2024年04月28日( 日 )

KWSが進める海外水ビジネスの最前線~われわれのビジネスはこれからが正念場だ!(後)

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久保田 和也 事務局長

 「現地のニーズに合った技術」とは何か。その第一が「国際価格競争力」だ。発展途上国と日本では物価がまったく違う。どんなに良いモノでも、コストが合わなければ相手にされない。たとえば、水道管に使用される鋳鉄管。日本製は耐震性などに優れるが、その価格は、「中国製やフランス製と大きく乖離している」そうだ。水道料金が月25~30円の国で、日本製の鋳鉄管を入れた場合、大幅な料金値上げが必要となる。いくら官尊民卑の国とはいえ、国民が水を使わなくなれば、経営そのものが立ち行かなくなるのは必至だ。

 その一方、日本製の水道メーターの価格は、シンガポール製のモノと比べても大差なく、すでに現地で採用されている。同じ日本製品でも、なぜこのような差が生まれたのか。「内需マーケットに固持してきたビジネスと、外需を意識してきたビジネスとの違い」と指摘する声が多い。

 現地採用される技術は、国内大手メーカーのモノばかりではない。同市の中小企業の技術が採用された事例もある。(株)ジオクラフト(本社:北九州市小倉北区、石原均社長)が手がける上下水道施設マッピング管理システムがそれだ。

 ベトナム・ハイフォン市の水道担当者一行が北九州市の上下水道を視察に訪れた時、北九州市に納入されたジオクラフト製の施設管路管理システムが一行の目に止まった。「北九州市に技術協力を頼むなら、同じモノを入れよう」ということで、特命随意契約が結ばれた。「国内大手メーカーか、零細企業かどうかは関係ない。国際競争力のある良いモノは売れるし、悪いものは売れない。それだけのこと」と分析する。

 北九州市と(株)神鋼環境ソリューション(本社:兵庫県神戸市中央区)が共同開発した高度浄水処理技術「U-BCF(生物接触ろ過)」が2013年12月、ベトナム第三の都市(人口約187万人)ハイフォン市の小規模浄水場(処理能力5,000m3/日)に導入された。総事業費は87億ベトナムドン(約4,100万円)(ハイフォン市自己資金)。U-BCFは、北九州市の穴生、本城浄水場で稼働している生物活性炭処理を行うシステムで、オゾン活性炭処理に比べ、ランニングコスト面で優れるのが特徴だ。

 その後、(株)ユニ・レックス(北九州市小倉南区、村上勝昭社長)が主体となった官民共同チームは2015年2月、JICA事業として、ハイフォン、クァンニン、ナムディン、フートォ、ホーチミン、ティエンザンのベトナム6都市の浄水場で、U-BCFの実証実験をスタートさせた。実験結果は、2018年12月に明らかになる予定だ。

 このU-BCF実証実験プロジェクトの目的は、チーム北九州による現地浄水場建設の受注にある。実現すれば、総事業費数十億円のビッグビジネスにつながる。さらなる大型プロジェクトも控えている。カンボジアの地方都市の水道事業に、日本政府の運営権対応型無償資金協力により水道施設が整備される。その施設の完成後、その施設を用い日本企業が設立させる特別目的会社が最大10年間の運営権を取得するプロジェクトだ。その入札は、総合評価方式により、早ければ、本年内に決まる。「われわれのビジネスはまだまだスタートしたばかり。このビジネスをいかに軌道に乗せていくか。これからが正念場だ」と力を込める。

(了)
【大石 恭正】

 
(前)

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