2024年05月05日( 日 )

『共生社会』の実現へ~現場主義で本来の民主主義を取り戻す(前)

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民進党・県政クラブ県議団 福岡県議会議員(古賀市) 田辺 一城 氏

 今年7月の参院選・福岡選挙区、民進党公認候補・古賀之士氏の得票率で2番手に約8ポイントの差がついた古賀市。同市選出の県議会議員である田辺一城氏は、党勢拡大を念頭に選挙応援に取り組み、52の市区郡部別で4番目のリードという結果につなげた。その奮闘に込められた想いとは―。

社会課題を提起し解決する主体へ

福岡県議会議員(古賀市)田辺 一城 氏<

福岡県議会議員(古賀市)
田辺 一城 氏

 ――田辺県議は毎日新聞で記者を務められていましたが、転身して政治家を志した理由についてお聞かせください。

 田辺一城県議(以下、田辺) メディアは、人が色々な境遇のもとに生きている生活の現場で社会課題を見つけて問題提起を行います。ただし、問題提起まではできますが、具体的に社会を変える主体にはなれません。その主体とは、政治・行政です。国レベルでは法律、地方自治体では条例を作り、予算を編成して事業(政策)を行うことで課題を解決します。そこに関与できるのが政治家です。私は、社会課題を具体的に解決するためには、政策形成の主体にならなければならないと考え、政治家に転身しました。

 ――記者の経験をかなり生かされているように感じます。

 田辺 私の信条は、小川洋福岡県知事も掲げている『現場主義』です。それは1人ひとりに会い、その声を聞くことです。しかし、愚直に地域を回っていますが、新聞記者時代より課題を発見できているかと言うと、なかなか難しい部分があります。時間やマンパワーの限界があり、政治家の仕事として課題発見が大事とはいえ、選択しながらやっていくしかありません。幅広く社会課題を発掘していくうえで、メディアの役割は極めて重要であり、そこからヒントを得て、私たちが政策形成していくこともあります。

 ――政策形成のほうに身を置きたいという思いがあったということですね。

 田辺 そうですね。私は記者時代、2007年2月に大阪府吹田市で起きたスキーツアーバス事故を取材し、記事を書きました。事故の背景には小泉改革以降の規制緩和の流れがあり、零細業者の参入から、過当競争が起き、人件費をはじめとするコストが削減され、事故が起きるという構図を指摘し、安値信仰を見直していくべきではないかと提起しました。しかし、社会は変わらず、今年1月15日に長野県軽井沢町で同様の事故が繰り返されました。私は記事で、事後チェックだけではなく、参入要件などで事前規制を考え直していく必要があると書きましたが、記者としてできたのは問題提起まででした。
 現在は、県議として現場で課題を見つけながら政策に直接関与することができます。もちろん、予算編成の主体者は知事であり、実行するのは行政職員ですが、知事や行政職員が気づいていないことはたくさんあります。第一にきちんと課題を提示すること、第二に提案を行い、改善のきっかけを与えること、この2つが県議としての直接関与です。

具体的な提案で政策の実効性を強化

 ――田辺県議が政策形成に関与した事例として、福岡県の子どもの貧困対策についてお話しください。
 田辺 順を追って話しますが、昨年度、福岡県が『子どもの貧困対策推進計画』の策定作業を進めていました。子どもの貧困対策法は、民主党政権時代から厚労省が取り組んでいましたが、政権交代を経て、現政権になって法律ができました。法に基づいて国が『子どもの貧困対策大綱』を作り、各都道府県は、その大綱に基づいて『子ども貧困対策推進計画』を作るようになっていました。
 実は、国は大綱で指標を示すものの、数値目標を設定していませんでした。また、計画とは、何かを達成するためにあるわけですから、対象が「見える化」されていないとおかしいわけです。子どもの貧困対策を必要としている子どもが、どういう子どもで、どのくらいいるのかということを明らかにしておかないと、何のための計画かわかりません。
 そこで私は、昨年9月の定例会の一般質問で、⑴県内の経済的困窮状態にある子どもの数を試算し、政策展開の対象を明らかにすべき、⑵計画に実効性を持たせるため、数値目標を盛り込むべきと具体的に提案しました。

 ――もっともな指摘だと思いますが、県側の対応はどうでしたか。

 田辺 当初、県は、厚労省が試算した国全体の子どもの貧困率16.3%で試算しようとしていました。私の解釈では、計画を都道府県ごとに作る主旨は、それぞれの実情に合わせた対策をとるということです。福岡県が必ず16.3%になるはずがありません。
 私は、担当課に奈良県が独自に作った試算手法を紹介していました。その手法で奈良県の子どもの貧困率は、国とは異なり、児童人口の約10%となっていました。この試算手法で出した福岡県の経済的困窮状態にある子どもは約17万5,000人、割合は約19.8%でした。おそらく、知事の政治判断だと思いますが、本会議場で福祉労働部長がこの数字を明らかにしたのです。
 小川洋知事は答弁で、全国数値との乖離が大きい「生活保護世帯の高等学校等進学率」などの指標について数値目標を設定する方針を初めて明らかにしたうえで、「計画策定後、これらの指標について毎年検証を行い、必要に応じ指標や目標の設定を行い、子どもの貧困の解消に向け全庁を挙げて取り組んでまいります」と述べられました。そして、この計画に基づき、2016年度の予算編成が行われ、101事業790億円の子どもの貧困対策事業が実施されます。

(つづく)

【聞き手・文:山下 康太】

<プロフィール>

田辺 一城 氏田辺 一城(たなべ・かずき)

1980年5月16日生まれ。古賀中学校、福岡県立福岡高校、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、2003年、毎日新聞社入社。原発事故や災害弱者、日本人拉致問題などを取材。06年、大阪本社社会部に配属。11年4月、福岡県議会議員選挙に初当選し、現在2期目。広域行政推進対策調査特別委員会副委員長、農林水産委員会委員、議会運営委員会委員などのほかは、衆議院の福岡4区(宗像市・福津市・古賀市・糟屋郡)で民進党幹事長を務める。

 
(後)

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