2024年04月24日( 水 )

日本経済転落回避に超緊縮財政修正不可欠

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。本日は、NHKの番組には現在の日本経済の停滞、株価低調の背景にある超緊縮財政政策に視点を置いた問題提起が皆無であることを指摘する2月26日のブログを紹介する。


 2月21日のNHK日曜討論では経済問題がテーマに掲げられた。日銀によるマイナス金利政策の評価を中心に、日本経済の見通し、採られるべき経済政策対応、そして世界経済の見通しなどについて論議が示された。
 放送法は第4条で、「放送番組の編集に当たつては」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」との定めを置いているが、この条文に反する番組編集になった。
 経済政策の対応としては、財政金融政策というマクロの経済政策と各種規制改革等のミクロの構造調整策がある。マクロ経済政策が中短期の時間軸で検討されるものであるのに対し、構造調整策は中長期の時間軸で検討されるものである。

 日銀のマイナス金利導入は中短期を視野に入れたマクロ経済政策であり、今回の日銀の政策対応の是非が論じられたのは当然のことである。
 これに対して、財政政策について、その必要性を主張する見解がまったく示されなかった。
他方で、マクロ経済政策の観点から消費税増税の再先送りを主張する見解が浮上する可能性があるが、これを阻止することが重要であるとの主張だけが提示された。
 財務省は霞が関の最強官庁である。NHKも財務省を敵に回すことはできない。NHKの番組編集が財務省の意向に沿って行われていると推察される番組内容になっていた。

 日本の昨年10-12月期のGDP成長率は前期比年率-1.4%になった。個人消費が落ち込み、日本経済の低迷持続が改めて明らかになった。

 NHK番組は、冒頭でこの点を取り上げた。その際に画面に映し出された成長率推移のグラフがある。直近5四半期のGDP成長率の推移を棒グラフで表示したものである。

 これと同じものを作成してみたのでご覧いただきたい。昨年4-6月期に続いて、10‐12月期も年率-1.4%のマイナス成長になった。

 しかし、グラフを見るとそれほど悲観する必要もない気になってくる。この二つの四半期はマイナス成長になっているが、残りの四半期はすべてプラス成長。
 とりわけ、2014年10‐12月期と2015年1-3月期の成長率は、それぞれ、+2.5%、+4.2%と高い。
 2015年4-6月期と10‐12月期だけが例外的に小幅マイナスの成長率を記録したように見える。
NHKはそのように見えるグラフを作成したのであろう。あるいは、政府から、このグラフを番組で使用するように指示があったのかも知れない。

 そこで、もうひとつのグラフを作ってみた。
 こちらは、2014年4-6月期から7四半期を表示するグラフである。半年間、グラフの期間を延ばしたものだ。これを見ると見え方がまったく違う。

 2014年4-6月期が -7.9%。2014年7-9月期が-2.6%の大幅マイナス成長になっている。2014年度トータルの実質経済成長率はマイナス1.0%だった。2014年度は安倍政権が消費税増税を強行実施した年度である。この消費税大増税で日本経済は撃墜された。
 4-6月期、7-9月期に生産は大きく落ち込み、その反動もあって、10‐12月期、2015年1-3月期はプラス成長になった。この反動によるプラス成長の部分からグラフを作成して視聴者に見せている点が、極めて作為的なのだ。

 私は短期的な経済政策と経済変動の関係を詳細に分析してきている。そのなかで、経済政策の過度の振れが、日本経済の重大な攪乱要因になってきたことを明示してきた。
そして、とくに、行き過ぎた緊縮のブレーキを踏みこむ政策が、浮上しかけている経済を再墜落させることの危険を、常に事前に警告してきた。
 その文脈で言えば、2016年度の安倍政権の財政政策が、強度の逆噴射政策になっている。現在の日本経済の停滞、株価低調の背景には、この超緊縮財政政策がある。この視点の問題提起が皆無であり、ただひたすら、消費税再増税強行実施を推奨する発言者が、選別されて起用されたものであると推察される。

※続き、および文中のグラフについてはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1373号「日本経済転落回避に超緊縮財政修正不可欠」で。


▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』

 

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