2024年12月11日( 水 )

中国と九州の経済交流の課題と可能性は?駐福岡中国総領事・何 振良 氏(前)

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 今や世界第2位の経済大国として、政治でも大きな影響力を持つようになった中国。日本でもっとも中国に近い位置にある九州は、今後、対中ビジネスやインバウンドのさらなる発展が期待されている。とくに2017年は、日中国交正常化45周年をはじめ、さまざまな友好関係の節目を迎え、盛んに交流が行われる年となる。今回は、昨年7月に着任した、九州・山口8県を管轄する何振良駐福岡総領事に、中国と九州の経済交流における課題と可能性についてインタビューを行った。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

九州各県で活発に交流

 ――今年は、福岡県と江蘇省の友好関係締結25周年を迎えますが、双方の交流に関して、どのような予定がありますか。

 何総領事(以下、何) 先日、新年の挨拶に領事館に来られた福島明彦福岡県国際局長に、福岡県知事は毎年江蘇省に来られており、去年は江蘇省長が福岡県を訪問しています。今年もそうしたトップレベルの交流を保ちつつ、福岡県と江蘇省の関係を強化していきましょうとお伝えしました。九州中日友好交流大会が今年で5回目となりますが、単なる大会だけでは寂しいということで、大会をメインに、サブテーマとして江蘇省の交流団を福岡県に呼び、観光やグルメといった江蘇省の魅力を伝える物産展を開く予定です。

 ――2016年に南京市の「江蘇・福岡友好桜花園」が開園20周年を迎えました。私が参加している福岡博多ライオンズクラブでも開園に際し、寄付させていただき、「友好橋」というかたちになっております。今年はクラブ設立55周年ということで、現地で「友好橋」を見たいという声もあり、訪問ツアーを考えております。

駐福岡中国総領事 何 振良 氏

 何 福岡県と江蘇省以外にも、今年は、沖縄県と福建省が20周年、熊本県と広西壮族自治区が35周年と、友好関係の節目が多い年です。沖縄県は昨年末、東京都内のホテルで、福建省と「経済交流促進に係る覚書」を締結しており、翁長雄志沖縄県知事も立ち会われていました。三反園訓鹿児島県知事も1月中旬ごろに、上海や江蘇省を訪問され、トップセールスを行われるそうです。日中国交正常化45周年に合わせても、各県単位でさまざまな中国との交流が行われると期待しております。一方、中国側としては、政府の許可が必要になりますので、各省とも年末に計画を立て初めており、春節(1月27日~2月2日)以降から、それらの動きが表面化すると思います。私からも、省長レベルが福岡県を訪問するようにとの要望を江蘇省に出しております。

 オフィシャルの交流が活発化していきますが、民間レベルでも盛んに交流が行われます。江蘇省の国際文化交流センターと南京大学が九州大学と提携し、中国語のスピーチコンテストを開催する予定です。青少年の音楽などの交流でも双方の往来があり、かなり忙しい1年になると思います。総領事館でもいろいろ企画いたします。

 ――総領事の仕事としては、政治・行政だけでなく、教育、文化、経済にまたがった民間団体の交流など、あらゆることをしなければならないのですね。

 何 中国語のスピーチコンテストに関しては、各県の日中友好協会でも実施されていますが、これらをまとめて決勝大会を開くなど規模を大きくし、優勝者には、たとえば『中国1週間の旅』をプレゼントするといった企画を考えております。これまでに大会開催の基礎ができていますから、それほど難しい話ではありません。中日関係改善のためのより良い雰囲気づくりに努めていきます。

まだまだ知名度が低い九州

 ――中国から見て、九州はどのような位置づけにあるのでしょうか。

 何 九州は、経済から見ても、中国との関係は非常に密接です。九州各県の数字で見ると、輸出における対中国の割合は、ほとんどの県で20%近くです。人の往来では、中国からの入国では、なんといってもクルーズ船の存在が大きいですね。ただし、クルーズ船で来る中国人は、8~12時間の臨時の上陸許可というかたちになるため、日本の公式統計では入国者数には入っていません。去年、日本への中国人の入国者数は600万人を超えましたが、クルーズ船の分を含めると800万人近くになると思います。これに台湾、香港を含めると1,000万人以上になりますから、去年、日本を訪れた外国人旅行者数2,400万人の半分近くが中国系から来ていることになります。なお、16年の1~10月で119万人がクルーズ船で九州に来ています。11~12月の分を合わせると150万人ぐらいになります。

 問題は、8~12時間程度では、本当の日本の良さがわからないことです。中国人へのアンケートで「日本で一番行きたい場所」は、東京が53%で他を圧倒しており、九州と答えた人は13%です。九州の知名度をもっと高めなければいけません。九州にはいろいろな観光資源があります。グルメやレジャー、大分や鹿児島の温泉、農産物も豊富です。私は各県の方に中国へ行ってPRするよう求めており、今回、鹿児島県知事がトップセールスする運びとなりました。

 ――宮崎県から中国への木材の輸出が盛んだそうですね。

 何 宮崎県の木材輸出の79%は中国に輸出されています。九州各県が中国市場を開拓することを目指していますが、中国にはまだまだ知られていませんし、PRも不足しています。実は、福岡県もそれほど知られていません。やはり、首都・北京との間に直行便がないことが大きいですね。今、九州全体で中国との航空路線は25便あり、最近では、昨年10月31日に、北九州空港と大連空港の間に週2回の定期チャーター便が就航しましたが、これからもっと拡大することが望ましいと思います。

(つづく)
【文・構成:山下 康太】

 
(中)

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