2024年05月03日( 金 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~優勝しました!!

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 2016年9月10日、セントラル・リーグのペナントレースを25年ぶりに広島東洋カープが球団史上7度目の優勝で飾り、ペナントにピリオドを打った。残念ながら、地元での試合で優勝を決めることはできなかったが、1975年の球団創設初の優勝時と同じく、巨人のホームグラウンド・東京ドームで見事に決めた優勝であった。

 広島の街は歓喜の渦に包まれ、叫ぶ人、踊る人、お酒を飲む人、じっと感慨に浸る人――などなど、まだまだ多くの喜びの表現を見せている。人というのは、喜びを表現するにもこんなにも多くの表情を見せるのか。嬉しくなる。

carp いかに25年という時間が長かったのかを考えるのだが、今回の優勝を考えていくと、この25年間で、広島の新たな本拠地・マツダスタジアムができたことが思い出される。
 新しい球場が計画されて「本当にできるのかな?」という声が上がり、そのうち候補地が決まり、「あそこで大丈夫か?」「駅までの距離が長くないか?」「タクシーが行かないのではないか?」――いろいろな声が聞こえてきた球場計画。でも、市長さんをはじめ皆さんの努力で1歩、1歩球場建設が進み、何度もアメリカに視察に行き、良いところをいただき、何よりも内野に芝生が敷きしめてあり、「野球場」と言える素晴らしい立派な球場が完成した。
 レフト側の入り口から入り、球場を1周できるという構造も、日本では初めての試みではないだろうか。普通は内野席、外野席と仕切りがあり、行き来ができない構造になっているのだが、この広島の球場はグルリと外野から内野まで1周できる構造で、自分の席に行くときに改めてチケット見せて席に行くという構造で、本塁の方に行くとグッズ、食料、飲み物、いろいろな売店があり、多くの人が満足する品がそろっている。

 その素晴らしい球場で生まれ、育った選手たちが、自分の個性を存分に発揮して、時間はかかったが持ち味をつくり、試合に慣れていき、「もう少し」「もう少し」という悔しい思いを経験して迎えた2016年。とうとう「優勝」をつかんで、ファンの期待に応えることができた。

 1991年に最後の優勝をしてから長い低迷期に入り、球団を挙げて何とか優勝をしたいという気持ちは十分に感じていたのだが、なかなか方向が決まらず、空回りをしてきた時間。外から見ていてじれったいほどの時間が流れてきたが、ようやく多くのファンが待っていた優勝を経験できる日が来たのだ。

 今回の優勝は、この新しい球場の歴史を物語る1ページとして、多くの広島のファンの脳裏に残ることだろう。とくに小学生や中学生の子どもさんたちには、これから何度もこの素晴らしい優勝を見る機会が来ると思うが、1回目というのは、特別なものとして記憶されることと思う。

 そして、選手たちにも大きな「欲」が生まれることだろう。野球というゲームはチームで行うというもので、とすれば目標は?――「優勝」これしかないのです。全員が喜べることができるのは優勝だけです。
 みんなで長いシーズンを1つの目標に向かって、チームの調子の良いときも、悪いときも、それを準備するのが春のキャンプだろう。監督が「今年はこのような戦い方をして、みんなで優勝を目指して頑張ろう」。これが始まりです。
 3月のオープン戦でチームの戦い方を試して、上手く行ったときには大いに喜び、失敗したときにはみんなでグランドで練習をやり直して4月を迎え、そして監督を先頭に優勝を目指して、どんなときも諦めないで勝利に邁進。1試合、1試合頑張ることが優勝への道だということを、今年の優勝で覚えたことではないだろうか?
 「爆発的な喜び」「笑顔に包まれる」――など、優勝時にしか経験できない喜びをしっかりと感じてほしい。

 そしてフロントの皆さん、おめでとうございます。皆さんが一生懸命に応援したチームが、セ・リーグで優勝しました。皆さんの頑張りが、優勝に大きな力を与えたと思います。多くのファンの方々を球場に招き入れる努力をされたことが、選手たちが頑張るエネルギーになったことは間違いありません。そしてその選手たちが頑張りました。選手とともに、大いにこの優勝を喜んでください。そして、もっともっと強いチームになるために、頑張ってください。

 新球場に、いつ歴史を刻む1ページが記録できるか、待っていました。今年、その素晴らしい1ページが記録されました。心からお祝いを申し上げます。
 そして全員でさらなる挑戦を続けて、「日本一」を目指してください。

2016年9月10日
衣笠 祥雄

 

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