2022年01月22日( 土 )
by データ・マックス

H.I.S.グループ、2020年売上1兆円の布石は?(前)

 世界的な旅行業界の好況を背景に、旅行者を飽きさせない新企画を次々と投入することでさらなる需要拡大を図るエイチ・アイ・エスグループ。3月末から1人旅で不在としている澤田秀雄代表は、どのような置き土産を残していったのか。

売上は10年で約2倍

10年間の推移 10年間の推移(クリックで拡大)

 (株)エイチ・アイ・エスの2017年10月期連結決算は、ともに過去最高となる売上高6,060億2,400万円、親会社株主に帰属する当期純利益132億5,900万円を計上。18年10月期の業績予想では売上高7,350億円を見込む。08年10月期の売上高3,683億8,400万円からすると約2倍。2020年には、売上高1兆円、営業利益1,000億円を目標に掲げている(表II参照)。

 では、事業分野ごとに見ていこう。まず、同社の収益の柱である旅行事業。同社は昨年、世界展開に向けたM&Aを実施。カナダ最大の旅行会社メリットグループと資本業務提携。さらに創業50周年を迎えたイギリス・ロンドン発のミキグループを子会社化した。グループ規模は拡大し、18年1月末時点で、営業拠点は国内286カ所、海外70カ国156都市271拠点という陣容となっている。
 17年は、日本人の出国者数において、朝鮮半島など東アジア情勢による減速が見られたが、欧州テロなどによる落ち込みからの回復もあり、全体では前期比5.6%増の1,781万人となった。さらに過去最高の訪日外客数2,771万人(同比17.8%増)というインバウンドと合わせると、旅行業界全体が好調であったといえる。

 このようななか、同社では、グループ規模の拡充を図るとともに、国内航空券サイトの新規オープンやバスツアーサイトのリニューアル、宿泊施設の直販支援サービスなど新たな取り組みを実施。アジア各国を対象に強化を図るMICE事業の受け入れが順調に拡大し、欧米を対象としたBtoBの取り扱いも好調に推移した。
 これにM&Aによる増収も加わり、17年10月期における旅行事業の売上高は5,368億2,600万円(前期比115.3%)、営業利益99億円(同109.5%)を計上。全売上高の88.5%を占めた。

HTB、新施設・新事業が貢献

 同社が「第2の柱」とするハウステンボス(HTB)グループは開業から25周年という節目に、通期の入場者数では前期比99.5%となる288.1万人となったが、4月以降の入場者数と取扱高では前年実績を上回るなど好調に推移した。
 HTBでは、VR(ヴァーチャルリアリティ)の新規施設として、「VRの館」「バハムートディスコ」、VRコースター「VR-KING」を開設。“初めてロボットがスタッフとして働いたホテル”としてギネス世界記録に認定された「変なホテル」は高稼働を維持。「光と運河の水上ショー」が好評を博した。
 ラグーナテンボスでは、ナイトプールを強化するほか、初のテーマパーク直結ホテルとなる「変なホテル ラグーナテンボス」が開業し、集客を強化。HTBエナジーが電力小売事業に本格参入し、前期比876%となる売上高48億6,200万円を計上するなど新規事業として成果を出し、売上高367億8,000万円(前期比115.4%)、営業利益76億8,800万円(同102.7%)を計上した。

増える「変なホテル」

事業セグメント別業績(クリックで拡大) 事業セグメント別業績(クリックで拡大)

 同社が「第3の柱」となるべく注力しているホテル事業。16年11月に設立したH.I.S.ホテルホールディングス(株)が統括するかたちをとり、インバウンドとアウトバウンド両面での宿泊需要の取り込みを図る。
 17年は、千葉県浦安市の舞浜と愛知県蒲郡市の「ラグーナテンボス」で2軒の「変なホテル」が開業。ハウステンボスで実用化(15年7月)された「変なホテル」は、生産性とエンタメ性を追求する同社ホテル事業の目玉。今後も、東京西葛西(17年12月)、銀座(18年2月)、浜松町(18年4月)と順次オープン。浅草橋、赤坂、羽田のほか、心斎橋、京都、博多、上海、ベトナム、グアム、オセアニアなどで開業していく予定。
 また、第三者割当増資引受により、台北市内に16軒のホテルを有する台湾最大のホテルチェーン「グリーンワールド」(Green World Hotels Co.、Ltd.)を子会社化し、台湾における日本人旅行者の集客を強化。以上の結果、17年10月期は、ともに過去最高となる売上高81億7,700万円(前期比123.7%)、営業利益7億6,400万円(同137.5%)を計上した。

恐竜型ロボットが出迎える「変なホテル」

恐竜型ロボットが出迎える「変なホテル」

 

熊本桜町再開発に期待

 05年10月から資本参加して再建に着手し、12年7月に子会社化した九州産交グループは、16年4月に発生した熊本地震による影響からの全体的な回復が見られ、高速バス事業も好調に推移。売上高222億8,200万円(前期比110.0%)、営業利益5億6,400万円(同631.9%)を計上した。
 20年10月期の九州産交グループの業績は、売上高300億円、営業利益32.5億円が見込まれる。その根拠の1つが19年夏竣工予定の熊本市桜町再開発事業。バスターミナル「熊本交通センター」の跡地で同社が建設する複合商業施設は、敷地面積3万266㎡、延床面積16万330m2、地上15階建て。9スクリーンの映画館やホテル(205室)、コンベンションセンター(2,300席)、マンション(150戸)、オフィス(3フロア)などが開設される。年間集客予定は約2,500万人という一大プロジェクトである。

(つづく)

【山下 康太】

 
(後)

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