士業・医療プロフェッショナル向け総合支援 独自戦略が牽引する事業成長の実態
(株)スタイル・エッジ
代表取締役社長 島田雄左 氏

弁護士、医師といった高度な専門知識をもつプロフェッショナルたちが、必ずしも経営のプロフェッショナルであるとは限らない。彼らが専門業務に集中できる環境を創出することで急成長を遂げているのが、(株)スタイル・エッジだ。今回は、代表取締役社長である島田雄左氏に、同社の成長を支える事業設計と今後の展望をうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 緒方克美)
三位一体の総合支援モデル
──まずは(株)スタイル・エッジの事業内容を教えてください。
島田雄左氏(以下、島田) 私たちの主要なクライアントは、弁護士やドクターといった専門家の方々です。彼らが専門業務、いわゆるコア業務に集中できる環境をつくることこそ、当社の事業の根幹であり、その実現を支えるのが三位一体のビジネスモデルです。
第一の柱が集客支援です。インターネット広告を活用して、クライアントが求める見込み客を獲得します。しかし、広告を経由してお問い合わせをいただいただけでは成果にはつながりません。むしろその先に、契約につなげるための問い合わせ対応や要件整理といった、別の業務負荷が新たに発生します。
そこで第二の柱となる営業支援が重要になります。弁護士や医師は専門領域において圧倒的なスキルをもっていますが、営業活動は不得手なケースも多い。そこで私たちが、コールセンター、LINE、メールなどを使って一次対応を行い、相談者の要望を丁寧に把握します。さらに必要に応じてコンサルタントをクライアント先へ派遣し、契約率の向上まで踏み込んでサポートする。ここが、当社の価値が最も発揮される部分だと考えています。
次に、集客と営業の規模が拡大すると、スプレッドシートでは顧客を管理しきれなくなります。ここで第三の柱であるシステム導入が生きてきます。当社は士業向けに『LeadU(リードユー)+(プラス)』シリーズ、医業向けに『RaKKaR(ラッカル)』といった自社プロダクトを提供しています。これらのCRM(顧客管理ソフトウェア)により、広告から契約までのプロセスを一元管理し、どの広告が成果を生んだか、どの対応が効果的だったかを可視化できます。このデータ分析が、集客・営業双方の精度を継続的に高めていくわけです。
つまり、集客が営業支援の需要を生み、その複雑性をシステムが解決し、全体の効率をさらに引き上げる。この三位一体の仕組みが好循環を形成し、クライアントの事業成長に深くコミットすることが可能になります。結果として、クライアントの業績向上が当社の収益拡大にもつながる、互いに成長を促し合う関係を築いてきました。
──集客支援だけなら他社も手がけていますよね。それにもかかわらず契約へと導くプロセスまで踏み込んで、同じモデルを再現しようとする企業がほとんど見られません。
島田 競合が参入しづらい理由は、法的な壁の存在にあると考えています。
私たちの事業は、弁護士法や医療法といった専門性の高い法律を遵守することが絶対条件です。クライアントの業務に深く関与すればするほど、これらの法律に抵触するリスクが高まるため、多くの企業はそのリスクを避けたがります。私たちは、法的論点を1つひとつ精査しながら事業を設計してきましたが、これは決して一朝一夕でできることではありません。
そしてこの法的ハードルは、スタッフ教育の難易度を極端に引き上げる要因にもなっています。スタッフは単に広告を運用したり、電話を受けたりするだけでは務まりません。クライアントの業務に深く入り込むためには、専門領域に対する深い理解が不可欠です。
たとえば弁護士事務所を支援する場合、どこからが法律相談に該当し、どこまでが事実整理なのか、その線引きを正確に把握する必要があります。このレベルに到達するまでスタッフを教育するには、膨大な時間とコストがかかります。結果として、他社が容易に追随できない独自のポジションを当社にもたらしました。
士業から医業、教育へ
経営支援を軸に事業多角化
──島田社長が就任されてから、事業はどのように変化しましたか?
