2024年07月19日( 金 )

1,000億円賠償してもビクともしない、大成建設の盤石さ

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 日本が誇るスーパーゼネコンの一角、大成建設(株)のとてつもない盤石さが、改めて示された――。

 大成建設をめぐっては6日、同社代表取締役会長の山内隆司氏が(一社)日本経済団体連合会(以下、経団連)の副会長候補者に内定したことが発表された。経団連の副会長としては、建設業界から初の起用。今後、2020年の東京五輪開催をはじめとした国際的なイベントが控えるなか、建設業界の経験と実績が非常に重要との考えから、白羽の矢が立った。
 また山内氏は一部報道で、建設会社の業界団体・(一社)日本建設業連合会(以下、日建連)の次期会長候補としても名前が挙がっている。なお日建連によると、山内氏の次期会長就任については、2月23日開催の理事会で内定され、4月26日開催の総会で正式決定される見通しであり、まだ正式な発表ではないとのこと。

 業界内外で存在感を見せつける大成建設ではあるが、その一方で、忘れてはならない現在進行形の課題も抱えている。

kanbotu 昨年11月8日に福岡市のJR博多駅前で発生した大規模な陥没事故で、事故発生の前日に崩落の兆候と見られるデータが計測されていながら、施工業者側が市に報告せずに工事を続行していたことが判明。この問題を受けて福岡市の高島宗一郎市長は、1月24日に行った定例会見で、工事の発注者として独自に施工業者へのヒアリングを行う考えを示した。

 同事故が発生したのは、「福岡市地下鉄七隈線博多駅(仮称)建設工事」の現場。施工は、大成建設(株)を筆頭会社とする「大成・佐藤・森本・三軌・西光建設工事共同企業体(JV)」が請け負っていた。
 市によると、事故前日の午後6時頃、大成JVは掘削中のトンネル内に設置された自動的に圧力を測るセンサーで、市との請負契約上で現場点検と市への報告が義務付けられたレベル1を計測。だが、市への報告が行われることなく工事が継続されていた。その後、事故当日の午前1時半頃には掘削の停止を求めるレベル3まで達していたが、工事はそのまま続行。午前5時過ぎになって、崩落事故が発生するに至った。

 事故をめぐっては現在、国土交通省が設置した第三者委員会「福岡市地下鉄七隈線延伸工事現場における道路陥没に関する検討委員会」が原因究明を進めている。1月21日に東京都内で開かれた2回目の会合後の記者会見では、事故発生の要因となった10項目の可能性を提示。3月開催の次回会合で事故原因を絞り込み、とりまとめる方針となっている。

 大成建設広報室はデータ・マックスの取材に対し、「検討委員会において、今後も引き続き審議が継続されていることから、原因などに関するご質問については回答を差し控えさせていただきます。なお、原因究明などに向けては、施工者として最大限調査協力を行ってまいる所存です」と回答。

 JV筆頭会社である大成建設の元請責任は重大だ。施工者に過失があった場合、工事における賠償責任に加え、事故現場周辺の店舗や企業への営業補償などを考えれば、どのような数字がはじき出されるかは想像もつかない。通常、JVのような企業体に過失があった場合は、受注比率によって賠償額も決定されるというが、原因の特定に至っていない時点では未定。もちろん、着工の際に保険に加入していることから、賠償額がすべて施工者の持ち出しとなるわけではないが、相応の損失が発生することは確実となる。

 大成建設広報室はこの件について、「補償については、個別訪問を開始しておりますが、詳細については回答を差し控えさせていただきます」と回答している。

 仮に多額の賠償金が大成建設負担となったとしても、同社の屋台骨は決して揺らぐものではない。それだけ強固な財務基盤を有しているからだ。

 大成建設の2016年3月期決算は、1992年3月期以来の24年ぶりとなる最高益を更新。背景には、首都圏や中京圏などで大型の再開発工事が相次いでいることがある。労務費の上昇が一段落し、原油安などの影響で資材価格が下落していることも利益の押し上げに貢献した。
 16年3月期の連結売上高は前期比2%減の1兆5,458億8,900万円だったが、営業利益は1,174億6,800万円の同67%増と、従来予想を330億円強上回った。減収でも大幅な増益を確保できたのは、手持ち工事の採算が上向いているため。工事の採算を示す完成工事総利益率は12.0%と、前の期の7.5%から4.5ポイント上昇。利益率は、他の建設大手と比較しても高い割合となっている。自己資本比率は31.3%、流動比率は119.8%と、財務面も比較的健全域にある。

 このため、仮にだが、大成建設が支払うべき賠償金が膨大な額――たとえ1,000億円規模にまで膨らむことになったとしても、一時的な影響はあるにせよ、同社の経営の根幹を揺るがすには至らないと見られる。むしろ“迷惑料”として1,000億円を支払っても、何ら罰は当たるまい。

 とはいえ、大成建設へのダメージは、賠償金の支払いだけにとどまらない。それ以上に、民間受注の際のイメージダウン、過失があった場合の指名停止など、今後の受注に影響が出るのは必至だ。まずは事故原因の究明が何よりも急がれるが、その後は賠償を含めた信頼回復に努めることが急務となる。

gyouseki

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