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2016年10月11日 11:28

小倉・魚町銀天街から始まるリノベーション活動(5) 地域づくりにマーケティング発想を! 

20161011_001 さあ、いよいよリノベーション活動の具体的展開に入ります。ここから先は、嶋田洋平氏(らいおん建築事務所)の著書『ほしい暮らしは自分でつくる ぼくらのリノベーションまちづくり』(=写真、ゴーストライター名も本に明示されています。佐村河内某のゴーストライター騒動と違って、明快な態度に大変好感が持てます)と、2010年当時の私の体験、それに6月末に行った中屋興産社長でタウンマネジメント魚町代表取締役梯輝元氏への取材によります。

 嶋田氏は、1976年八幡西区黒崎生まれで、現在は東京で建築事務所を営んでいる建築家です。らいおん建築事務所という面白い名前は、嶋田氏の祖父が八幡西区紅梅町で営んでいた飲食店「らいおん食堂」によるそうです。西鉄ライオンズ黄金期の食堂の名前です。当時、私も前を通りかかっていたかも。

 そんな嶋田氏が関心を抱いていたのが、鹿児島市のマルヤガーデンズのリノベーション活動でした。鹿児島市の中心市街地天文館にある丸屋ビルの核テナントの三越が撤退した後のビルのリノベーション活動に、嶋田氏が前職時代に関わるのです。このマルヤガーデンズのリノベーションについては、私も興味深く読ませていただいたコミュニティデザイナーの山崎亮氏の著書『コミュニティデザインの時代』に詳しいのですが、中心部に古くからあるビルをコミュニティの拠点として整備し、商業ビルとして見事に再生するというものです。当時話題になったものです。

 この再生ビルが10年4月に竣工するのですが、その際に「第2回リノベーションシンポジウム@鹿児島」が開催されます。このときに嶋田氏は、前述したアフタヌーンソサエティ代表の清水義次氏や九州工業大学の徳田光弘氏と出会い、リノベーション活動に触発されるのです。
 そんなときに、嶋田氏は彼の父親嶋田 秀範氏からある相談を受けます。

 嶋田氏は、先の中屋興産ビルの地下で、ゲームセンターの経営を手伝っていたそうです。その秀範氏に中屋興産の先代社長(梯輝元氏の父上)から、「中屋興産の核テナントである婦人服専門チェーン店が撤退する。ついては後継テナントを探してほしい」――との依頼があるのです。秀範氏は、東京まで出かけ、大手服飾雑貨チェーンなどへのテナント誘致活動を行いますが、ことごとく断られます。現地を見に来ることさえしない、と。

 嶋田氏は、同書のなかでこう書いています。「それまでテナントビル再生のための常識だった手段は、もはやまったく通用しなくなったのだ。それはかつての成功パターンが“旧来の手法”になってしまったことを意味した」。ここに、嶋田氏がテナントビル再生のために、新しい仕組みを編み出す必要性を強く感じたポイントがあります。

 結局、09年12月にその核テナントが退去します。さあ、大変です。それでなくても中屋ビルの隣は例のバブル期に盛名を馳せた丸源ビルで、ここもすでに巨大な空き店舗と化しているのです。2件並んで空き店舗という状況は絶対に避けねばなりません。魚町銀天街にとって、致命的なイメージダウンになります。そこで、地下にあったゲームセンターを1階に持って来て、かろうじて空き店舗状態は免れます。
 そうこうするうちに、中屋興産の先代社長が10年8月に亡くなります。前後関係は明らかではありませんが、嶋田氏はこの中屋ビルを若い起業家やクリエーターの拠点にするという「コクラ・メルカート構想」という企画を温めていたそうです。先代社長が亡くなって、「この企画はお蔵入りだな」と思っていた嶋田氏ですが、後継の梯輝元社長からこの企画に対して、「面白そうですね。やりましょう」との言葉をもらうのです。

 ちょうどこの頃、これも先に触れた「小倉家守構想検討委員会」が同時進行しており、梯氏はこの委員でもあったわけです。梯氏は、嶋田氏にこの家守構想の話をするとともに、その委員名簿を見せます。そこには、何と先の鹿児島丸屋ガーデンズのプロジェクトで一緒であった、清水義次氏や徳田光弘氏の名前があったのです。

 ここから嶋田氏の発想は、鹿児島で触発されたことと結びつきます。空きビルが、クリエーターや地域活動を行う人たちの拠点になる、そうすると、ここがコミュニティの拠点となり、従来の商業施設、商業ビルにはない新しいビルのあり方が築けるのではないか、と。これは、私の推測ですが、おそらくそんなひらめきがあったに違いありません。
 「若いクリエーターたちの拠点をつくる。そのためにはまず、入居してくれるクリエーターを見つけなければいけない。それを“ぼくが”やらなければならないということに、この時初めて気がついた」。
 ここから、嶋田氏の獅子奮迅の活躍が始まります。

(つづく)

<プロフィール>
100609_yoshidaM&R 地域マーケティング研究所
代表:吉田 潔
和歌山大学国際観光学研究センター客員研究員、西日本工業大学客員教授、福岡大学商学部非常勤講師

 
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