2024年05月15日( 水 )

山本化学工業に業務停止命令~中国産原薬でかさ増し

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 医薬品の原料である原薬を製造するトップメーカー、山本化学工業(株)が5月下旬、和歌山県と厚生労働省から立ち入り調査を受けた。その結果、同社が製造するアセトアミノフェン(以下AA)に、許可を受けていない中国製のAAを混ぜて、かさ増しして出荷していた実態が明らかとなった。これを受けて和歌山県は29日、同社に対して業務停止命令などの行政処分を行っている。

AAの国内トップメーカー

 山本化学工業(株)は1946年、和歌山市で創業した原薬(医薬品の原料となる薬品)メーカー。創業当時はアミノ酸、カラメルの製造を手がけていた。51年に法人化し、翌52年にはフェナセチン(解熱鎮痛剤)、59年にAA(解熱鎮痛剤)、2000年にサリチルアミド(非ステロイド性抗炎症薬)、02年にアスピリン(鎮痛剤)、11年にエテンザミド(解熱鎮痛消炎剤)などをそれぞれ生産開始し業容を充実させていった。とくにAAでは国内シェア8割を占めるトップ原薬メーカーに成長を果たした。AAは主に風邪薬の原薬として、多くの製薬会社に供給されている。

厚労省、県が立ち入り調査

 ところが、今年5月下旬、同社に和歌山県と厚労省が立ち入り調査を実施する事態となった。これは厚労省に情報提供があったため、厚労省が和歌山県に通知、和歌山県が立ち入り調査を実施し、厚労省が立ち会ったもの。調査の結果、同社が製造するAAに、届け出がなされていない中国産のAAを混ぜ、かさを増して出荷していた事実が判明した。厚労省によると、同社のAAには同社がすべて製造した純国産ロットと、同社製品に中国産のAAでかさ増ししたものとが入り混じったロットとがあり、すべてに中国産のAAが使われているわけではないとしている。厚労省が品質に問題はないとしたため、同社は製品の回収を行っていない。

 また、この立ち入り調査で、同社が製造しているてんかん薬成分であるゾニサミドの製造で届け出をしていない方法で製造されていたことも明らかとなっている。ゾニサミドの製造で用いられる溶媒を届け出しないまま変更していたとされる。厚労省は「原薬メーカーは県が定期的に立ち入り調査を行っており、これまでに不正は報告されていない。過去にない極めて異例なもの」とコメントした。なお、同社からは役職者の不在を理由にコメントを得ることはできなかった。

 原薬の製造は原料、工程などを届け出なくてはならず、その届け出とは異なる製造方法を採ったこれらの行為は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に違反するとして、和歌山県は同社に対して6月29日から7月20日までの22日間の業務停止命令と医薬品製造業の業務改善命令の行政処分を行った。

【柳 茂嘉】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:山本 隆造
所在地:和歌山市船津町1-4
設 立:1951年12月
資本金:1,125万円

 

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