2024年05月08日( 水 )

【徹底追及】国会議員秘書と金塊密輸犯を結ぶ、点と線(前)

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 政界の名門一族「鳩山家」に付き従う議員秘書が、国税庁幹部に圧力をかけたとされる疑惑。じつはこの疑惑には、まだ続きがあった。大手メディアでは報道されることのなかった事実について取材を進めると、東京―福島―北海道を結ぶ、闇の勢力との関係をうかがわせる不可思議な「点と線」が明らかになった。

「アポを取ってくれ!」

 5月某日、東京都渋谷区のJR恵比寿駅からほど近い場所。明治通りから少し入った、閑静な住宅街に立つビルの1室のドアを開けると、広い事務所の奥のほうで4、5人の男たちがテーブルを囲んでいた。対応に出た男に訪問の趣旨を告げると、テーブルに向かう男の1人が血相を変えて叫んだ。「取材するならアポをとってくれよ!」。

 男の名は小澤洋介。今年1月まで自民党所属の衆議院議員、鳩山二郎氏(福岡6区選出)の秘書を務めていた人物だ。小澤氏は二郎氏の父である故・邦夫氏の代から鳩山家を支えてきた秘書で、マスコミ関係者の間では「鳩山の金庫番」として知られた存在だった。

 小澤氏の秘書人生が「だった」と過去形になったのは最近のこと。今年1月9日、小澤氏と二郎代議士をめぐる疑惑を伝える記事が読売新聞の1面トップに掲載されたことがきっかけだった。
 読売新聞が伝えたのは、小澤氏が当時顧問を務めていた宝石販売会社の業務に関連する消費税還付について、2017年4月に国税庁幹部を議員会館に呼び出して説明を求めたというもの。

 呼び出した部屋には鳩山議員も同席しており、議員秘書という立場を利用した圧力と受け止められる可能性が大いにあった。そのため、報道後は野党だけでなく自民党内からも批判が上がり、結果的に小澤氏は秘書を辞職している。

宝石は本当に存在したのか?

 小澤氏が顧問を務めていたのは、登記上は都内台東区に本社を置く「国際東日ジュエリー」(以下、東日)。東日から宝石を仕入れた免税店運営会社4社が、仕入れの際に発生した消費税約2億2,000万円の還付を申告したものの、東京国税局はこの取引を架空取引とみて還付を保留していた。小沢氏は国税庁幹部に対して「(消費税を還付しないと)事業が成り立たない」と告げ、早期の還付を求めたという。

 国税庁が架空取引と断定したのは、15年4月から16年12月にかけて、4つの免税店運営会社が東日から宝石を仕入れ、外国人に販売したとする取引だ。免税店運営会社は東日から宝石を仕入れた際に消費税を支払っているが、外国人に販売する際は消費税がかからないため、いったん収めた消費税を戻すように還付申請していた。

 しかし、データ・マックスの取材によると国税庁は、免税店運営会社が東日から宝石を仕入れた事実がないとみており、さらには宝石仕入れの「上流」、すなわち東日が宝石卸売会社から宝石を購入した事実も、さらにその宝石卸売会社が宝石を仕入れた事実もないと判断している。つまり、存在しない宝石をめぐって売買が繰り返され、免税店運営会社が東日に納めたとする消費税を還付させようとしたことになる。還付金詐欺だ。

 国税庁の見立て通りだとすると、上流の宝石卸売会社から東日を経て下流の免税店運営会社まで、すべて「グル」だとするほうが自然だ。そこでこの一連の宝石の流れについて取材を進めたところ、すぐに意外な事実が判明した。東日が宝石を仕入れたとする宝石卸売会社「AQUA」(新宿区)の代表者「X」は2013年、福岡空港における金塊密輸事件で逮捕されていた人物だったのだ。

(つづく)
【特別取材班】

 
(中)

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