2024年04月18日( 木 )

「サンリオ」は同族経営を死守~創業者の孫、辻朋邦氏が取締役デビュー(後)

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ライセンスビジネスの立役者、鳩山玲人氏は退任

 「ハローキティ」のキャラクターが人気の(株)サンリオの6月23日に開催した株主総会で、注目される人事があった。55年間、社長に君臨する創業者の辻信太郎氏(88)は続投。次期社長の有力候補だった鳩山玲人(れひと、42)常務が退任。信太郎氏の孫、辻朋邦(ともくに、27)執行役員が取締役に昇格する。信太郎氏は功労者の鳩山氏を切り、孫の朋邦氏を後継者に据えた。御曹司が育つまでには時間がかかる。老創業者の決断は吉か、それとも凶か。


V字回復をもたらしたライセンスビジネスへの転換

office2 辻邦彦氏と鳩山玲人氏は、北米で物品販売からハローキティのライセンス収入にビジネスモデルを転換した。ライセンスビジネスとは、ハローキティの商標使用権を他社に供与してロイヤリティ(使用料)を得る事業だ。物販に比べて売上は減るが利益率は高い。

他社にキャラクター利用を認める場合、イメージを損なわないように厳しく制限するのが普通。サンリオはキティにロックバンドの格好をさせるのを認めるなど使いやすくし、海外を中心に取引先を拡大。
この転換は大成功。4期連続の営業増益を快走し、14年3月期の営業利益は210億円。鳩山氏が米国法人に入社する直前の07年3月期の営業利益41億円の5倍だ。ロイヤリティ売上は349億円と全社売上の45%を占めた。サンリオはライセンスビジネスで稼ぐ企業に大変身した。
その最中に邦彦氏が死去。鳩山氏は最大の後ろ盾を失った。ライセンスビジネスの立役者である鳩山氏に逆風が吹き付けることになる。

グッズ販売に重点を置く

 「販売を重視し、ライセンスでない方に重点を置く」。14年5月、辻信太郎社長が機関投資家の決算説明会で行なった発言に、市場関係者は首を傾げた。ドル箱に育ったライセンスビジネスから、もともとのグッズ販売会社に戻すというものだったからだ。

 その頃から、信太郎氏と鳩山氏の確執が外部にも漏れてくるようになった。鳩山氏は、白いワイシャツ、スーツ姿が嫌いで、ジーンズとTシャツで押し通す異端児だ。創業者の信太郎氏と肌が合うわけがない。鳩山氏は15年5月に、新規企画として映画事業を担当した。ハローキティなどサンリオキャラクターの映画やアニメを手掛けるというもの。経営中枢から外された格好だ。

 信太郎社長の方針で物販販売が強化され、ライセンスビジネスは意気が上がらない。その結果、16年3月期のロイヤリティ売上は、295億円と14年の349億円から15%減った。
 株主総会の季節になると、信太郎社長の後任が話題になるが、今年も信太郎氏が続投。V字回復の功労者である鳩山氏を切ったことが最大の首脳人事だった。鳩山氏は株式上場が決まったLINEの社外取締役に移った。

 鳩山氏が去るのと入れ替わりに、信太郎氏は孫の朋邦氏を取締役に引き上げた。朋邦氏は27歳と若い。朋邦氏が育つまで、邦彦氏の妻の辻友子取締役(47)が社長に就くという見方が出ている。しかし、友子氏も朋邦氏も経営者としては力不足。創業者の辻信太郎氏は高齢だ。ポスト信太郎氏の時代に、サンリオは同族経営の岐路に立つことになろう。

(了)
【森村 和男】

 
(前)

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