2024年04月25日( 木 )

原発の本質的問題点は核ゴミ処理 地層処分マップ公表(前)

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 日本のエネルギー問題における大きな課題の1つが原発である。福島第一原発事故のような大きな、致命的な事故のリスクも当然あるが、より現実的な、現在すでに直面している課題は放射性廃棄物の処理の方法だ。日本では高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋める地層処分する方向で具体的な検討を行っており、経産省は7月、科学的に地域の特性を調べた地図を発表した。しかし、処分場を設置するためには地域住民の理解が必要となり、難航が続いている。

本質的に解決できない問題

7月に発表された科学的特性マップ。広いエリアで適性があるとしている
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 原発の安全性は向上したとされるが、本質的な問題は依然として残ったままとなっている。本質的な問題とは、放射線は生物に致命的なダメージを与えるという点だ。

 原発ではウランやプルトニウムを連続的に核分裂させて質量の一部をエネルギーに変える。その結果、分裂後にも不安定な原子を生み出すことになる。その原子は不安定であるから、エネルギーを放射して安定しようとする。それが放射線である。ちなみに、放射線を出す能力のことを放射能と呼ぶ。その放射線が生物を通過すると、細胞の中のDNAの鎖を切ってしまう。そのため、新しい細胞をつくることができず、傷を再生することができなくなるのである。最も、その浴びた量が少なければ、たとえば飛行機でニューヨークまで飛んだ時などでも被曝するが、その量が少ないために、問題にはならない。

 ところが、原発の場合は地球上で自然に起こりうる核分裂を超えた、非常に高いレベルでの核分裂を起こさせるため、強い放射能をもった原子(放射性核種)が大量に生み出されることとなるのである。その核種は安定するまで放射線を出し続けることになるのだ。原発から生み出される放射性核種が無害になるためには数万年かかるとされている。そのため、かつてないほどの長期間にわたる生命体・自然界からの隔離が必要になるのである。

 これが原発の抱える本質的な問題であり、解決するための糸口すら今のところは見出されていない。にもかかわらず短期的な経済性のために原発を稼働させているのが現状なのである。これがいわゆる核のゴミの問題で、「トイレのないマンション」とたとえられている。その解決策として日本が模索しているのは、地層処分と呼ばれるものである。原子が安定するまで何千年、何万年もの間、地中に埋めておくというものだ。短期的、と表現したのはこの長期間の費用や漏出のリスクが考慮されていないからだ。

処分方法は「地層処分」のみか

 では、日本国内にはどのような核のゴミがあるのだろうか。原発から発生する放射能を帯びた廃棄物には2種類ある。1つは原発内で使ったウェス(ペーパータオルなど)や手袋などの低レベル放射性廃棄物。気体のものは放射性物質の濃度を測定し安全確認したうえで排気塔から大気に放出され、液体のもの、個体のものはドラム缶に詰められて原発内で保管された後、青森県六ケ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センターで地中に埋められる。現在、2つの埋設施設が稼働しており、それぞれ、4万m3、8万m3の埋設が可能だ。今後、60万m3まで拡張することが計画されている。この低レベル放射性廃棄物は大きな問題になっていない。というのも、適切に管理しさえすれば、生命・環境に大きな影響を与えることが考えにくいためだ。問題となっているのは高レベル放射性廃棄物である。

 高レベル放射性廃棄物は、原子炉で燃やされた後の核燃料など、高い放射能をもつゴミである。ちなみに、使用済み核燃料のなかにはプルトニウムやウランなど、燃え残ったものが含まれており、日本ではこれを再度処理して取り出し、再利用する。その残りが高レベル放射性廃棄物となる。その処分の方法として考えられているのが、先述した地層処分なのだ。

(つづく)
【柳 茂嘉】

(後)

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