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2016年05月10日 09:03

「コンビ二の生みの親」鈴木敏文氏の光と影(後)~加盟店を大切に扱えと諫言したローソンの新浪剛史氏にしっぺ返し

2015年ブラック企業大賞

 過重労働やパワハラなど、働く者の権利を侵害する企業に括弧付きの「表彰」をする「ブラック企業大賞」の第4回(2015年)の授賞式が11月29日、東京都内の会場で開催され、鈴木敏文氏が率いる(株)セブン-イレブン・ジャパンが「大賞」に選ばれた。
 受賞の理由は、こうだ。

 〈2013年8月、同社のフランチャイズに加盟する店主4人が、販売期限が近い弁当などを値下げして売る「見切り販売」の権利を同社から妨害されたとして損害賠償を請求していた裁判で、東京高裁は妨害の事実を認め、セブン-イレブン側に計1,140万円の支払いを命令、14年10月に最高裁が本部、加盟店双方の上告を棄却したことで判決が確定した。セブン本部による見切り販売妨害については、09年に公正取引委員会が、独占禁止法に禁じる「優越的地位の濫用」に当たると認定し排除命令を出した〉

 セブン-イレブンが加盟店から訴えられた訴訟は、山ほどある。「大賞」の決め手となったのは、本部に一方的に有利なフランチャイズ契約をタテに、加盟店を長年搾取し続けた構造の根深さにある。だが、ワタミ(株)のときは「ブラック企業」の大合唱で袋叩きしたマスコミだったが、セブン-イレブンの「大賞」受賞については黙殺した。セブングループは、最大の広告主であるからだ。

加盟店の繁栄を経営の根幹に置いたローソン

 鈴木敏文氏が率いるセブン-イレブン・ジャパンの加盟店いじめに、(株)ローソン元会長の新浪剛史氏は「加盟店を大切にしろ」と異議を申した。

 2002年5月、ローソンの株主総会が大阪市内で開かれた。ダイエー出身の社長が会長に退き、三菱商事出身の新浪氏が新社長に選任された株主総会である。新浪氏は、この株主総会が閉会した後に衝撃的な報せを受ける。
 ローソンの加盟店オーナーが、株主総会の会場で、抗議のために自ら命を絶ったのだ。会場となったビルの階段で、首を吊った。ローソン旧経営陣に対する抗議だった。
 この悲痛な出来事は、ローソンの社内でもほとんど知られることなく、今に至っている。

 財部誠一氏は『ローソンの告白』(PHP研究所刊)で、その事実を初めて、新浪氏自身に語らせた。当初、「それだけは話したくない」と頑なだったが、「新浪さんが語らなければ、ローソンの歴史から、その真実は永遠に消えてしまいます」と説得したという。財部氏はこう書く。

 〈新社長に選任された新浪が果すべき最初の役割は、遺族の元を訪ねることだった。新浪は、亡くなられたオーナーの妻子を前にひたすら土下座したという。「亡くなられた加盟店のオーナーの抗議内容を知って、こんなひどい会社はつぶれて当然だ。いや、つぶすべきだとも思った。一方で、多くの加盟店のオーナーの人生がローソンにかかっていることへの責任も感じた」。そんな思いで新浪はひたすら頭を下げた。
 「ローソンは加盟店に対してほんとうにひどいことをやっていた。亡くなられたオーナーの方は、ひどい扱いを受けていた。調査しましたが、一方的にお詫びするしかない内容でした。(中略)ダイエー救済が至上命令の役員たちがローソンにはいた。お客さまなど眼中にない。加盟店も見ていないし社員も見てやしない。その矛盾が爆発したということです」
 亡くなったオーナーの遺族が、許しを請う新浪に涙ながらにこんな言葉を伝えたという。
 「二度と加盟店を不幸にしないでほしい。頑張ってください」
 これまでの商社勤めでは経験したことのない鮮烈な経験だった。新浪氏は決意した。逃げてはダメだ。すべて自分で変える〉

 株主総会で加盟店オーナーが抗議の自殺をした衝撃が、新浪剛史氏の経営者としての原点となった。加盟店の繁栄を、ローソン経営の根幹に据えた。

 新浪氏が誇るローソンに残した最大の功績は、ローソンを支える加盟店オーナーの絶大な信頼を取り戻したことだろう。新浪氏にとって最後となった2014年5月の株主総会では、出席していた多くの加盟店のオーナーから、割れんばかりの「新浪コール」が起こり、急遽、新浪氏が壇上にのぼる一幕があった。加盟店を経営の最優先課題に考えてきた新浪氏には、加盟店オーナーから寄せられた信頼は、何よりの勲章だった。

セブンから受けたサントリー切り

7eleven_2 新浪氏は2014年10月、サントリーホールディングス(株)の社長に就任した。すると、「コンビニの生みの親」である鈴木敏文氏から、手ひどいしっぺ返しを食った。セブングループはサントリーの上得意先である。

 サントリーHD社長に就任した新浪氏が就任挨拶に出向いたところ、セブン&アイの鈴木会長は面会を拒否した。新浪氏はローソンの社長時代に、鈴木氏を繰り返し批判してきた。鈴木氏は、自分に楯突いた新浪氏が大嫌いなのだ。仕方なく、サントリーHDの佐治信忠会長が、新浪氏の名代で挨拶に出向いた。ドンの怒りを鎮めるために、サントリー製品の納入を減らすのではないかと言われていた。

 それが、現実となった。セブン&アイHDは、日本コカ・コーラ(株)と共同企画した缶コーヒーを15年4月21日から発売した。新製品は、セブン&アイのPB(プライベートブランド)「セブンプレミアム」のロゴと、コカ・コーラの「ジョージア」のロゴが併記されたダブルネーム商品だ。
缶コーヒーの専用商品では、サントリー食品インターナショナル(株)と組み、14年1月から「ボス」ブランドの共同企画商品を展開してきた。ところが、わずか1年余りで、サントリーからコカ・コーラに鞍替えした。業界関係者が一様に指摘するのは、ドン鈴木敏文氏のサントリーHD社長の新浪剛史氏に対する“遺恨”である。

 「批判は許さない」――コンビニの帝王の御威光であった。鈴木氏が失脚した今、セブングループとサントリーグループの間で、関係修復の動きがあるかもしれない。

(了)

 
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