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2018年03月28日 09:00

義援金200億円に見る、日本と台湾の距離!(4)

日本人と台湾人の「やさしさ」にはズレがある

 ――さて、今回はいよいよ義援金200億円の謎に迫っていただきたいと思います。

 木下 本書が出版されて多くのメディアの取材を受けました。そのなかで、どのメディアからも質問されたのが「なぜ、200億円は集まったのか」という質問です。私はそのつど、お答えしましたが、必ず「この短い時間では本当のところをご理解いただくのが難しいかも知れません」と注釈をつけました。今日は、その点も含めてできるだけわかりやすくお話したいと思います。あくまで、私の考えですが、この背景には「台湾人のやさしさ」「有錢好辦事」「台湾人は日本が好き」の3つの要素があると考えています。

 1つ目の「台湾人のやさしさ」です。台湾人が持っている「やさしさ」と日本人がもっている「やさしさ」にはちょっとしたズレがあります。例を挙げます。私の知人の女性はスマトラ地震の際、2,000元(約7,000円)を寄付しました。彼女はスマトラとは縁もゆかりもなかったので、その理由を尋ねました。その返事は一言「かわいそうだから」というものでした。これは平均的な台湾人がもつ「かわいそう」の感情です。一方で、日本人もおなじように「かわいそう」という感情は持ちます。しかし、多くは寄付には至りません。

 では、この差はどこから来るのでしょうか。日本人は他人と自分との境界を頑なに守ります。しかし、台湾人は平気で乗り越えてきます。これは、一歩間違えると、日本では「うざい」とか「おせっかい」と言われます。しかし、同時に「困っている人がいたら助けてあげたい」という気持ちが強烈に伝わってきます。もちろん台湾人でも千差万別です。しかし、30年以上生活して、社会全体を見渡した場合、平均してこのように考えることができます。

台湾人はお金に関してはものすごくストレート

 2つ目の「有錢好辦事」は、直訳すると「お金があれば何でもやりやすい」という意味です。台湾人は、お金に関して日本人の100倍シビアです。モノを安く買うためには、どんなタフな交渉もいといません。お金の話をするのも好きです。友人が日本に旅行に行ったと聞くと、風景や買い物などの話の前に、まず「いくらだった」と平気で聞きます。お金に関してものすごくストレートなのです。「有錢好辦事」は札束で頬を引っ叩くという意味ではなく、合理的にお金を稼いで、それを有効に使いなさいという意味です。「義援金が必要だと思ったら、大きなお金でもポンと出す」みたいな感覚が、社会人である大人はもちろん、大学生、高校生、小・中学生まで、身についているのかもしれません。

 もしかしたら、彼らは日本人より、ずっとお金のことを知っているのかもしれない。お金を稼ぐことの難しさも、それを使って得られる幸せも、いざというときに、お金が発揮する計り知れない力も。だからお金を出すということは、彼らにとって何にもまして、心を届けることになるのではないだろうか。愛の心を届けることに。

(『アリガト 謝謝』第1章64頁)

親日とはいろいろな「好き」がカオスに入り混じる

 以上の2つが重要な要素です。しかし、それだけでは200億円は集まりませんでした。そのベースには「台湾人は日本が好き」という気持ちがあったことを忘れてはいけません。しかし、これはよくいわれる「親日」の一言で片づけられる問題ではありません。

 日本の統治時代に教育を受けたお爺さん、お婆さんは、昔の日本(遵法精神、衛生観念、秩序など)が好きです。若者は、そのようなことにはまったく興味がなく、物心ついた頃から身の回りにあった日本のアニメ・マンガが好きです。品質が最高の日本の電化製品(炊飯器、ウォッシュレットなど)や最近では日本の薬が好きという人もいます。また、日本人の持っている「誠実さ・道徳心」が好きだという人もいます。このように一言で「好き」と言っても、それは種々雑多な感情がカオス(無秩序)のように入り混じった集合体なのです。もちろん日本が嫌いな台湾人もたくさんいます。そして、勘違いしてはいけないのは、好きであっても、崇拝とか、憧れているわけではないということです。これが私の印象です。

これまでにないくらい日台は友好関係が高まった

 ――最後になりました。読者にメッセージをいただけますか。

 木下 今回の200億円の義援金は台湾人のもつ「やさしさ」「有錢好辦事」「日本が好き」という、いわば3つの乾燥した枯草に、「日本を何とか助けたい」という火がつき燃え上がったものです。ものすごい、スピードで燃え上がり、誰も止めることができなかっただけでなく、途中で国民イベントのようになりました。

 最近の日台関係は今までになく良好です。200億円の義援金も、その後押しをしたといえるかも知れません。だからと言って一足飛びにあらゆる問題が何でも解決するわけではありません。身近な問題でいえば、年間の渡航者数は、日本からは190万人、台湾からは490万人、人口を考えれば、その温度差は3倍以上あります。しかし、それでも、私が台湾観光協会の『台湾観光月刊』編集長だった100万人突破が夢だったころのことを考えれば、大きな進歩です。今後も旅行を含めたさまざまな交流の機会を通じて、日台関係がますます良くなっていくことを祈念して止みません。

 彼らの心の中の日本との距離は、真奈が想像するよりずっと近いに違いないということだ。そのことが真奈には驚きをもった発見であるとともに、大変申し訳なくも感じた。

(『アリガト 謝謝』第1章65頁)

(了)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
木下 諄一(きのした・じゅんいち)
 1961年愛知県生まれ。東京経済大学卒業。商社勤務、会社経営を経て台湾に渡り、台湾観光協会発行の『台湾観光月刊』編集長を8年つとめる。2011年、中国語で執筆した小説『蒲公英之絮』(印刻文学出版社)で、外国人として初めて、第11回台北文学賞を受賞。
著書にエッセイ『随筆台湾日子』(木馬文化出版社)、『アリガト 謝謝』(講談社)など。

 
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