2024年07月23日( 火 )

籠城の高島市長を救った天野市議の「貧乏くじ」~福岡市長虚偽答弁疑惑

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福岡市議会において、2日連続で明け方まで審議が続いた福岡空港の新運営事業者への出資を求める「活力ある福岡空港づくり基金条例案」(出資条例案)は、再議による議決の結果、1票差で否決された。高島市長の虚偽答弁疑惑を追及する議会側と、説明を拒む高島市長との間で硬直状態にあった議会を動かしたのは、出資賛成派から「騙し討ち」とされる若い市議の言動であった。

市民(メディア)をも欺いた天野市議

反対票を投じた天野市議(議会放映より)

 決着の立役者になったのは、天野こう市議(西区)。天野市議は、かねてより反対票を投じてきたが、12日深夜、所属会派・福岡維新の会の党議拘束に従い、賛成票を投じる意向を匂わせた。「議員の考えは会派内でもさまざまあって良いと、自主投票を選択してきた。しかし、急に勝ちたい(出資条例案を可決したい)からといって党議拘束をかけられた時に信頼関係は完全に崩れた」(天野市議)。

 しかし、市民の目の代わりとなるメディアの取材に同様のニュアンスを伝えていた点には疑問が残る。出資の是非については、市民の間でも賛否両論。空港出資をめぐり、地元議員に意見を求めた市民も決して少なくはない。天野市議の言動から、「再議可決の可能性」を報じたメディアもあり、市民のなかには、天野市議が反対票を投じたことに強烈な違和感を抱いた人も多いのではなかろうか。

 「採決当日の未明に最終的な拘束がかけられたため、従わざるを得なかった。従わずに事前に退会は物理的に不可能だと思った。党議拘束を全体でかけられるのは仕方ない、ただこれまでの自分の主張と整合性を取る必要がある旨はその場でお伝えさせていただいた。拘束なので拒否権がない以上、そういったニュアンスをお伝えする以外方法が浮かばなかった」(天野市議)。

 天野市議が投じたのは会派の他の3人と異なる反対票であった。

 百歩譲って、会派控室という密室のなかで追い詰められ、一時しのぎのウソをついたというのならまだしも、天野市議はメディアの取材にも応じていた。この点で、自分が賛成に回るというイメージを、“あえて広めようとしていたのではないか”との疑念が生じている。裏で絵を描いた人間には、議論を尽くしたうえで最後に意見を一本化する党議拘束の仕組みを逆手にとろうとの思惑があったのではないか。この時、最も窮地に追い込まれていたのは、天野市議ではなく、本会議における虚偽答弁の疑いで、議会側から常任委員会の場での説明を求められていた高島宗一郎福岡市長にほかならない。

 「まるで子ども……」。あきれ果て、疲れ果てた市議のボヤキ。議会側の再三再四にわたる出席要求を「何を聞きたいかがわからない」と拒み続け、2夜連続で日付をまたぎ市長室における立て籠もりを続けていた高島市長。最終的には、出資の是非に関係なく、代表者会議を経て、“市議会の総意”として高島市長に出席が求められていたが、それも拒絶。しかし、事態は、天野市議が賛成に回るとの情報により急展開を見せた。高島市長への追及を一旦中断し、先に議決を行う運びとなったのだ。大ピンチをしのいだ高島市長。しかも、再議の結果は、高島市長をはじめとする出資反対派の勝利である。

維新・松井代表「自惚れている」

 17日、福岡維新の会の上部組織である大阪維新の会の松井一郎代表は、マスコミの取材に対し、「会派内で多数をとれずにこれが正しいと言い切るのは自惚れていると思う」「政治というものを知らなさすぎる」などと語った。続けて、松井代表が例示したのは、自民党内での多数派意見が無視された「党内民主主義の崩壊」が原因という大阪維新の会誕生の逸話だ。「いくら議論をしてもいいが、決めたことは守るのが大阪維新の会の原点」(松井代表)。

 市政関係者によると、天野市議は、福岡維新の会から外れた後、出資反対派に回ったみらい福岡市議団に入る算段をつけているという。「維新」の看板まで捨てたくはない天野市議は、保守系だが他会派に比べて政党色のうすい同会派に入り、次の選挙で維新の公認を得たい考えのようだ。しかしながら、松井代表のいう「維新の原点」から外れた行為が許されるのだろうか。

【山下 康太】

 

(補足)3月28日の本会議において「活力ある福岡空港づくり基金条例案」は、賛成39、反対20(退席2、議長票除く)で可決。議長も賛成していることから、再議可決の要件である3分の2(40票)以上を満たしていた。4月13日の再議議決では、賛成41、反対21(議長票含む)となり、1票差で否決とされた。

 

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