春日市、住宅地と駅前で同時に容積率緩和 都市構造再編へ一歩

 福岡県春日市は1月5日、市内で2つの容積率緩和策を同時に施行した。いずれも人口減少社会を見据えた都市構造の再編を目的とするもので、「住宅地の更新」と「駅前拠点の高度利用」という役割の異なる施策を組み合わせ、市内全体の土地利用を立体的に再構築しようとする点が特徴だ。

 1つ目は、市内の中高層住居専用地域を対象とした容積率緩和である。従来150%に制限されていた容積率を200%へ引き上げるもので、1996年に市内一斉で行われた規制強化によって生じた「既存不適格建築物」の解消を主な目的としている。

 当時、春日市は人口急増にともなう住環境悪化を防ぐため、建物の高さや密度を抑制したが、その結果、多くのマンションが現行規定に適合しない状態となり、建替えが困難になっていた。今回の緩和により、老朽化したマンションの再建が進みやすくなり、子育て世帯や高齢者など多様な住宅ニーズに対応できる環境整備が期待される。

 もう1つが、「かすが都心エリア建替え促進プロジェクト」の第2弾として実施された、駅周辺エリアの規制緩和である。西鉄春日原駅およびJR春日駅周辺の近隣商業地域を対象に、容積率を200%から300%へ引き上げると同時に、絶対20m高度地区を廃止した。

 こちらは住宅地の再生というよりも、都市拠点としての機能強化が狙いだ。高架化され特急停車駅となった西鉄春日原駅周辺では、老朽化や低利用が進んでいた市街地を更新し、商業、業務、居住がバランス良く集積する「都心らしいまちなみ」の形成を目指す。

 両施策の違いは対象と役割にある。中高層住居専用地域の緩和は、市内に広がる住宅地の更新を後押しする「面」の施策であり、駅周辺の緩和は都市機能を集約する「点」の施策といえる。これらを同日に実施することで、市は市内全域で土地利用の循環を促し、無秩序な市街地拡散を防ぎながら、持続可能な都市構造への転換を図る考えだ。

 春日市都市整備部都市計画課計画担当は、今回の緩和策について「中心部の拠点性を高めていくほか、人口を維持していける環境づくりを社会情勢に合わせて、今後も続けていきたい」と話す。

 春日市はすでに2021年に第2次都市計画マスタープラン、24年に立地適正化計画を策定し、人口減少・少子高齢化を前提とした都市づくりを明確にしている。

 今回の容積率緩和は、これら上位計画を具体化する制度的な一手と位置づけられる。住宅地と駅前拠点、それぞれに異なる役割をもたせた今回の同時緩和は、人口動態が変化するなかで都市をどう更新していくかを示す、わかりやすい政策メッセージといえそうだ。

【内山義之】

法人名

関連キーワード

関連記事