島田 創業者ではなく外部から就任した立場ゆえに、社内外双方での信頼関係をゼロから築き上げることがまず求められました。そうした前提のもと、社長就任後にまず注力したのは、広告手法の多様化です。従来はリスティング広告が中心でしたが、SNS時代の到来を見据え、TikTokやX(旧・Twitter)といった新しい媒体へ積極的に展開しました。その結果、お問い合わせ件数は一気に増加し、事業の成長スピードが加速しました。
さらに弁護士だけでなく、医師にも同様のマーケティングやシステムの仕組みを展開することに取り組みました。きっかけは、知人の開業医からの相談です。自由診療の美容クリニックを経営しているものの、集客が思うようにいかず、来院してもワンオペで対応が追いつかない──そんな悩みを聞いたときに、『この構造は弁護士事務所の課題と非常に良く似ている』と直感しました。専門家としてのスキルは高いにもかかわらず、事業規模が小さいことで人を増やせず、結果として営業や運営面の非効率に苦しんでいるという点です。
そこで、弁護士事務所で培った三位一体モデルをクリニック向けに横展開しました。ただし、両者には決定的な違いがあります。弁護士業務は直接会うだけではなく、オンラインで完結するケースもありますが、クリニックは施術のための“物理的な場所”が不可欠です。インターネット広告で全国から集客しても、院が東京にしかなければ来院のハードルが高くなり、広告効率はたちまち悪化します。
この場所の制約を解決するために誕生したのが、当社のインフラ事業です。私たちが物件を借りてクライアントに転貸したり、必要な機器をリースしたりすることで、クリニックの多拠点展開を実現しました。この仕組みにより、広告効率と経営効率の双方を大きく改善することができました。加えて、店舗拡大にともない不足する医師を人材紹介で確保するなど、運営面を含めた総合的な支援も行っています。
こうした一連の戦略が奏功し、クリニック支援事業はこの3年間で急成長を遂げ、現在では祖業である弁護士支援事業の規模を上回るまでに成長しました。
──クリニックの次は、学習塾の経営支援を始めたそうですね。一見、関連性が薄いようにも思えますが、どのような戦略的意図があるのでしょうか?
島田 学習塾事業への進出には、2つの戦略的な狙いがあります。
1つ目は、当社の事業モデルをさらに発展させるためです。“教えるプロ”である先生方が指導に専念できるよう、私たちが集客やオペレーションの構築を担う。この仕組みは、当社が掲げるプロフェッショナルに向けた総合支援モデルの新たな応用例であり、弁護士・医師に続いて教育分野でも同様の価値提供が可能だと判断しました。
2つ目は、将来のクライアント候補を育成するという長期的なシナジー戦略です。当社が支援しているのは、東大をはじめとする難関大学を目指す学習塾で、そこには高い志をもった生徒が集まっています。彼らは将来、弁護士や医師などの専門職に進む可能性が非常に高い。競合が彼らの存在に気づくより10年早く関係を築くことで、将来的に法律事務所やクリニックへ優秀な人材を紹介する人材紹介事業へと発展する可能性があります。
こうした観点から、学習塾支援は未来の事業基盤を育てるための先行投資であり、当社にとって非常に意義のある取り組みだと位置づけています。
変革を支える人の力
AI時代の企業文化醸成
──さらに2025年7月、社内ユニコーン部署として『AI戦略室』を設立されました。
島田 AI戦略の原点は、属人化しやすい問い合わせ対応業務をどこまで自動化できるか、という発想にありました。メールやLINEによる対応は労働集約型で、件数が増えるほど品質のばらつきが避けられません。そこでAIを活用し、一定の品質を常に担保できる仕組みをつくりたいと考えたのが最初の動機です。
私は2年前から「AIにフルベット(全賭け)する」と宣言し、まずは社内にAI文化を浸透させることから着手しました。外部講師を招いた全社員研修、有料AIツールの社内開放、そして全社員からAI活用の施策を募り、その成果を評価する『AI Innovation Challenge』の開催などを通じて、社員1人ひとりが自発的にAIを使いこなす土壌を整えてきました。
