黒幕は誰だ!?大戸屋ホールディングスのお家騒動は長期化(前)
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定食屋「大戸屋ごはん処」をチェーン展開する(株)大戸屋ホールディングス(HD)は6月23日、東京・西新宿のハイアットリージェンシー東京で定時株主総会を開き、会社側が提案した取締役を大幅に刷新する人事案が過半数の賛成を得て可決した。5月に大株主である創業家が、会社側が諮る人事案に「納得できない」と反対したことで、創業家と会社側の対立が表面化した。会社側の人事案が承認されたが、これにて一件落着とはいきそうもない。薄氷を踏むような辛勝だったからだ。
窪田健一社長の賛成率は62.06%
株主総会では、会社側からは第1号議案として取締役11名選任の件、第2号議案として監査役の2名選任の件が議案として提示された。会社側の人事案が通ったが、賛成の割合は衝撃的な数字だった。
窪田健一社長(45)の賛成率は62.66%。他の取締役、監査役の賛成率も全員62%台だ。
人事に反対している創業家の持株比率は18.78%。2割程度の反対は織り込んでいたが、4割近い反対は想定外だろう。窪田社長は、他の株主からもノーを突き付けられた。取締役を総入れ替えする人事案が裏目に出た。2015年7月に、創業者の三森久実(みつもり・ひさみ)氏が57歳の若さで急逝したことで、お家騒動が勃発した。社長の窪田健一氏は久実氏の甥、常務の三森智仁(ともひさ)氏(27)は久実氏の長男。創業一族が分裂して、“骨肉の争い”を繰り広げることになる。
筆頭株主だった久実氏の株式は、妻の三枝子氏(62)が13.15%、長男の智仁氏が5.63%を3月に相続した。大株主となった三枝子=智仁親子は、窪田社長の新人事案に反対の狼煙を上げた。久実氏が築き上げた体制を解体するものと見なしたからである。人事と事業の両面で“脱久実”を進める
創業者の久実氏が後継者としたのは、長男の智仁氏だ。甥の窪田社長は、若い智仁氏が育つまでの“つなぎ”である。15年6月、入社して日が浅い智仁氏を常務取締役に抜擢した。だが、久実氏が亡くなると、形勢が逆転した。窪田社長が主導権を握る。
15年11月、久実氏が亡き後ナンバー1となった窪田社長は、粛清人事を断行する。ナンバー2の濱田寛明専務(51)とナンバー3の智仁常務をヒラ取締役に降格した。
株主総会で、降格問題を問われた窪田社長は「降格というのは事実ではない。意思決定のスピードを上げるために専務と常務などの肩書きを廃止した」と述べたが、およそ説得力のある説明ではなかった。降格人事に異議を唱えるかのように、智仁氏は今年2月に取締役を辞任して会社を去った。この間、事業上でも“脱久実”を進めた。中国で直営店事業を展開する上海の子会社を清算。また、野菜の内製化を狙った、山梨県の植物工場の撤退を決めた。どちらも、久実氏が力を入れてきた事業だ。植物工場は、久実氏が味を追求するためにつくったものだが、「儲からないから」とバッサリ切り捨てた。
“脱久実”の総仕上げが、取締役人事だ。今年の株主総会で、2人の社内取締役と3人の社外取締役が退いた。社内取締役では、専務からヒラ取に降格された濱田寛明・海外事業本部アジア地域担当と高田智典・海外事業本部米国事業部長(45)が退任した。海外事業は久実氏の本拠地であり、彼らは久実氏の側近だった。
15年6月の株主総会時点では、久実会長、窪田社長、濱田専務、智仁常務、高田取締役が役員の序列。1年後に残ったのは窪田社長のみ。窪田氏が、名実ともにナンバー1になった。
(つづく)
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