2024年05月19日( 日 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~来年こそ・阪神

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 昨年オフに阪神ファンは、「来年のオフこそは“優勝”の喜びに包まれた素晴らしいオフになるだろう」という大きな期待感に包まれて、今シーズンの開幕を待ったことだろう。だが結果として、その期待は裏切られた。
 1軍監督に金本監督、2軍監督に掛布監督と、阪神ファンなら誰もが待ちに待った監督が2人も同時に誕生したのだから、たまらなかったはずである。しかし現実はそんなに甘くなく、「野球をするのは選手です」ということを教えてくれたシーズンになってしまった。

 キャンプのときのプランでは、「若手をどこまで伸ばすか?」「若手をどこまで使うか?」――ここがポイントと見ていたキャンプ、オープン戦までは我慢ができたが、さすがに公式戦では我慢ができず、メンバーに苦しんだ1年だっただろう。

 そんななか、新人王を獲得した高山選手が生き残った印象が強い開幕してから3月、4月、5月の出足ではまずまずの打撃を見せたが、さすがに6月に入ると、身体に疲れもありペースダウン。少し休養をとり7月に復活し、シーズン終了時には134試合に出場、136安打を記録と、合格点をあげていい成績を残したと思う。野手では北條選手とともに楽しみな選手として映った。

tigers チームとしてはゴメス選手が本来の姿に戻らず、西岡選手の怪我もあり、鳥谷選手が悩みのなかに入り、福留選手が頑張ったのだが、チームの成績に残らなかった。
 もう1人、異色な選手を挙げるとすれば、捕手を務めた原口選手だが、育成から1軍の正捕手に昇格したことは素晴らしいと認めるが、1軍の投手をどこまで理解してリードしたのだろうか。
 捕手の仕事は、「投手の良いところをいかに生かすか?」――ここにあるだけに、投手の長所や短所をどこまで理解しているかが重要なところである。その肝心なところをどこまで知っていたのだろうか。リードを見ていると、ときどき気になるところであった。「捕手の仕事は投手を生かす」ことを考えての起用だったのだろうか?
 この点から見ても、打線が安定して組める状況でなかったことがわかる。それだけに、苦しいシーズンだったと思う。
 来シーズンは毎試合安定したメンバーで、「“阪神の野球”はこうだ!!」という攻撃ができる打線の並びを見せてほしいものである。

 投手陣で頑張ったのが、メッセンジャー投手だろう。シーズン初めの岩貞投手も素晴らしかった。インサイドに素晴らしいストレートを投げ込んで目をみはるものがあったが、中盤から投げられなくなったのが残念である。
 能見投手も良い日と悪い日がハッキリとして、今1つ安定感に欠ける1年ではなかっただろうか?悪い日は悪いなりにごまかす投球を見せてほしいだけのキャリアを持っているだけに、残念に感じる。コンディションの整った日の投球は素晴らしいだけに、実にもったいない。

 まだごまかす投球を求めることは難しいのが藤浪投手で、1年間悩みが絶えなかったのではないだろうか?勝ち星も7勝と本人も納得できない勝ち星で、投球内容も納得できないことが多かっただろう。
 決して日本ハムの大谷投手を意識しているとは思わないが、気になる投手であることは仕方がない、大きな話題を投げかける大谷投手にイラつくこともあったかもわからないが、今年は自分の投球に徹することができなかったのではないだろうか。
 体の大きな投手だけに、その大きな体を使い切ることは大変だが、投球の基本は全身を使ってアウトコースの低めに投げる技術をいかにマスターするかだろう。投手の金言に、「困ったときは相手の一番遠いところに投げ込め」という言葉がある。簡単にカウントが稼げるからである。これを何としてもマスターしてほしい。このオフにしっかりと走り込んで体を十分に使える状態にして、腕だけで投げるのではなく、体全体で外の遠いところに投げられる技術を勉強して来季を迎えてほしい。そうすれば、2ケタの勝ち星は、黙っていても付いてくるだろう。

 若手の先発投手の育成も、野手同様に頑張らなければいけない。中継ぎ投手も安藤、福原の両投手に頼りすぎていて、次が育ってない。他チームから取ってくるのではなく、自前で育てるという方法をとらなければならない時期を迎えていると思う。

 いずれにしても、阪神ファンは誰しもが「優勝」を願っているということを考えると、143試合を勝ち抜く戦力、精神的な強さ、体力が要求される。
 監督自身が選手時代に心身ともに鍛えたように、選手にも鍛えることを遠慮なく要求して、ファンの期待に応えられる選手に仕上げる必要があるだろう。

2016年12月15日
衣笠 祥雄

 

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