2年目からは、社内活用フェーズを終え、顧客への価値創出へと軸足を移しています。社内でのAI活用はすでに実践段階に達しており、社外に対しても同様に実装が進みつつあります。これまで積み上げてきた信頼関係を基盤に、クライアントに対してAI導入・活用を促す働きかけを行っています。クライアント業務のAI化を積極的に提案し、広告運用、問い合わせ対応、オペレーション設計など、多岐にわたる領域でAIによる生産性向上の余地を感じています。
──AIの活用が進むなかで、私たちの仕事の在り方も大きく変わりつつあります。結局、AIはツールに過ぎず、真価を発揮できるかどうかは使い手の能力に左右されると感じます。
島田 まさにその通りで、AIを最大限活かせるかどうかは使う側の自力、つまり基礎能力にかかっています。こうした技術進化の速さを踏まえ、当社の開発哲学も大きく変わりました。エンジニアとして働くスタッフには「開発をやめる勇気をもとう」と伝えています。自前主義に固執するのではなく、外部の優れたAIを柔軟に取り込み、ディレクションに回る側として価値を発揮することが重要だからです。技術の進歩はあまりに速く、内製にこだわり続けてしまうとすぐ陳腐化してしまいます。
私自身も、常に新技術の可能性を探っています。テクノロジーの進化スピードがさらに増すなかで、経営者としての考え方や判断軸も日々アップデートされていると実感しています。
IPOを視野に入れ
顧客の成長を支え続ける
──事業成長が続くなか、上場に向けた取り組みも視野に入れているとうかがいました。IPOを検討する背景や目的を教えてください。
島田 25年5月期はネット売上高70億円に対し、純利益13億円と、事業規模は着実に大きくなっています。組織体制も急速に増強されており、21年時点で約250人だった従業員は、現在では約450人へと増加しています。
こうした事業・組織の両面での成長を持続させるためにも、当社はIPOを目指して準備を進めています。資金調達の幅を広げるという目的もありますが、最大の狙いは事業のクリーンさを社会に対して明確に証明することにあります。
私たちは、弁護士法や医療法といった規制の厳しい領域で事業を展開しています。上場企業となることで、コンプライアンスを重視した透明性の高い運営を行っていることを明確に示し、クライアント・採用市場・金融機関を含むステークホルダー全体に対して大きな信頼醸成につながると考えています。
──事業が拡大するほど、経営者として求められる役割も変わってくると思います。その点についてどうお考えですか?
島田 正直に言うと、会社が大きくなれば経営は楽になるのだと思っていた時期もありました。しかし実際にはその逆で、経営の難易度は格段に上がりました。わずか1%の誤差で利益が1億円単位で変動する。そんな繊細な舵取りが求められ、プレッシャーと向き合う日々です。
創業当初は「今月の売上が100万円を超えた!」と純粋に喜べた時期もありましたが、今のステージでは喜びの質がまったく変わりました。現在の私のモチベーションは、株主、従業員、クライアントなど多くのステークホルダーに対し、「責任をはたす」という強い使命感にあります。
こうした責務をはたしつつ、事業を次の成長フェーズへと押し上げるためにも、IPOは不可欠なプロセスだと考えています。今後もプロフェッショナルに向けた総合支援モデルを深化させ、クライアントの価値向上に資する事業体系の強化を図っていきます。
【文・構成:岩本願】

<PROFILE>
島田雄左(しまだ・ゆうすけ)
1988年、福岡県生まれ。実業家、司法書士、格闘家。24歳で司法書士事務所を開業。国内トップ規模の士業グループに成長させる。その後、自身の経営経験を元に、(株)スタイル・エッジ代表取締役社長に就任。共創型ビジネスモデルとして士業や医業のコンサルティングを行っている。YouTubeやX(@shimadayusuke66)で法律、仕事、マネーリテラシーなどさまざまな情報を配信中。著書に『士業経営』『人生で損しないお金の授業』(共に税務経理協会)がある。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:島田雄左
所在地:東京都新宿区新宿4-1-6
JR新宿ミライナタワー17F
設 立:2008年6月
資本金:3,000万円
売上高:(25/5)約70億円
URL:https://styleedge.co.jp








