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2018年05月15日 11:21

ロシア復活に邁進するプーチン大統領の野心と実力(前) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 このところ、朝鮮半島情勢をめぐる急速な対話ムードが世界の注目を集めている。韓国の平昌冬季オリンピックに南北合同チームが編成されたことを皮切りに、南北首脳会談が板門店で開催された。すると、北朝鮮の金正恩委員長は中国を相次いで訪問し、習近平国家主席と緊密な連携プレーを演じるようになった。そして、6月12日にはシンガポールで初の米朝首脳会談が開催されることが決まった。

 つい最近まで互いに罵詈雑言を投げ合っていたトランプ大統領と金正恩委員長が「歴史的な会談に臨む」ことになった。こうした首脳会談が朝鮮半島の非核化や南北融和に発展し、北東アジア情勢の安定がもたらされれば、日本人拉致問題の解決にもつながるに違いない。なぜなら、北朝鮮の経済発展には日本からの経済支援や技術移転が欠かせないからだ。しかし、これまで幾度となく国際的な約束を平気で反故にしてきた北朝鮮の過去の経緯を振り返れば、手放しで喜べるほど事態は楽観できないだろう。
多くの日本人が来たる米朝首脳会談に大きな期待を寄せていると思われる。しかし、主役を演じるトランプ大統領の目は朝鮮半島にフォーカスしているわけではない。実は、米朝首脳会談への布石を打つと同時に、イランとの核合意を破棄するとの声明を発表しているからだ。北朝鮮の核問題と同様に、イランの核開発疑惑に目を向け、これまでのオバマ政権下での核合意は「抜け穴だらけだった」と結論付け、強硬な姿勢でイランへの経済制裁に踏み切ったのである。

 ドイツやフランスなどが、イランとの核合意を継続するように要請を繰り返したにもかかわらず、トランプ大統領は一向にヨーロッパの同盟国の意見に耳を傾けなかった。その背景には、イランとの関係強化に走るロシアの動きが隠されている。実は、去る3月の選挙で3選をはたしたプーチン大統領は「ロシア・ファースト」を掲げて勝利したのである。

 もちろん、トランプ大統領の向こうを張ってのこと。新たな閣僚の顔ぶれを見ても、国際的な連携による経済強化の布陣が明らかである。そうした流れの中で、ロシアが経済のみならずエネルギー面や軍事的な関係強化を図っている相手がイランとトルコにほかならない。また、中国や北朝鮮との関係にも水面下で力を入れている。

 となると、トランプ大統領としても、ロシアの動きに注目せざるを得ない。原油価格の低迷とウクライナへの軍事介入で欧米からの経済制裁を受け、経済的には苦しい状況に追い込まれたロシアである。プーチン大統領は起死回生を目論見、「2024年までに世界5大経済大国に仲間入りする」との宣言を行った。ちなみに、現在ロシアはGDPでは世界13位に甘んじている。また、2,000万人といわれる貧困層を半分にするとも公約。

 その実現に向け、前例のない大胆な経済改革路線を打ち出すと同時に、トルコや中国との経済、軍事同盟に乗り出したというわけだ。トランプ大統領とすれば、そうしたプーチン大統領の野心をけん制するためにも、イランへの締め付けを図ろうとしたに違いない。それは「決して抜け穴は認めない」という北朝鮮へのメッセージでもある。

 さらにいえば、アメリカが将来の最大のライバルと位置付ける中国とロシアの急接近が目立つようになり、トランプ大統領とすれば、気が気でないようだ。たとえば、トランプ大統領が決して認めない「地球温暖化」の影響で、北極周辺の氷が溶けだした。そのおかげで、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな物流ルートとして北極海が注目を集めている。現時点では夏場に限られるが、従来の南回りと比べ、2週間ほど輸送時間が短縮されるため、中国にとって北極圏航路はロシアと共同で開発する値打ちがあると判断。そのため、北極海に面するロシアの老朽化した港湾設備の改修を中国が支援し始めた。

 ほかにも、中国主導の上海協力機構のプロジェクトでも両国が足並みをそろえる場面が多々見られる。これは明らかにアメリカへの対抗策であろう。実は、プーチン大統領と習近平国家主席はともに60代半ば、同世代である。また、自らの努力と才覚で党、政府、軍をほぼ完璧に支配している点も共通している。

 国内的には両国とも経済格差やエネルギー、環境、人権問題などさまざまな課題を抱えているものの、国民からは表向き絶大な支持を保持している。いずれも選挙で政権の座を追われるような心配もない。それゆえ、長期的な国家運営が可能だ。ロシアはイスラム国(IS)の台頭という「危機」を逆手に取り、テロとの戦いで主導権を握るなど、動きの遅い欧米をしり目に自国に有利な立場を拡大させてきた。

 また、30年余りの改革開放による急成長の結果、GDPで世界第2の経済大国となった中国。習近平主席の肝いりでアジア・インフラ投資銀行(AIIB)などを立ち上げ、新興国を中心にインフラ整備に力を入れ、グローバルなスケールでの「仲間づくり」に成果を上げ、存在感はゆるぎないものになっている。さらには、アメリカ国内の高速道路や空港にもチャイナマネーが投入されるようになった。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
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