2024年04月20日( 土 )

急速に拡大する中国の現代版シルクロード「一帯一路」戦略(後編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年5月18日付の記事を紹介する。


 また、注目すべきはロシアと中国の蜜月関係だ。実は、中ロの政治的関係の深化や国民レベルでの交流の拡大は安全保障の分野にも広がりを見せている。2015年以降、地中海はもとより、ウラジオストック周辺の日本海においても、中国とロシアの共同軍事演習の機会が増えているからだ。2018年には中国の青島周辺にて中ロの軍事演習が実施される予定だ。その背景には、習近平とプーチンという2人の指導者の強い軍事力信奉傾向と、アメリカ主導の戦後体制に挑戦し、新たな政治、経済の仕組みを形成しようとする強い意志が隠されている。

 そのため、とくに中国は日本やアメリカが主たる出資者となって誕生させたアジア開発銀行(ADB)や、戦後世界の金融体制を形成してきた世界銀行や国際通貨基金(IMF)に代わる、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の影響力拡大に余念がない。加えて、陸や海のシルクロード計画にも着手。サウジアラビアのサルマン国王は中国の後、インド洋のモルディブを訪問したが、ここでも中国と協力してシーレーン防衛の拠点を構築する計画が進められている。

 はたまた中国は「サイバー空間におけるシルクロード」計画も提唱しているほどである。これらも「シルクロード」という歴史的遺産に新たな時代に相応しい価値を吹き込もうとする中国的なアプローチにほかならない。

 他方、ロシアは「ユーラシア同盟」を提唱し、ロシアの極東やシベリア方面の開発に、中国も巻き込み、海外からかつてない規模での投資も呼び込もうと躍起になっている。プーチンは「ロシア極東は協力したい人々にすべて開放する」と語気を強める。いうまでもなく、ロシアの極東地域は中国との国境線地帯を中心に石油、天然ガス、石炭、木材が豊富に眠っている地域である。また、ロシアの漁業資源の7割を占めているわけで、まさに「資源の宝庫」そのものである。

 ただし、それだけ資源には恵まれているが、開発に従事する人がいないのが悩ましいところであろう。何しろ、極東地域の人口はロシア全体の5%以下で、常に労働力が不足している。国内のほかの地域からも優遇策で労働力を確保しようと工夫をしているが、思うような成果は得られていない。そのため、中国、モンゴル、韓国、北朝鮮といった国々にも働きかけを強め、労働力の確保に必死で取り組んでいるわけだ。

 人や物資の移動に欠かせないのが鉄道や高速道路である。ロシアはヨーロッパ方面とシベリア極東を結び、さらに南北朝鮮縦断鉄道やサハリン経由で北海道を結ぶ国際輸送回廊計画を提唱中である。今後20年で世界の物流風景は中ロを軸に大きく変貌を遂げるに違いない。

 しかも、プーチン大統領はシベリア鉄道を始め、あらゆる物流をAI化することで無人化を促進する「第4次産業革命」を実現する計画を温めている。中国の推進する「新シルクロード構想」はその発想を拡大、進化させようとするもの。当初、中国の「一帯一路計画」にはロシアが含まれていなかった。しかし、プーチン大統領の働きかけが功を奏し、中ロ合作の象徴的な事業が生まれつつある。

※続きは5月18日のメルマガ版「急速に拡大する中国の現代版シルクロード「一帯一路」戦略(後編)」で。


著者:浜田和幸
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