外が新設されました。たとえば、ホテル予約サイトから宿泊先ホテルへの氏名提供のように、契約履行に不可欠なデータ提供の手間が軽減され、円滑な実務運用が期待されます。
課徴金制度の導入等
個人情報保護法に、初めて課徴金制度が導入されます。不適正な利用や不正取得、違法な第三者提供などの重大な違反行為により得た財産的利益に相当する額の納付が、命じられる可能性があります(大規模事案等の要件あり)。
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内容の一部をご紹介しましたが、法改正を見据え、自社の顔認証システムの運用体制、外部委託契約の見直し、プライバシーポリシーの改訂などを早期に進めることが、企業のコンプライアンス強化とスムーズな事業運営につながります。
<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所
所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/
<プロフィール>
岡本成史(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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