2024年04月24日( 水 )

時代をひらく女性たち~(株)Branches 権藤光枝代表(前)

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 政府が成長戦略の一つに掲げる『女性の活躍促進』。しかし、今もなお女性が社会に出るにはさまざまな課題が山積みなっているのは周知の事実だ。それでも、多くの試練を乗り越え、社会に貢献する女性は大勢いる。信念を持ち、働く女性の姿は輝いている。女性経営者シリーズ「時代をひらく女性たち」では、分野を問わずさまざまな業界で活躍している女性にスポットを当てる。

 記念すべき第一回目は、(株)Branchesの代表取締役権藤光枝社長。20歳で結婚、21歳で離婚を経験し、元夫の借金と一歳の娘を抱えて生活することになった。そのとき感じたのが「仕事と子育てを両立できる環境がない」こと。『育児は女性の仕事』という意識が未だ根強い社会では、子育てのためにさまざまな「取捨選択」を迫られることになる。
 なぜ、保育所の時間のために仕事を選ばないといけないのか。最初に抱いた疑問はこれだった。たとえば認可保育園は、夕方までしか子供を預けることが出来ない。そうすると、自然と仕事の幅が狭まって来る。
 「もっと育児と仕事の両立が出来る環境」・「子どもを安心して預けられる環境」を作りたいという強い思いで1996年、福岡市南区横手に24時間保育所「リトルワールド」を開園。現在では、「リトルワールド」は6園にまで広がり、そのほかにも出張保育サービスや企業内保育園運営支援など働く女性をサポートする事業を行っている。
 2017年4月からは新たに「訪問看護」サービスを始める。女性が活躍する社会になるにはどうしたらいいのか、権藤光枝社長に聞いた。


子どもも保護者も安心できる場所

 ――(株)Branchesでは24時間保育園などさまざまな保育サービスを提供し、働く女性を応援しています。そういった事業運営の根底には、やはりご自身の経験があるのでしょうか?

(株)Branches 権藤 光枝 代表

 権藤社長(以下、権藤) そうですね。起業する前は、朝から夕方まで美容師として働き、夕方は娘を保育園まで迎えに行き、ご飯を食べさせて託児所に預け、そこからまた働きに出て、そして仮眠してまた仕事へ行くような毎日を過ごしていました。当然、自分の時間なんてありません。自分に熱があっても気付かないぐらい、忙しかった。

 でも、何より辛かったのは娘の近くにいられなかったことなんですね。たとえ、娘の体調が悪くても私は娘を預けて働きに出ないといけない。それが、一番つらかった。しかも、当時の託児所は、昼の保育園ほど環境が整っているとは言い難い施設でした。
 自分が近くで見守れないからこそ、娘のいる環境は安心安全で整っている場所がいい。でもそういった施設がないことにもどかしい思いを抱いていました。

 ――保育園を立ち上げたのは、それがきっかけだったんですか?

 権藤 「安心できる場所がないなら、自分で作ればいい」と、そう思って保育園をつくることにしました。元夫の借金は1年で完済し、それからは事業を始めるために貯金を。24歳のときにようやく24時間保育園を始めることが出来ました。
 私と同じように苦労している人は大勢います。昨今一人で子育てをしている人は珍しいことではないでしょう。「リトルワールド」にも多くのシングルマザーやシングルファーザーがいます。もちろん、共働きで忙しく子どものお世話をすることができないご家庭だってあります。けれど、残念ながら今の日本ではそういった方々を受け入れる制度が整っているとは言い難い。

 ――24時間保育園では、利用者のライフスタイルを最優先していると伺いました。

 権藤 大体の保育園では、お迎えの時間は夕方ごろが一般的ですよね。だけど、朝預けて夕方お迎えに来ることができる仕事って意外と限られていると思うんです。仕事の形態も違えば、当然預けたい時間やお迎えにいける時間も変わってくる。24時間保育園では、保護者の方が自由に仕事や生活スタイルを選択できるようサポートしています。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:権藤 光枝
所在地:福岡市博多区祇園町2-11
設 立:1996年
資本金:300万円
URL:http://www.branches.co.jp/

<プロフィール>
権藤 光枝(ごんどう みつえ)
1973年生まれ、兵庫県出身。シングルマザーとして娘を育てながら、2000年に起業し、24時間保育園「リトルワールド」を開園。2009年に全国商工会議所女性連合会が主催する第8回女性起業家大賞で最優秀賞・日本商工会議所会頭賞を受賞。

 

(後)

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